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第14話 お姉さんにまかせて

 ――長い回想だった。

 まるで回想だけで11話二万五千字近く使ったような気分だ。



 まあ、回想したところで状況は何一つ変わっていないワケで。

 相変わらず俺の右手はくるみの左胸に触れたまま、それを揉むでも舐めるでも吸うでもなく、()()()()()()()()()の状態で硬直したままだった。


 くるみに『操作』をかけた時の感情を思い出せば、また勢いに任せて動けるようになるかと思ったが、全然そうでもない。

 生おっぱいの迫力があまりに強すぎて、俺の煩悩をすべて地の果てまで吹き飛ばしてしまったようだ。


 額の火傷を見られたことも、今では別にいい。

 催眠状態のくるみの裸を見たことでチャラというか、俺の方が借りを作ってしまった気分だ。


 そんな訳で俺はいま、自分で作り上げた状況なのに自分で処理しきれない状態になっている。

 いま、この場で「家に帰っていいよ」と誰かに言われたら、俺は大喜びで帰るかもしれない。

 据え膳食わぬは……なんて言葉もあるが、そんな江戸時代的価値観を持ち出されても知らな――


「んぉあかはっ!」


 頭でブツブツと言い訳をしていたところへ、急に下半身へゾクッとする感触が走った。

 おかげで硬直していた手が胸から離れ、素っ頓狂な声を上げてしまった。


「あ。手、離れた。よかった♪」


 無邪気に喜んだものの、自分の下半身に目を移せば、くるみが丸裸の俺の相棒を両手で優しく包むように掴んでいるではないか。


「ちょっ! く、くるみさん……なにを……」


「ねぇ、翔悟くん。コレ、欲しぃ……♡」


 くるみはそう言いながら、俺の相棒へ自分の唇を近づける。



 え。

 これってまさか、フェ……。



「待って、くるみさん! 俺()、シャワー浴びてないから汚いよ!」


 くるみの唇が俺の相棒とキスしそうになる瞬間、俺は思いっきり腰を引き、相棒をくるみの口許から遠ざけた。



 あ、危ない……。

 ファーストキスが唇よりも相棒の方が先って末代までの恥じゃね?



 しかし、くるみは俺の相棒から手を離さない。


「そんなこと別にいいわよ……。私が口で綺麗にしてあげる……♡」


 俺の相棒に優しく手を添えながらそう言うくるみの目は虚ろで、そこに俺はもう映っていなかった。

 ただ本能的に俺の相棒を求め、セックスをしたいだけの顔になっている。

 俺は思わず背筋が冷たくなった。

 自分で掛けておいてなんだが、俺は死神からもらった『操作』の力の恐ろしさにようやく気付いた。



 ヤバい。

 コレは罪悪感が半端ない。



 俺は一旦、間を開けようと、

 

「い、いや、やっぱり気になるよ! 俺、事故現場で倒れたりしたから汚れてるし、シャワー浴びたいな!」


くるみに提案してみる。



 シャワーを口実にちょっと休憩を挟んで、そのまま逃げるというのも手だ。

 とにかく、このままなし崩しにくるみとセックスするのは、やっぱり何か間違っている気がする。



 くるみは酔っぱらったような目つきで自分の顎に細い人差し指をあて、しばらく俺の提案について検討していた。


 だがやがて、


「えーとね、却下します♡」


と笑顔で言って俺を仰向けに押し倒し、俺の上に跨ってきた。



 うひょー!

 俺のへその下辺りに、すごく柔らか気持ちいい二つの桃尻が乗ってるんですけど!

 下から見上げると「ホントに胸デケぇな」ってことしか考えられないんだけど!

 悲しいかな、今はくるみを止めなくては!



「うおお! くるみさん! 待って、待って!」


「待ちません。痛くしないから大丈夫よ……♡」


「それ、女性側のセリフじゃなくない⁉」


 俺の悲痛な叫びは『操作』で操られているくるみには届かない。

 くるみは俺の上で、左手で俺を抑えつけながら右手で再び俺の相棒を持った。


「ほら……翔悟くん()スゴいよ……♡」


 たしかにくるみの言う通り、俺の意思に反して相棒はずっと臨戦態勢のままだ。

 我ながら元気すぎてイヤになる。

 

「童貞だから怖いんでしょう? 大丈夫、お姉さんにまかせて……ネ♡」


「やっぱり童貞ってバレてた! て、問題はそこじゃねぇ!」


「もう……静かにしてなさい……♡」


 くるみは下を見ながら、俺の相棒をくるみの大事なところへ誘導しようとしている。



 なんてこった……。

 自業自得とはいえ、こんな罪悪感の残る状態で童貞を失うことになるとは……。



 その瞬間、まるで三途の川から戻ってきたときのような感覚が俺の全身に走った。



 ああ。

 童貞を失うときって、こんな感覚なの?




 ……。




 ――あれ?

 どうなった、一体。


 なんか俺、自分の体の上に浮いてるんですけど?

 まるで幽体離脱みたいな……。

 ま、まさか俺、脱童貞の感動でまた死んじゃったの⁉



「キミは()()生きてるよ。とりあえずキミの魂を、生と死の境界に引きこんだだけ」



 おおっ!

 姿は見えないけど、その声はリリィか⁉



「うん、そう。三途の川から戻ってまだ一時間ぐらいだっていうのに、ずいぶんとお楽しみのようだねぇ」



 イヤミか!? イヤミなのか⁉

 これが楽しんでいるようにリリィには見えるのか⁉


 ……ところで、なんだかリリィの声が不機嫌そうに聞こえるんだけど。



「気のせいだよ。全ッッ然、不機嫌じゃないよ。調子に乗らないでよね」



 お、おお、そうか。

 何やらすごく棘がある言い方だけど、俺の勘違いだったなら悪かった。

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