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ぼっちの俺が死神からもらった催眠能力でやりたい放題!! ……してないのにモテるようになった  作者: 太伴公達
第2章  『操作』、アルバイト、そして昔話
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第5話 じゃあね

「――美幸はただの幼なじみだ。俺の家族じゃない」


 俺は固い口調で美幸に言った。



「あ、ご、ごめんなさい。そんなつもりじゃ……」


 美幸の慌てた声を聞いて、俺は自分が感情的に言い過ぎたことに気づいたが、もう手遅れだった。

 立ったままの俺と俯く美幸の間に重苦しい沈黙が漂う。

 このとき、グッドタイミングというべきか昼休み終了五分前の予鈴が鳴った。


「昼休み、終わるぞ。特進科は遠いから早く戻れ」


 沈黙を破るには、ここを逃すわけにはいかない。

 俺は美幸に声をかけた。


「……翔悟くんの方が四階で私より遠いでしょ。先に帰りなよ」


 美幸は足元を見ながらつぶやく。



 でもこのままだとおまえ、授業が始まってもここに座ったまま凹んでるだろ?



「俺の方が足は速い。心配するな」


 俺は遠回しに美幸へ、先に教室へ戻れと伝える。


「……そうだね。わかった」


 美幸は俺と目を合わせないように立ち上がり、


「じゃあね、しょうちゃん」


俺の方を見ないまま別れの挨拶をして、中庭を出ていった。



 美幸は怒っている訳ではない。

 俺の言葉に傷ついているだけだった。



「結局、最後はしょうちゃん呼びにもどりやがったな、アイツ」



 はあ。

 それにしても……自己嫌悪。

 我ながら、家族という言葉に敏感すぎる。



◇ ◇ ◇



「ありがとうございました」


 店を出ていくお客の背中に向けて、俺はお礼を言う。

 店の扉がベルの音とともに閉まった。


「ふう……。さて、富士くん! 8時をまわったし上がってくれていいよ」


 カウンターの中からマスターの高瀬さんが声をかけてきた。


「わかりました。それじゃ、お先に失礼させてもらいます」


 前髪と火傷を隠すために頭へ巻いたバンダナと、お店のエプロンを外しながら俺は高瀬さんに頭を下げた。



 一か月前。

 たしか、くるみの騒ぎの翌日ぐらいに街へ買い物に出た帰り、この「軽食&喫茶 飛行艇」のアルバイト募集の貼り紙を見つけ、その足で俺はアルバイトに雇ってもらった。

 放課後から夜8時までの店頭の接客と、翌日のランチ営業用の食材の下準備が主な仕事だ。


 マスターの奥さんが出産のために実家へ帰省しているため、その間だけの短期バイトである。

 学校が終わってからディナータイムがひと段落する数時間でいいし、出産を終えた奥さんが帰ってくるまでの半年ほどの期間限定というのも、来年から特進科へ転科を目指す俺に都合がよかった。



「期間も決まってるし働いてもらう時間も短いから、なかなか応募がなくて困ってたんだ」



 簡単な面接のあと、高瀬さんはそう言って苦笑いした。

 そんな理由で時給も少し高めの設定だったから、俺にとってはホントに美味しいバイトだ。



 それに、この店は母さんが生きていたころに何度か親子で来ていた店だった。

 なんとなく運命のようで嬉しく、精一杯頑張らせてもらっている。


 ちなみに、奥さんの妊娠里帰り中に不倫したどこかの課長クズと違い、高瀬さんは奥さんを超愛していて、毎晩奥さんへのテレビ通話を欠かさない素敵旦那である。




 ああ、そういえば課長クズにかけたあの『操作』はちゃんと効いたのかな?

『操作』が無事に発動していたら、どう考えても俺が課長に何か催眠をかけたと疑われているだろうから、くるみとは二度と会わないつもりでいる。

 だから、あれからくるみがどうなったか、直接聞く機会は二度とない。

 ま、今日会ったときにリリィは何も言ってなかったし、くるみも元気にやっていると信じている。




「お疲れ様でした」


 高瀬さんの「ご苦労さまー」という声を聞きながら、俺は「飛行艇」を出た。



 五月に入って日の入り時刻もだいぶ遅くなったが、さすがに八時を回ると周囲はすっかり暗くなっている。

 明日は土曜日で学校は休みだが、定期テストも近いし土日はみっちりテスト勉強をするつもりだ。

 明日からの猛勉強に備え、早く帰って寝よう。



「飛行艇」からの帰り道には大きな市民公園がある。

 俺は家までのショートカットとして、いつも公園の敷地を横切って帰るのだが――


「最近、夜になると二人組の不良グループが現れるらしいんだ。カツアゲしたり、因縁をつけて一方的なリンチをしてるって噂もある。夜、あの公園を通るなら気を付けるんだよ」


と先日、高瀬さんが教えてくれた。

 だから、この公園には長居しないでできるだけ早く横切るよう注意をしている。



「うわっ!」


 しかし今日は、公園の入り口でいきなり人にぶつかってしまった。



 お互いが道に尻もちをつくほど強めにぶつかってしまい、俺は痛みに顔をしかめる。

 ぶつかったことについて正直、俺に過失はない。

 なぜなら相手は、()()()()()()()()いきなり現れて俺にぶつかってきたのだ。


「いたたた……。いったい、なんな……」


 ぼやいている途中で、俺は思わず息をのんだ。

 ぶつかってきた相手が180センチはあろうかという巨体坊主頭のいかつい青年男性だったからだ。


 

 あれだけ注意していたのに、不良に因縁つけられたのか。

 俺は天を仰いだが――



「す、すいません! 大丈夫っスか? お怪我はなかったっスか?」



 あれ?

 外見に似合わずめっちゃイイ人だ、この人。



「だ、大丈夫です。そちらは?」


 相手が低姿勢で来てくれれば、俺も無暗に相手をビビらずに済む。

 ぼっちとは思えないコミュニケーション能力を発揮して、相手を気遣う余裕まで見せた。

 やるじゃん、俺。

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