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ゼン・イージス ―或る英雄の軌跡―  作者: 南海智 ほか
目覚めの章:火の神の村
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4.神子守の儀


 少年には何もない。

 馬一頭がいるだけだった。

 父親は去った。村一番の戦士としてだった。母親とともに見送れた。

 母親はじきに亡くなった。少年がもっと幼い夏だった。かつて寝起きした背の高い家は、母親の亡骸とともに、ことごとく焼けて灰になった。死に目にはあえなかった。

 ひとり残された少年を、村人たちは"穢れ"と呼んだ。でなくば、無視するようになった。

 話し相手はともかくとして、腹が空いても食う(すべ)がない。繋がりを持たない少年だった。けれど、陰でこっそり声をかけ、施しをくれる者もいた。この頃は、まだ。


 少年は、ほとんど全てを失った。

 御許で暮らす理由も持たない。

 だから出ようと考えた。

 父親のところへ行こう。

 この星でただひとりの家族。剣技を託し、名残り惜しそうに旅立った、父親のもとへ。

 できなかった。許されなかった。


 少年は痛めつけられる。

 禁忌を犯したのだとして、蔑まれ、石を投げられるようになった。

 からだが痛んで食い物をとれず腹を空かした日、施しかと口にしたものはひどい味だった。混ぜものがされていたのだった。

 少年はすみかを移した。村の物陰から、御許の外れのぼろ小屋に。施しは受け取らなくなった。


 少年には何もない。

 誰にも奪えはしないものを、除いたのなら。

 老商人との出会いが、そのひとつ。

 商人は、虚ろな言葉を吐く村人たちとは違う。信用できると直感できた。彼はなんでも教えてくれる。村人が教えてくれない村のことも。

 たとえば、十五回目の夏の掟。

 御許に生まれた子どもたちは、十五回目の夏を迎えると、成人の儀をもって大人とみなされる。大人になれば、なにを肩書くか選ぶことができる。御許を抜け出せる肩書きは「商人」のほかにもあるという。


 少年はたった一度だけ、御許を出ようと試みた。どうして二度目がなかったか。

 失敗し、傷を負い、癒えればなんとか冬を越し、懲りずに"見知らぬ森"までまた行ったとも。

 引き返したのは、しぶしぶだ。同じ目に遭う――胸のざわめきで察せたのだった。

 次は両脚を潰される。すると行くも留まるもままならない。獲物をとれず、とれねば飢える。エマに跨るのも難儀する。少年が恐れたのは痛みではなかった。可能性を奪われることだった。


 少年は以来、徹してきた。待つ、ひたすら待つ。十五回目の夏を待つ。"見知らぬ森"を倒すより、ずっと確かな方法だ。待つ、それだけが、成すべきことと信じていた。

 商人が手紙を知らせてくれる、今日までは。


村守(むらもり)のー長は、村でぇ一番のー戦士が、選ばれる!ゆえにぃ、()に出すのはーふつう、二番のー戦士である。しかしぃ、神子のー守手とぉ言うのは、とてもー大切なーもので、あるからして――」


 陽は沈んでいた。月は出ない。夜闇が満たしただろう普段、異なっている今夜の広場。脚付きの篝火が煌々と、円形の隅をなぞっている。井桁(いげた)に組まれた巨大な焚火が、大井戸の四方で照っている。

 昼間に大きな顔をした高座は、路地のひとつに押しやられ、村長だけを壇上にのせる。戦士団をはじめ、村の男どもは上裸の立ち姿にて、長話を聞かされるさなかだった。


「代わってぇ村の、統手(とうしゅ)とー言えばぁ、こちらはーやはりー知恵にぃ一番!二番んーならば……」


 聞き覚えがある。村で二番目に賢かったから、老商人は商人を選べたのだ。一番だったら選べなかった。この村は一番をとっておきたがる。さしておかしな話でもない。良いものはそっと隠しておいて、失っても平気な二番に頼る。子どもと一緒な発想だ。


