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ぼっちの俺が死神からもらった催眠能力でやりたい放題!! ……してないのにモテるようになった  作者: 太伴公達
第2章  『操作』、アルバイト、そして昔話
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第8話 遠慮しなくていいですよ

「さーて、好き放題してくれたこの二人をどうしてやろうか」


 俺は『操作』にかかったタトゥーとドレッドの二人組を前に独り言を呟く。



 ――ま、何はともあれ、まずは俺と矢作のことを忘れさせなくちゃな。


  

「俺とベンチにいた女性のことを忘れたあと……」



 ついでに今後、この公園でタムロするのをやめさせとくか。

 バイトの帰り道、安心して帰りたいしな。



「……この公園にいる限り、ずっと大量のゾンビに全速力で追いかけられる幻覚が見えるようになる」


 俺が指示を出し終えた瞬間、


「――ひ、ひぃっ! な、なんだ、コイツら!?」


「いつの間に現れやがった!?」


タトゥーとドレッドが突然叫んだ。

 二人の前には今、大量のゾンビが見えていることだろう。


「た、助けてくれぇええぇええ!」


 とつぜん現れたゾンビの幻覚に驚き、二人は慌てて逃げ始めた。


「お、おい! 足(はえ)ぇぞ、コイツら!」


「な、なんで俺たちだけ追ってくるんだよぉ!?」


 二人は怯えながら叫んでいる。

 そして、あっという間に見えなくなってしまった。



 ――いいね!

 だいぶシュールな幻覚が見えているんだろうな。

 ゾンビ映画嫌いだから俺は絶対見たくないけど。

 逃げっぷりが面白かったから蹴られたことは許してやるか。

 


 俺が蹴られて痛む肘から下のところをさすっていると、


「翔悟さん! 大丈夫っスか!」


巨体の元太さんが向こうから走ってきた。

 後ろには矢作の姿も見える。

 状況を話して、矢作が元太さんを連れてきてくれたようだ。


「なんか、このキレーなおネーサンから翔悟さんが絡まれてピンチだって聞いて……」


「元太さん、ありがとうございます。もう大丈夫です。えーと……話し合ったら理解してくれました」


「え! は、話し合いっスか!?」


『操作』のことは言えないし、かといってケンカで撃退したなんて冗談でも言えない体格差だったからな。

 苦しくても、話し合い(この言い訳)でごり押しするしかない。


「彼女から聞いたんスけど、絡んできた二人組ってタトゥーとドレッドのヤツらっスよね?」


「あ、そうです」


「そいつら、この辺りじゃ有名なヤツらなんスよ。市内のヤバめの暴走グループさえケンカでやりすぎてクビになって、その後は二人で好き勝手してるって話っス」


「……」



 ……そんなヤバいヤツらだったのか。

 あぶねー。

 ウマく『操作』かかってくれて助かったわ。

 今になってビビってきた。

 知らないって怖い。



「アイツらを説得で退けるって、翔悟さん、マジヤバいっスね」


 元太さんは素直に感心している。


「な、なんでしょうね? 用事でも出来たんですかね?」



 マズい。

 言い訳が不自然すぎるか?



「ニャー」


「お、どうした、おもち。もう帰りたいのか? じゃ、すいません、翔悟さん。そろそろ失礼します。おネーサンもありがとうございました!」


「あ、はい、気をつけて」


 おもちちゃん、ナイスタイミング!

 いいところで鳴いてくれたおかげで、追及も途中で終わってくれた。


 ホントはおもちちゃんを思う存分()でさせていただきたかったところだが、これ以上、あいつらの撃退方法をツッコまれ続けるとボロが出かねない。

 仕方ないから泣く泣くおもちちゃんと元太さんを見送った。


「――さて、帰るか」


 俺が歩き出そうとしたところに、


「あ、あの! あ、ありがとう……ござい、ました……」


矢作から途切れ途切れで声をかけられる。



 おお、矢作のことをすっかり忘れていた。



「元太さんを連れてきてくれてありがとうな。助かった。走らせて悪かったな」


「い、いえ。アタシこそ、助けてもらいましたんで……」



 正直、矢作を助けたって言うより、おもちちゃんを助けたんだけどな。

 ただ、アイツらが矢作を連れて行くときに、おもちちゃんは捨てていくと言ってイラッと来たのはある。

 あと、矢作の猫の可愛がり方が猫好きらしい手慣れたものだったので、急遽、助けることにしたのだ。

 猫好きに悪い人間はいない。

 おもちちゃんの懐き方で俺には判る。



「あの……良かったらお礼させてもらえませんか?」


 続けて矢作が妙なことを言い出す。


「お礼なんていいよ、別に。大したことしてないし」


「いや、そういう訳にはいかないです。――あ! ごはんマダでしたら、アタシが晩ごはん奢りますよ!」


「晩ごはん? いやいや。そんな気を遣うなよ」


「アタシ、モデルしててギャラも貰ってるんで遠慮しなくていいですよ。今日はもともと、親がいなくて一人でご飯食べなきゃいけなかったんです」


 矢作の言葉に俺は反応した。


「……矢作は、この辺の店で食事するつもりなのか?」


「え? あ、はい、そうです。お店に行く途中で近道のこの公園を通ったら、あの猫が近づいてきたんで少し遊んでたトコだったんで。どちらにしろアタシは今からこの辺の店でごはん食べるんで、よかったら一緒にどうですか?」


「そうか……」


 俺は少し考えて、 


「わかった。じゃ、ご馳走になる。けどその代わり、食べる場所は俺が決めてもいいか?」


矢作に提案した。


「あー、別に大丈夫ですよ。予算は問題ないんで」


 矢作が答える。


「普通の店に行くよりは安上がりだよ。じゃ、いくか。――ああ、そうそう。俺に丁寧語は使わないでくれ。俺たちはクラスメートなんだから」


「え、でも、富士さんって……」


「さん付けもいらない。富士さんて、なんか日本一の山みたいで変だろ?」


「……」



 俺の渾身のジョークはドン滑りしたらしい。



「……呼び名は富士でも何でもいい。俺も矢作って呼ばせてもらうから」


「でも……」


 矢作がまだ迷っている。


「まあ、気持ちはわかるよ」


 俺は矢作に言う。





「たしかに俺は()()()()()()()()()()()()()だ。でも同じ高一のクラスメート同士なんだから、できれば気を遣わないでくれ」

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