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5.高いところよいものだ

 創造スキルは超便利な能力であることは確かだ。だけど、使い方次第で利用の幅が格段に広がる。

 単にイメージして創造するだけなら、俺の脳だとチートではあるものの痒い所に手が届かないというか、歯がゆくなってしまう。

 望遠鏡の時のように一工夫すれば、複雑な道具だって創出することができるんだ。

 

「よし、まずは……出でよ」


 大理石でできた一辺が一メートルの立方体がででーんと地面に設置された。

 コンコンと叩き、上によいしょっと登ってみる。

 ぴょーんとジャンプして壁を蹴りあがり、スレイプニルとその背に乗るルルーもついてきた。

 

『次は何をするもきゃ?』

「まあ、見てろって」

 

 その場であぐらをかくとスレイプニルが膝の上にちょこんと座り、ふああとあくびをする。

 一方でルルーはするすると俺の肩まで登ってきて、はやくとばかりに両手を開く。

 焦らずいこう。推測が正しければうまくいくはず。

 大理石の立方体を一つのブロックとイメージして、下にもう一つブロックを重ねるイメージを思い描く。

 

「出でよ」


 お尻が少し浮き、ストンと床に着く。

 ブロックの様子はというと、二段重ねになり高さが二メートルになっていた。

 

「よっし、うまく行った」

『ん?』

「いやいや、分かるだろ。高くなっているだろ」

『もきゃ』


 コクコクと頷きを返すルルーだったが、高層ビルの時と違い地味過ぎたため反応がとっても薄い。

 高層ビルを建てた時のことを思い出して欲しい。

 木々がビルに押しのけられて吹き飛ばされていた。

 そこで俺は考えたのだ。高さが上昇した場合、そのまま上にスライドするんじゃないかってさ。

 今回はブロックを継ぎ足すイメージをしたが、実際のところ高さ二メートルの大理石を再構築した。

 元々俺がいた位置はブロックになったわけだけど、うまい具合にブロックの上に行ってくれたってわけだ。

 よしよし。

 

「どんどんいくぞー」


 仕組みが分かったら、こっちのもんだぜ。

 

『もきゃー!』

 

 ふ、ふふふ。驚いたか。

 視界が一気に高くなったのだからな。

 なんと、一気に高さを15メートルまであげたんだよ。

 

「これでよく見えるだろ」


 望遠鏡を覗き込み、周囲の景色を眺める。

 ここからならよく見えるなー。高層ビルの方向は何も見えんけどな。

 東の方角がやはり無難かなあ。あれだけ木々が生い茂っているのなら、獲物だけじゃなく果物とかも見つかるかもしれない。

 

 望遠鏡から手を離すと、今度は自分もーとルルーがガリガリと俺の手の甲へ爪を立てる。

 彼の目元に望遠鏡をよせてやると、尻尾をピンと立てて覗き込んできた。

 

『もぎゅう』

 

 ルルーから変な声が出た。

 それもそのはず、高さが突然変わったから。

 真剣に望遠鏡を覗いていた彼にとって、よほど不本意だったのだろう。

 といっても、3メートル減らして12メートルの高さになっただけなんだけどさ。

 落ちる時も登る時と同じように体への影響は、お尻が少し浮く程度だった。

 んじゃ、五メートル消してみよう。

 

『まだ見てるもきゃー!』

「ははは。どんな反応するかなーって」

『む、むむ。オレサマを邪神と知っての狼藉かもきゃー!』

「はいはい」


 登りの時に反応が薄かったことへ対する意趣返しにしては意地悪し過ぎたかな。

 会話している間にもブロックはどんどんと低くなり、完全に消失する。

 

「上下の移動は10メートルくらいだったら、多少体が浮く程度だったな」

「にゃーん」


 感想を漏らす俺の声に重なるようにしてスレイプニルが再びあくびをした。

 彼はずっと俺の膝の上で丸くなり、目をつぶる。

 実験が終わったから立ち上がろうと思ったんだけど、どうしたもんか。

 そっとスレイプニルの小さな額を指先で撫で、くすりとする。

 