 ――ふふ、やっぱりおかしいや。


 村長のお喋りもそうだ。聞けば聞くほど外れた調子で、くすくす、少年は笑いをこぼした。ちょうど冗長な息継ぎで、あたりが静かな時だった。

 村人たちがどよめきに夜闇を探る。男どもがそろって振り向く。また滑稽で、しかし笑わない。少年は、戦士団があまり好きではなかったから。


 視線が一挙に集まる先に、そのみすぼらしい少年はいた。

 ぼさぼさの髪、煤まみれの肌、暗きに暗く、しるしがぼやける。まとった襤褸は、闇と(さかい)がない。石畳にもし蹲るなら、大きな()()と見間違えた。

 けれど瞳は。瞳だけは、違う。

 村人たちは見つけただろうか。

 霊峰ですら仰ぎ見る、もっとも偉大な火の目覚め。比しても怯まぬ輝きを、少年は瞳に湛えている。


 少年には何もない。ただ、彼には彼の名前がある。


「来たね、ゼン」


 広場の端で、おばばが言った。

 ゼン。少年は名をゼンといった。

 かつて背の高い家に住んだゼンには、特別に「家の名前」がある。 


「ゼン・イージス……」


 おばばに続いて村長の孫。ほとんど口の中で呟いた。

 イージスと、ゼンは家名(かめい)に戴く。ゼン・イージスとは、穢れた名前だ。

 忌まわしき名に堰は切られた。男どもが吼えたてるのだった。

「どうしてここに!」

「何をしん来た!?」

 "神子守の儀"に参加しに来たと、ゼンは正直に。

「おのれ穢れの分際でよくも抜け抜けと!」

「禁忌の子だろうっ、まだ懲りんのか!」

 誰も好き勝手がなり立てるので、広場はあっという間に騒然とする。耳を傷めてしまうほど。きまってこうして面倒だから、姿を晒すのがゼンは嫌だった。けれど夜が違えば、事情も違う。

 聞くに"神子守の儀"こそ待ち焦がれた好機。御許を出られる、十五回目の夏を待たずして、目指す先はまさに神殿聖国。村一番の戦士だけが行ける、と言うのであれば。


 ――僕はやる。


 どんな面倒にも立ち向かおう。いくらだろうと姿を晒そう。やかましいのも我慢しよう。一番が必要なら、一番になろう。覚悟がある。

 肩をいからせ()めつけて、盛りの体格自慢たちが迫っていた。

「わざわざ痛めつけられにきたんか!?」

「なんとか言ったらどうなんじゃ我ぇ!」

 上から唾を飛ばされたって、睨みを返してやるだけだ。森で出くわす熊の方が、もっと大きくて、ずっと恐ろしい。周りと同じものしか言えず、繰り返さず、行えない、虚ろな人間たちを、どうして怖がる必要がある。

 "儀"がやめになるのは困るけれど――唯一の不安も、すぐに解消される。


「ええかげんにせんかーっ!」


 カッ!と鳴った。"鳴らし木"だ。二本一組を、おばばが手にしている。目も覚める乾いた大音声(だいおんじょう)は、たしかに静寂をうながした。

「火の神様の御前でまったく見苦しいっ!村長の長話も、村人()()がそろえばしまいじゃ!」

 ふたたび騒めく虚ろな人々。

 あいつはこの村の人間じゃない!

 神子守の儀にアレを加えるのか!?

 戦士に似つかわしくないっ!

(つるぎ)を握れる男子(おのこ)じゃてぇ、素質があるに変わらんじゃろがぁ!」

 おばば、圧倒する。

「しかしだ、育て手よ!」

「まだ言うか!」

 老婆の気迫にほとんどが屈した。最後まで抗ったのは現戦士長だ。

「戦士長ごとき若造がっ!火の神様の名のもとに、神聖な儀のいっさいを取り仕切るこの"神子の育て手"ネルラ・フラムネルに、まだ盾突くというんかね!」

「神聖だからこそだっ!育て手よ!儀式に穢れを持ち込むとならば、火の神様のお怒りをかうんに違いない!彼奴(きゃつ)は禁忌をも破っておる!」

「穢れは穢れ、禁忌は禁忌、掟は掟じゃてぇ!このおばば、幾十の夏を越え、村の掟を守り伝えてきたが、穢れ禁忌を破った子だとて、神子の守手になれぬという掟を一切、知りはせぬ!くわえて、聖国からの書状にも記しておろうがっ!神子の守手は『全ての男の村人の中から独り見い出せ』となぁ!」

 育て手は譲らない。納得のいかぬ戦士長は、村一番のご意見役、長老を見やって助力を求めた。

「ふむぅ……ゼンは"穢れ"の子であるし、禁忌をおかしもした。だが『外』へ追放されてはおらぬ。であればたしかに、村の人間であるな……」

 もごもごと何かをこするよう、きまり悪く言う白髭だ。

 かたや烈火もさながらおばばは、きっぱり、戦士長を追い打った。

「お()さんがゼンを参加させたくにゃあとのさばるのは勝手じゃが、それは盟約破りを意味するんぞよ!わしゃおのが命に代えようと、掟は絶対に守る!聖国との盟約も絶対、反故にやできん!だいたいお(まん)さん方、やせ細ったみすぼらしい子どもくらい、気に入らんじゃったらおのが手で倒してしまわばよかろうがぁ!猟師や木こりならとかく!もしや火の神の村の誇り高き戦士であらば負けることなぞ、万が一にもありはしまいて!」

 これを受けては、男どもがたじろいだ。戦士長を迎え撃つおばばの火の粉が、思わぬところで降りかかったからだ。

 もっともらしい弁を老婆は押しつける。やせ細った、薄汚い、成人もしない子どもなど、気に食わないなら叩きのめせばよい、容易にできぬ方が恥ずかしい。ましてや相手は"穢れ"であるから、一切の情け容赦は無用である。

 ここで。

 一見易きは、本当に容易いか?

