23話 まさか、うちにはポンコツしかいないのでは……
「作戦を開始します。現在高度79.85メートル。目標の敷地面積は396.694平方メートル、うち建物の占有割合は38%。高さは10階建て41.209メートル。わたくしに内蔵されたミサイルで殲滅に要する時間は約0.023秒です」
はやっ!! つよっ!!
待って、待ってください。速いです、強いです。
これが最強の破壊兵器、ヒナギクさんの真の力……!!
人類の味方、正義のKAPPOGIウーマンはいったいどこへ!
闇堕ち!? 闇堕ちってやつですか!!
千葉ニュータウンの研究所まで背中のジェットエンジンで飛んできましたけど、なんと10分くらいしかかかりませんでした。
ボクは諸事情によりふつうのニンゲン(女児)型になってしまった、元ネコ型ホムンクルスのエレキテルです。
なので、抱っこされてるとはいえ新幹線より速く飛ぶのは勘弁してほしいのです〜。
「あのーう、ボクを連れてきて、逆に邪魔にならないです? 殲滅のお手伝いなんてできませんよ? そういう機能ついてないんで」
「問題ありません。エレちゃんには、エレちゃんにしかできないお仕事がちゃんとあります」
ボクにしかできないお仕事?
なんでしょうか。ニンