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ぼっちの俺が死神からもらった催眠能力でやりたい放題!! ……してないのにモテるようになった  作者: 太伴公達
第2章  『操作』、アルバイト、そして昔話
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第6話 他、当たってよ

「だ、大丈夫です。そちらは?」


 俺の問いかけに、


「俺も大丈夫っス。マジ、すんませんでした。ちょっと捜しものをしてたんで」


突然、公園の草むらから飛び出してきたお兄さんは頭をペコペコと下げながら謝ってくる。



 すげぇいい人じゃん。

 ホント、ガタイが良くてヤンチャそうな外見とはギャップがある人だなぁ。



「いえいえ。お互い、怪我がなくて良かっ……」


 そのとき、ぶつかった拍子にお兄さんの手から落ちたものを見つけ、俺は思わず息を止めた。


「どうしたんスか? やっぱりどっか痛くなったんスか?」


「……い、いえ、そうじゃなくて。――あの、ひょっとして捜しものって()ですか?」


「え、なんで? ……って、ああ、コレっスね」


 お兄さんが笑いながら拾って見せたのは『ハロー・ちゅ~る ささみ・かつお味』だった。


『ハロー・ちゅ~る』はスティック型のレトルトパウチになったキャットフードである。

 ツナ缶を製造する地元の大手缶詰会社が作っているから高価格ながらも原料が高品質で、一度味を知ればどんな猫でも袋を見せるだけで大喜びで飛んでくるほどの人気商品だ。

 また、スティックから必死にペロペロとフードを舐め取る猫の姿が愛らしく、猫へのご褒美ナンバーワンとして有名である。


「一歳のアメリカン(アメ)ショートヘア(ショー)なんスけど、すげぇやんちゃでたまに外に出ちゃうんスよ。いつもは家の裏の公園ココで遊んでることが多いんであまり心配しないんスけど、夜に出ちゃうのは初めてで……」


 猫のことになると、お兄さんは急に饒舌で笑顔になった。



 うんうん、わかります。

 猫、お好きなんですね。

 その外見には似合わないほどイイ笑顔ですよ。

 猫好きに悪い人はいません。



 そして、猫のこととなると性格が変わってしまうのは俺も同じだ。


「あの……僕、このあと別に用事ないんで、一緒に捜してもいいですか? 僕も猫、好きなんで」


 お兄さんのあまりにいい笑顔に、ぼっちにあるまじきコミュニケーション能力を発揮して俺は提案してみた。

 捜すついでにアメショーちゃんと仲良くさせてもらうこともできそうだったし。


「え、マジっスか⁉ 正直、マジ助かるっス! 後輩たちもヘルプに呼んでるんスけど金曜の夜で全然捕まんなくて……」


「気にしないでください。どうせ帰っても寝るだけだったんで」


「じゃ、お願いします。あ、LINE交換しましょう。写真、送るっス」


「あ、そうですね。待っててください。

スマホ出します」


 俺とお兄さんはQRコードでLINEのIDを交換した。



 ……。

 ああ、そうだよ!

 家族や美幸以外とLINE交換したのなんて初めてだから、だいぶ手間取ったよ!



「あ、来ました。おお、コレはかわいいですね!」


 お兄さんのLINEアカウントには「元太」と書かれていて、写真にはアメショー柄の目が大きい美人猫が写っていた。


「ありがとうございます! この子はアメショーのメスで、おもちって名前です。俺、最上もがみ 元太げんたって言います」


「僕は富士 翔悟といいます。わかりました、最上さん。じゃ、二手に分かれてさがしましょう!」



◇ ◇ ◇



「おもちちゃ~ん」


 俺は最上さんから『ハロー・ちゅ~る』を3本預かり、植え込みの中へ声をかけながら公園内を中腰になって歩いていた。


 もしおもちちゃんが今日、初めて家出したのだったら、外で迷った不安から警戒心が強くなってしまい呼んでも出てこなくなることも考えられる。

 しかし最上さんの話では何度か家出は経験しているということなので、おもちちゃんにとってはちょっとした散歩程度のつもりだろう。

 名前で呼んで、おやつで釣れば確保できる可能性は高いと見た。



「問題は俺の声で出てきてくれるかどうかだけど……」


 その辺りは、アメショーの人懐っこい性格に期待するしかない。



 ――と、そのとき。


 猫の鳴き声だけは聞き逃さない俺の耳が、たしかに猫の鳴き声を聞いた。

 俺が慌てて鳴き声のした方向へ走ってみると、


「……あれは?」


そこには二人の男性がこちらに背を向けて立っていた。

 ドレッドヘアーと短髪の男二人でB系の格好をしている。

 二人ともいかにもやんちゃな雰囲気だ。

 腕っぷしもよさそうだし、右の短髪の彼なんか両の二の腕にビッシリとお絵描き(タトゥー)までしてらっしゃるじゃないか。



 やべぇ、なんかタチ悪いのがいるぞ。

 高瀬さんが言ってた不良グループってのがこいつらか?



 こちらからでは二人の陰になって姿は見えないが、どうやらベンチの女性に声をかけているらしい。


「お姉さん。俺らと遊びに行こうよ」


「行かない。他、当たってよ」


 女性の声は大きくないのであまりよくは聞こえない。


「いいじゃん。カラオケでもクラブでも、どこでも連れてってあげるからさ。明日、休みでしょ?」


 ナンパ……というか、面倒くさい声の掛けられ方をしてる感じか。

 女性は突っぱねたいようだが、二人組は立ち去るつもりなど毛頭ないらしい。



 女性は気の毒だが、俺は今おもちちゃんを捜していて人助けをしているヒマはないし、人助けをしてもロクな目に合わないし、ヘタすると死んで三途の川で怒られることになる。

 ここはスルーして他を当たるとするか。



 俺は二人組に気付かれないよう静かにその場所を離れ――


「ニャー」


「すいません。その猫、僕が捜していた猫なんです」


「ああ? なんだ、おまえ」



 ……やってしまった。

 猫が絡むと、どうも俺は前後が見えなくなるらしい。



 鳴き声の主はやはり、おもちちゃんであった。

 最上さんのLINEで見たアメショーが、二人組に声をかけられていたベンチの女性に抱かれていたのだ。

 俺が立ち去ろうとした瞬間に猫の鳴き声が聞こえ、俺は思わず反射的に声をかけてしまった。


「なんだ、おまえ。この子に何の用だ? この子は俺たちと出掛けるんだから、おまえはどっかいけよ」


 サングラスを頭につけたドレッドの男が、俺の目を睨みながら言う。



 どうしよう。

 俺が用のあるのは、その女性が抱いている猫だけなんですけど。



 それと問題はもう一つあって――



「富士……さん?」


 ベンチの女性が俺の名前を呼ぶ。



 猫を抱いたまま二人組に声を掛けられていたのは、昼休みに美幸の伝言を伝えに来たクラスメートの矢作梨華だった。 

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