 内心自信がない者で、大勢を占める現状だった。村の戦士たちは"穢れ"とは別の理由で、ゼン・イージスを恐れている。

 戦士長だけだった。たしかに、倒せばよいのだ。と、なかば不承不承も、育て手には一を投げれば十が返って埒があかず、先へ進まぬのもまた儀に不作法だと、だんまりを決めた。

「異存も失せたの!然らばここに、"神子守の儀"を執り行うものとする!」

 カッ!と鳴って、"鳴らし木"は、ひとたびかぎりで鳴りやまない。ふたたび、みたび、四度五度と、鳴らす間隔を狭めてゆく。

 ごう!と炎が湧いて答えた。四方の焚火だ、唸るのは。

 音声(おんじょう)の増して最高頂、火炎は星も食らわんばかり。立ち昇るのを見届けて、育て手は鳴らし木を打ち切った。

「火の神様があらせられる!全ては其のご意志であるからして、あらゆる負傷は名誉と思え!よもや恨み募らすなど断じて許さん!

 四つに分かたれた闘場へ出向き、おのおの一対一に力を競え!相手の降参ないし気絶を決着とする!武器は、守手のしきたりに従って、己が肉体とトグゥの木剣のみ用いるのを許す!」

 村長、長老、おばば、そして戦士長が四方の焚火の元へ散った。"神子守の儀"における戦いには、最低でも一人の見届け役が必要だった。


「見届け役に従い、はじめよ!」


 何を言われるまでもなく、ゼンは闘場に立っていた。睨みをやめない虚ろたちをよそ、足裏でさすり具合をたしかめる。じゅうぶん大きく、かたい木製だ。石畳のうえでもぐらつかない。それからやっと気がついた。生家の更地の真横であった。冷たい春の夜風が、向こうから吹き抜けてくるなり、やさしく頬を撫でた。

 夜闇を見返す、しばしの間。三つ夏を経て、未だに吹く灰の残る空き地を気の毒に思う。よほど誰も触れたくないらしい。

「……これ、どうしたらはじまるの?」

 いつまで待っても相手が来ない。暇の潰し方にもかぎりがあるのだ。仕方がないので少年は、見届け役に呼びかける。戦士長だった。

「……ナル!こちらへ来なさい!」

 男は息子の名を呼んだ。現戦士長の肩書きを戴いて、信じていない噂がある。村人や若い戦士らがささやく、穢れたゼン・イージスにまつわる不気味な噂話のすべてである。

 曰く、木こりが山に入ると、木々が妙に枝を散らかす一帯を見つけた。病、という訳ではないらしい。獣がやるにも不自然すぎる。

 わからないまま、とある日のこと、迫真の人声を山中に聞く。源へ、恐る恐るも近づくと、見た。遁走するのに獣もさながら、人の子らしき影だった。

 あらためてみる一帯は、木々の枝が禿げきっている。ほかをやったのも、アレの仕業に違いない。訳の見当もつかないが、左様な奇行にふけるのは、ゼン・イージスのほか考えられない。

 曰く、戦士が馬を走らせた。禁忌にあたる火の気が、どこかにある。煙を頼りに駆けつけたならば、ゼン・イージスがいる。

 怒号をもってこれを追うと、森へと逃げ込まれてしまう。樹々枝(きぎえだ)茂れば馬は利かずとも、大人の脚に子どもが敵うはずもない。思って戦士は追い駆けた。ところがどうした、走れど走れど小さな背中はさらに小さくなる。山道なかばでついに見失う。

 幾人か加わり捜索するも、痕跡ひとつと見当たらない。どころか、みな不自然なほど、蔓に足をとられ、穴に踏み外し、枝で頭を打つばかり。徒労にも日が暮れゆくので、諦めざるを得なかった。

 若い戦士のほとんどみなが、同じような目に遭っている。だから専ら言われる。ゼン・イージスは森の精と通じていて、大人をおちょくり陥れるため、罠を仕組んで待ち構えるのだ。

 また曰く馬番の見た、草原を疾走するさまは、馬の全速力に並んでいたとか。更に曰く猟師の見た、ただではすまない高さの木を落ち、けろりと走り出しただとか。人間離れした気味の悪い噂を――すべて、現戦士長は信じていない。軟弱なほかの戦士とは違う。ゼン・イージスを恐れなどしない。