『気持ち悪い顔をして、スレイプニルに触れるんじゃないもきゃ!』

「ん。ルルーも撫でて欲しいのか?」

『そんなわけないもきゃー! 座り込んだままでどうするもきゃ?』

「まだ夕飯には早いし。東の森まで散歩に行くか。本格的に探索するのは明日にしようか」


 せかせか動く必要もないしさ。ノンビリと行こう。

 狩りはずっとしなきゃならないけど、畑も作りたいなあ。道具と水はいくらでも作ることができるから、種さえあれば畑もできる。

 ぼーっとしながら土いじりするって最高の贅沢だと思わないか? しかも、収穫までできてしまうのだから。

 

「よっし」

 

 両手でスレイプニルを抱きかかえ、立ち上がる。

 ルルーは俺の肩に乗ったまま、まだ未練がましく望遠鏡の方へ目をやっていた。

 ルルーよ。すぐに君の興味を別のものへ向けてみせようじゃないか。


『ゆっくり歩いて行くもきゃ?』

「いや、それだと日が暮れてしまうだろ」


 目視と望遠鏡で確認した限り、森の入り口までは10キロ近くある。

 てくてくと歩いていては時間がかかって仕方ない。

 大丈夫だ。俺に案がある。

 

 ささやきいのりえいしょうねんじろ。

 プラスチック製の小さな車輪が左右についた鉄の棒が出現する。

 車輪を手でコロコロと回し様子を確かめた。うん。いい感じだ。

 

『そのへぼいものは何もきゃ?』

「こいつは車輪なんだけど、専門用語で『ウィール』という」

『ふうん』


 うわあ。本気でどうでもいいって顔しやがって。

 こいつはあくまでパーツだ。

 続いて、両端が反り返った薄い板を出す。板の横幅が大事なんだ。だいたい8インチくらい……20センチほどになったなか。

 縦は太ももの付け根くらいといったところ。

 

 こいつと先ほど作った車輪のついた鉄の棒を元にして、再度創造する。

 

「よっし、できたぞ」

 

 スレイプニルを左腕だけで小脇に抱え、右の足先でちょこんと反り返った板の端っこの部分を弾き、右手で板を掴む。

  

『地味もきゃ……』

「こいつはスケートボードっていってな。歩くより楽々で早いんだぞ」

『へえ……』

「原っぱなんて走れないだろって思っているだろ。ふふ、ふふふ」


 スケートボードに片足を乗せ、妄想に花を咲かせる。


「出でよ!」


 ぼふんと途中にあった木々が吹き飛び、東に向け幅二メートルもあるアスファルトの道が突如姿を現した。

 平地だから傾斜も殆どない。

 どこまで長く舗装できているのか分からないけど、継ぎ足しは余裕だし行くとしようか。

 

『もきゃー!』

「分かりやすいな。派手なものにしか反応しないんだな……」

『最初からこれをやるとよかったもきゃ。地味な道具なんて後でよかったもきゃ』

「いやいや。アスファルトよりスケートボードの方が難しいんだぞ」


 地面を蹴り、スケートボードに両足を乗せる。

 転生して以来、乗っていなかったけど案外乗りこなせるもんだな。

 前世では、スケートボードでよく遊んだものだ。

 あの頃より遥かに身体能力があがっているからか、一蹴りで車輪の限界速度までスピードがあがった!

 

『走った方がはやくないもきゃ?』


 なんて憎まれ口を叩くルルーだったが、その尻尾と耳、悪くないって反応をしているぞ。

 走った方がとルルーは言うけど、魔素を吸収する前の俺が全力疾走するくらいの速度は出ている。

 この分だと30分かからずに森の入り口まで行けそうだ。

 余談ではあるが、スレイプニルはまだすやすやと眠ったままだった。

 

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もふもふは全てに優先する物語

・タイトル

魔物の装蹄師はモフモフに囲まれて暮らしたい ~捨てられた狼を育てたら最強のフェンリルに。いまさら後悔しても、もう遅い~

・あらすじ

ペット大好きな青年が捨てられたワイルドウルフを育ててもふもふ楽しーなおはなしです!

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