03. 〔執筆:夜来鳥〕
01.02.に続くアンサーSS。
「青年」視点の一人称になります。
-03-
それは、寒い夜のことだった。
「近くに来ないか?」
そう言った男の顔は笑みの形だったが、対照的にその目は酷く哀しげに見えて。
だから、一も二もなく応えたんだ。
「良いぞ」って。
笑って、何でもない風に。或いは、若干「しゃあねぇなぁ」と言う風な調子で。
俺は装えていただろう?
悪いね。生憎、アンタほど素直じゃないんでね。
とん、と。軽く。
背を預ける形で身体を寄せれば、直ぐに毛布を纏う腕が包むように回された。
丸太みたいな太い腕が、力加減を推しはかるように、そうっとだ。
――――全く、アンタは…。
アンタ程じゃないにしろ、俺がそこいらの奴らよりゃ余程頑丈だって知ってる癖にさ。
……うん、何て言うか。
あー、これは。
結構。
わりと。
くすぐったいね?
暫く、静寂と共に時が過ぎて。
俺も、アンタも、無言のまま。
沈黙は重苦しい訳じゃなく、ただ、自然にそこにある。
最初は外気でひやりとしていた腕が互いの体温で温かさを取り戻していくのが、俺にもゆっくりと伝わってきた。
背中越しにも感じるその心地よい温もりは、若干寝足りていない俺の睡眠欲を誘う。
「ふぁ…」
毛布から手を出すのも寒いので、行儀悪くそのまま大口開けて欠伸を一つ。
すると、やんわりと降ってきた何かが俺の視界に影を落とした。
ぱちり、と。
ひとつまたたくが暗闇の中。
もう一度目を瞬いて、俺の顔半分以上を覆っているそれがアンタの掌なのだと気付く。
でっかい手だ。俺も小さい方じゃねぇのに優に一回りも違う。
「……寝ろって?」
朝が近けーのに。そんな、言外の問いかけに、
「別に、いいだろ」
短く返された言葉は、どこか、それを望んでいるように聞こえた。
「まぁな」
いいか。確かに、急ぐ旅でもないし。
少しばかり寝坊したところで困るような生業でもない。
一応、唯一迷惑を被ることになるかも知れないその本人が、それで良いというのだから。
ほんのりと温かい闇の中でゆるりと目を閉じて。
アンタはなぁ、俺なんか甘やかしたって一文の特にもならないだろうになぁ。
なんでなんだろうな。いつものお人好しの一環か。
とりとめのないことをうとうとと考える、その内に、意識は眠りの中へと引き落ちてゆく。
そんな微睡みの中で、土の香りに混じる僅かな他人の匂いに気付いて……
俺はまた少し、くすぐったい気分になって、微かに笑った。
完結になります。
読んでいただき、どうもありがとうございました!
以下独り言。
静謐な空気感のすばらしい筆致を台無しにしないよう、四苦八苦したアンサーSSでした。
本当は三人称にしたかったのですが、至らず……!><
自キャラ(※登場する2人は元々、とあるTRPG卓で使用した互いのもちキャラです)の一人称に落ち着いてしまいました……無念!