 だが強く嫌悪する。忌避している。"穢れ"そして"禁忌破り"であるから当然。まして闇夜に紛れて不敵に現れ、図々しくも自分も混ぜろなどと抜かすうぬぼれ小僧は、ただちに儀から排除するべきだ。

 "神子守の儀"は、剣を握れるすべての男による、負け抜け総当たりなのだから、一度負かせばそれで終いである。ともすれば誰かが、すみかの森へ叩き返してやらねばならない。 

 押しつければみな嫌がろう。そこで戦士長は息子を選んだ。所詮"穢れ"は、成人までいくつも夏を控えた子ども、戦士でなくとも用は足る。勝ちの一戦の面目を、血を分けた我が子に持たせてもやれる。

「おい、どうすんだよナルっ、あいつ……」

「心配ないガズ、あいつはいつもおかしな木の棒を振り回してるだろ?だからこっちも調子がでないんだ、でも今日は違う。俺が勝つに決まってる」

「なぁナル、いい作戦があるぜっ――」

「何?そいつはいいや!」

 ナル、ガズ、トーワが密談に、あやしく肩を揺らしていた。闘場そばまで団子でやってくる。ナルの登壇に際しては、もっともらしくトーワがのたまう。

「おそれながら戦士長!"穢れ"はずるをするかもしれません。持参した木剣ではなく、村の木剣を使わせましょう!」

 ゼンが握るのは手垢に塗れたトグゥの木剣、日頃は隠してある一番の武器だ。父親が拵えた一振りであるから、村の物には違いないのだが。

「中に鉄の芯をふくんだり、細工をしているかも!」

 面倒なことを叫ぶトーワは、どうにも取り上げたいらしい。短剣(ナイフ)の一本手に入れるのだって、ゼンはかなりの苦労をする。おかしな細工がどうしてできよう。とはいえ。

「じゃあ、かわりをちょうだい」

 余分な手間に構わない性だ。トグゥは空き地の土に突き立てた。

 トーワが投げてよこす木剣は、一見してふつう、振ってみるといやに軽い。トグゥ製ではなさそうだ。

「どうした?文句あるのかよ」

「……いいや」

 細長のほくそ笑みを思うと、握りに棘でもないだけよしとすべきか。

「お父さん、いや戦士長!はじめましょう」

 ナルは浮かれて、にやけが止まらない。このゼンとかいう穢れの塊を、大人たちみたく、ようやくぼこぼこにできるのだ。

 ゼン・イージス。みすぼらしさがまず気に入らない。全身どろどろ、けがらわしい。家畜より臭う、獣が孕んだ子だ。いつだって卑怯に逃げ隠れして、正々堂々戦わない。三人がかりでやられたあの一回など、ちょっと油断をしただけだ。穢れがずるくて、悪いのだ。

 夏を経て俺は力をつけた。戦士長の長男としてふさわしく、成人前でも大人に負けない。これで直接、仕返しできる。持ち物じゃなく、あいつ自身に。

 穢れはいつもずるをする。だから、このとっておきの作戦も用心のうちだ。やつを木剣で叩きのめすのを、父親に披露できるのは、きっとこの上なく気分がいい。


「双方良いな、では、はじめっ!」


 "鋼の構え"をナルはとった。気色悪い面持ちをやめないでいる。ゼンは"鉄門の構え"で受けて立った。両者七歩ばかりの間合いであった。

 冬の間にナルは体格をかなり増している。対峙してみてゼンは気がつく。油断ならない。と、あらたに気を引き締めたばかりで。

 

「やああああっ!」


 ぎょっ、と我が目をうたがった。先手にしかけて出たナルが、構えを()()()しまったからだ。


 ――どうして。"構え"をすてるなんて。


 "鋼の構え"がまず見てとれた。ずしりと半身、握りは低く、切っ先を敵へ向く手堅い構えだ。攻めて良し、守って良し、剣士の初歩にして万能だから、ゼンはその型を練り尽くしている。

 "鉄門の構え"は"鋼"とよく似る。切っ先が地を向くのだけ異なって、この差が大きな防御力を生む。先手は不得手でも、すくって返しやすい。選んだ"鉄門"はなかば無意識だ。にやけ面に秘めたのは、よほどの自信かと。しかし。

 ただ振りかぶって、ただ突進。何故。大上段の"烈火"とは違った。背におぶるかの"憤怒"とも違った。それら"構え"は守りに欠くぶん、続く型があり、威力を発揮する。力まかせに振り上げて、力まかせに振り下ろすだけ、ナルに残された剣の運びは、まったく剣技をなぞらない。

 要は、ゼンからしてみて全くの()()()。森にたたずむ樹々ほどに、打ち方を選べる(まと)である。

 "鉄門"から"鋼"へ、ゼンはすかさず取り直していた。驚愕をよそ、戦いの自分が既に目覚めている。

 木剣の切っ先が的を向く。動く的である。三歩、四歩、いちいち数を指折らずとも、相応しい距離をとらえていた。


 少年には何もない。

 少年は、ほとんど全てを失った。誰にも奪えはしないものを除いたなら。

 なけなしの財産すら奪われながらも、来たる日に備えて彼は、見せびらかさずとっておいた。大切にそれを磨きあげた。

 父親が授けてくれた、この(せかい)の"剣技"を。


 踏み込み直すゼンの左足は、木製のおもてに沈み込んだ。

「はッ!」

 渾身の突き。的に反撃の余地はない。振り下ろす猶予を仮に与えたとて、同じ突きがもう二度、繰り返された。間合いをはかる巧拙があった。たかだかひと冬、肥えたくらい、剣士の剣は覆す。

 的が走れば威力も増した。一撃がみぞおちをとらえると、「軽い木剣」は真っ二つ、先端などは粉々に砕けた。舞い散る木屑が意味するところ、届いたのは力のひとかけらだけ。ナルが得物を取り落とし、目を剥き、膝から崩れ落ちるのに足る、ひとかけらであった。()()()()腐っていなければ、さて。

 刃の鳴らない戦いもある。無知な慢心をいましめる、純然とした修練があった。行い主は次を考えている。ささくれた折れ口をほんの一瞥、闘場外にほうってしまうと、主のない木剣を拾い上げた。ずしりと重い、トグゥの重さだ。つっぷしたままの前の主は、床の一部になりきっている。あんまり動かないので、ゼンは問うた。

「僕の勝ちでいいの?」

「まだだ……」

「そう」

 見届け役が言うのなら。頭上に剣を、ゼンは振り上げる。"退魔の構え"と名があった。天の星々を貫かんかと、華やかながら、短所も目立つ。なにせ振り下ろすほか運ぶ筋がない。狙いをしかと定めたら、()をあげるほど息を吸った。

「こっ、降参だ、降参する!」

 あわてふためくナルである。下手な寝たふりと見抜かれていた。降参ないし気絶で決着。選べたのだから、温情だ。

「……勝者はゼンに決まった。次に備えて双方、場を退け」

 苦虫をかみつぶすとはまさに戦士長、見届け役として守るべきものを守った。儀式は儀式、掟は掟と、公平に沙汰を下すのだ。技の有無には考え及ばない。息子ばかりを、男は思う――武器さえあれば、わからずいたのに。運悪く急所を打たれて、まだ子ども、よほどの意地でも戦意は削がれよう……――口惜しさはしこりとして残り、儀を経て記憶を呼び覚ます。いつかの夜闇で打った誰かの姿、あれは。

 

 静かな一勝であった。ほかではトグゥがまだ鳴っている。隅に座って、ゼンは待つ。全て倒さずとも良いらしい。倒す気でいた。どちらだって良かった。ヤー、ヤーとうつろに聞いた。


 ――どうしてみんな戦うんだろう?外へ出るなというくせに。一番が欲しいだけ?うれしいのかな、一番って。


 思うだけ、訊くつもりもない。相手もいない。「次!」の合図まで長かった。二番目の相手は、横にずんぐり(のろ)いガズときた。どうもトーワに勝ったらしい。

 闘場上でゼンが見据えると、ガズはたいそうバツが悪そうだ。なんの訳もない勝者にとって、ナルとの相違は決め方である。木剣を痛める「突き」は封じ手にした。折れた刃でも敵は倒そうが、取れる慎重は取れるだけ蓄えたい。そこで得物を奪う戦法を、実践してみて素早い決着。「俺、ナルみたいに痛いのは嫌だからよぉ……」泣きべそながらだ、楽で良い。手首をさすってガズははけた。三人組の残りが、悔しげな視線をくれている。関わることも、もうないだろう。

 それから三人、更に倒した。図体ばかりが大きくなって、さして代り映えない戦容ながら、いずれも戦士を肩書いていた。

 一人目は、顎を打ったらよろめいて、膝をついては待ったと叫ぶ。構わず打つそぶりを見て降参。戦士長は咎めなかった。待ったは掟にないらしい。

 二人目は、首だこ(のどぼとけ)を打ち、手首を打った。剣を奪うと、いかにも降参。しかしむせ返るので、決着には少しかかった。打ちどころも考えものだ。

 三人目は、ちょっと丈夫な戦士であった。剣を失っても、拳を唸らせた。脚技などなかなかで、踏み込むのにゼンは気を配った。側頭部、のど、脇、太腿、脛、ふくらはぎ、しまいには股間を打ち上げると、効き目が良かったらしい。しばらく蹲ったのち、降参があった。

 一度振っただけの脚を、引きずりながら去る三人目。よくよく見ると、儀がはじまる直前、痛いのがどうこう、気にしていた戦士だ。気の毒に。村人の、ほとんどすべてがこれを見届けた。余す戦いはひとつだけだった。

「貴様らーッ!なにを腑抜けとるかーッ!」

 気が気でないのは戦士長である。

「成人も前のっ!それも、それもあんなやせ細った子ども相手に……」

 しかし悟らす怒りであった。経た儀が、男を変えていた。

 昂りわなわな身が震えるのは、村を守るべき戦士がもれなく不甲斐ないからだ。

 我慢ならないのは、子どもに情けなくやられる戦士しか育てられなかった自分自身にだ。

 矜持。

 戦士長は自覚する。

 戦士を統べる者としての自負が、とてつもなく大きいがゆえ、強い怒りを抱いている。この感情に、穢れも禁忌も、関係がない。ゼン・イージスはもはや、関係がない。

「成人前でも前戦士長の息子さ……」

「ちっ、ノビてたな誰の長男だよ」

 若い戦士らの吐く皮肉。これを受けて怒り狂う戦士長を、村人たちは予期したとも。

 ならなかった。

 なんだとーッ!!怒号が飛ぶことはなかった。これみよがしの呟きは、確かに届いていたろうに。 

 戦士長は、静かに燃えていた。木剣を携え、黙々と闘場へ向かった。既にゼン・イージスが佇んでいた。

 十夏もそこら(年端もいかぬ)、細い少年だ。この晩、闘場に立った誰よりも小さい。

 これにどうしたわけだ、みな倒された。

 わかるのは。 

 ゼン・イージスはなんら卑怯な手を用いた訳ではない。見届け役として戦士長は、誰よりもよく弁えていた。

 憤怒は()くかたちを変えている。村一番の戦士としての闘争心。育て手の言葉を今やよく然りと思っている、すなわち。

 穢れは穢れ、禁忌は禁忌、掟は掟。

 対峙した相手を全て倒した唯一の村人、それがゼン・イージス。ならば最後の戦いを行わねばなるまい。"神子守の儀"は神聖な儀式であり、掟は絶対である。

 最後は当然こうなるものだ。勝たねばなるまい。村一番の戦士を肩書く、一人の戦士として、「戦士長」は勝利しなければならない。

 小さな戦士、ゼン・イージスに。

 見届け役には、おばばが立った。


「これにて神子守の儀、最後の戦いを、両者、はじめっ!」


 カッ!と鳴らし木が鳴った。けたたましい音だった。

 先に駆け出でたのはゼンだ――決着ははやい方がいい――大半の相手にしかけたよう、剣の奪取を試みる。が、倍も大きな相手であった。高く構えられ、届かない。


 ――どうにか、先に振らせないと……。


 初撃を誘うべく懐へ、危険も承知で肉薄する。

 迎撃に動く戦士長は、かち割らんかと縦に振る。

 身を(ひるがえ)してゼンは(かわ)した。ごう!と脇で唸る木剣。大ぶり、力いっぱいだ。"型"もなにもない、けれど見過ごせない。骨なぞ容易く砕くだろう。


 ――あたらなければいいっ、それに!

 

 下がった手首にもう振っている。狙いは確か、強烈に。

 打撃。

 巧く決まった。名があった。対人剣技"手首落とし"。ゼンは確信すら持った。柄を取り落とすに違いない、だから。


 ――っ!


 ごう!と構わず横なぎに、冷や汗も吹き出ようもの。落ちるかに速やかゼンは、その場に伏せている。躱している。掠めた髪の毛が散っている。


 ――いけないっ。


 腹ばい、反撃どころか追撃の(まと)だ。傍目(はため)にうつる篝火に影、今にも次が振り下ろされる。

 受けるか、避けるか――不利に受けるな。受けたら負ける。

 腕で勢い(ばね)を作って脱した。ごろごろ転がる。立ち上がる。"鋼の構え"で対峙し直す。


 ――危なかったな。


 会心のあたりに顔を歪めただけ。相当、我慢強いのだ。痛めて振って、叩きつけてなお、木張りにこぶし大ほども穿った。

 様子見をしばしゼンに強いるだろう、並々ならぬ戦士長である。ほかの戦士と大違い。それもそのはず。村でもっとも強いから、戦士長は戦士長になれた。

 ごう、と横なぎにゼンが飛び退く。ごう、と縦振りにゼンは側転する。

 力強い。村一番で疑いない。

 けれどゼンは見る。愚鈍な力強さであると。

 豪腕に剣が唸ろうと、振っているだけ、操っていない。明らかになる。村の戦士たちは誰も、誰もだ、剣を操る術を知らない。

 ゼンには「剣」を魅せた父親がいる。村一番の戦士として去った。()()()()()()であり、戦士以上に、"剣士"であった。はかる勝利への第一歩。剣技を以て、敵をうとう。

 しかしどれほど打てばいい?頑健にしても、村一番。同じ強みはとても持てない。だから素早さを、ゼンは活かした。戦士長より素早くあれた。前へと進む両脚を、大事に取っておいたから。

 とにかく打った。駆け、回り込み、翻り、敵は一撃で倒れてくれない、わかったうえで剣を振るった。戦士長の手を、腕を、肘を、脇を、腰を、腿を、膝を、脛を打った。ありとあらゆる箇所を打った。剣技の理屈を以て知る「怯ませなければ、返り討ちに遭う」場所をのこして打ち尽くした。力任せに振るわれる、反撃をすべて避けながらであった。

 打たれるたび、戦士長は顔を顰めたとも。けれど得物は落とさなかった。膝を屈しもしなかった。きわめつきには股間すら、かつてないほどの手ごたえで打ったのに、顔こそしわくちゃ、立つまま耐えた。頑丈だった。

 やってみるまでわからなかった。ゼンは思う。手強い、なるほど一番だ。体格の差が物を言った。頭を容易に狙えない。「打つ」ではなくて「斬る」ならせめて、しかし手中には木剣である。身体をどれほど打たれても、戦士長はよく頭を守った。

 いよいよ長引く決戦だった。いくら疲れ知らずとはいえ、ゼンにも堪えるものがある。全力の一撃をいくつ見舞った。力任せをいくつ避けきった。流石にすこし、息も上がる。額の汗も、拳で拭わねばならないほど。

 対して戦士長の様子はどうか。むんずと口をかたく結び、いかにも平静、ずしり動じない――どうしたら降参してくれる……?――よもや朝まで続けば不利だ。打つにせよ木の的に同然とはいかず、反撃はもれなく枝どころか幹。まともにひとつ、当たれば負ける。

 良くない考え事だった。

 とうとうゼンは被撃する。切っ先に触れた。そう、軽く触れただけ。まとった襤褸が綺麗に裂けた。胸先には鮮血が散った。


 ――まずい!


 大きく飛び退く。距離をなす。傷の程度を確かめる。


 ――焦るな、浅いぞ。こんな傷、いくらも作ってきたじゃないか。

 ――わかってる、わかってる……!


 決着の術がすぐ()った。滲む血は集中の限界を言った。

 

 ――なにか手は、なにか……あ。


 後退にさす光明もある。剣の間合いでつかず離れず、ゼンは気がつかないでいた。戦士長はもう、あざだらけだ。上裸に猿股姿で露わ、夜に浮かぶほど浅黒く、あちこちをうっ血させている。


 ――そうとも。いくら耐えたって、彼も痛いんだ。痛んでも我慢してるだけさ、いつかの夜の君みたいに。


 ゼンは目星をつけていた。狙うべくなら、あそこがいい。

 走る。

 十分にまだ素早かった。どれほど疲れていたとして、なにせがんじ搦めにされていない。

 ゼンは打った。とにかく打った。戦士長の脚を打った。男の左の脛を、ふくらはぎを滅多打ちにした。前から、後ろから、牽制も混ぜて、速さを活かし、巧みに打ち尽くした。

 狙いの集中に戦士長も察して――もう遅い。膝から下が、真っ黒に腫れあがっている。

 振り下ろされる迎撃は万力の剣、懐へ潜りきって、ゼンは逃げない。一番まともに受けて立つ。"疾風の構え"を用いたこの守勢は、上からの攻撃にめっぽう強い。駆使する。豪力を、捌き切る。

 避けるか()なすか、徹していたのは慎重を選べたから。もう違う、疾く決着が要る。求められるなら()の少年は、危険な道をも前へ突き進む。深くまで潜る必要があった。男の意志を、挫くために。


「ぐおおおおおおっ」


 悲痛な雄たけびを戦士長は上げた。踏み抜かれたのだ、痛めた脚を。踏み抜いたのは子どもの脚でも、木製のおもても沈ます脚だ。

 激痛が男を耐え兼ねさせる。圧し折れようと、圧し折れずとも、膝をつかすには事足りた。どしり。

 背の差が縮まっている。

 すかさずゼンは首を打つ。反撃の気勢を奪っている。体勢を崩す巨体の胸に、押し蹴り、のしかかる。されるがままに男が仰向け、倒れつくす。

 まだ終わらない。最初の相手に教わった。倒して、それで、戦いは終わらない。

 ゼンは目敏く得物を見た。戦士長はまだ握りしめている。しかし握った利き手首にせよ、戦いを経て変色していた。目掛け踏み込むと、こちらも流石に痛むと見える。思わず具合に柄を取り落とす。

 まだ終わらない。手は緩めない。剣を失くしても、空手で戦う者はいる。戦士長ならなお脅威。

 狙うは急所。股や腹ではない、さわれずにいた頭しかない。鋭く打っても一度や二度では、男はきっと眠らない。ならば。

 分厚い胸板を踏みつけたまま、ゼンは的確に剣を持ちかえた。落とす。ねじ込む、切っ先を。戦士長の口を、トグゥは塞いだ。


「降参しないなら、このまま喉を突く」


 少年の瞳に、男は見つけた。射返す熾火が味方している、夜明けを導くような輝きだ。


 葛藤があった。今に生まれ落ちた感情ではない。戦士長には、ずっと秘めていた葛藤があった。

 ()()()()()()()

 ほかの誰彼と変わらぬのだ。たとえ"神子守の儀"に際してさえも。

 "御許"を出るのは、とても恐ろしい。この村に生まれた者ならば、当然、誰しも胸にする。思いながらも、"儀"に参加する。

 掟は掟、盟約は破れぬ。そして一番とは、(ほまれ)であるから。"守手"の使命をよそにして、それは威勢よく参加する。

 けれど結果は目に見えていよう。

 戦士長以外にないだろう、一番と言えば。一番強いから、戦士長なのだ。誰しもやれるだけやって、戦士長には勝てぬが道理だ。

 手を抜いて"儀"に挑んだ者などない、と戦士長はよく信じたい。自身一番を明かすべく、闘場に立った。最も強くあらねばならないから。

 だから葛藤だ。板挟みの葛藤だった。

 御許を出たくはない、しかし一番の戦士ではありたい。一番であるのが明らかになれば、「外」へ出なければならない。

 戦いに臨むのは本望である。矜持に基づき、男は全力も尽くした、だろう。

 結果はどうだった。

 打ち負かせない、意志があった。

 ゼン・イージス。

 御許をひとり、出たがった少年。挫けない意志の持ち主が、"神子守の儀"に参加した。 

 戦士長はとうに思い出している。

 かの少年が"御許"を出ようと試みかなわず、二度と出るなとどれだけ打っても、決して、頷かなかったあの夜を。

 相反する思いなど脱ぎ捨て、同じだけ強靭な意志を備えていたら、決定的な一撃を耐えられたか。

 戦士には、わからない。

 結果を不思議とは思わない。

 一番が覆り得るから、"神子守の儀"は行われる。強さとはなにも、腕力を言わない。

 かつて一番ではなかった男、現戦士長だからこそ、納得がある。侮りも軽蔑も、いずこへか消え失せている。ゼン・イージスは強い。己では持ちえない、おおきな力を持っている。

 誰かは気にしたが。少年の手にした剣が、何で拵えられるかなど、大事ではないのだろう。木製だろうと、腐っていようと、欠けようと、折れようと、鉄の芯を含んでいようと、鋼であろうと、関係ないのだ。

 己に突き立てられるのは、まぎれもなく、意志の剣。

 持ち主が何を肩書こうが変わりない、これと打ち合って、戦って、負けた。

 敗北を認めるのに戦士、葛藤はなかった。


「わ、()いっ()


 あらたな村一番が、こうして決まった。持たざるがゆえ、強靭な意志を備えたかの少年の名を、ゼン・イージスと言った。

「勝負あったな!勝者は、ゼン・イージス!ゼン・イージスに決まりじゃ!聞き届けられたか、火の神よ!この神子の育て手、ネルラ・フラムネルの名のもとに、ゼン・イージスを神子の守手に任命する!」

 育て手が天を仰ぐと、四方の大焚火は恐ろしいほど轟々唸った。勢いを増しに増しては雲を焦がし、前触れもなくふと消えた。

「火の神様は、たしかに聞き届けられた!」

 暗い夜が戻りつつある。

「出立は明日の朝じゃが――よいな、ゼン」

「うん」

「うむ、では宴じゃ!祝宴の準備をせぇ!」

 広場には、妙な空気がうずまいていた。祝宴が尋常に宣言されれば、すぐさまあたたかい料理が食べきれないほど出て、誰もが陽気に歌をうたい、手を拍っただろうに。

 夜が違えば、事情も違う。

 "神子の守手"を肩書くあらたな村一番は、"穢れ"とみなされ、"禁忌"を犯したとして人々が石を投げる、薄汚い少年だった。

 冷たい春の夜風が、村人たちの頬を不気味に撫でる。火が失せれば、いささか寒気もする夜更けであった。

「お前さんもたくさん食え、な」

「いいよ、僕は行く。せっかくのごちそうなんでしょ?泥でも混ざればだいなしだ」

 月のない夜だった。

 四方の大焚火が消えて、今や篝火が残るだけ、どれも儀がはじまった頃の勢いを忘れている。広場を照らすにも心もとない、ゆらゆらただよう濁った灯。とても明かせぬ夜闇の奥へ、少年の姿は溶け込んで、消えた。

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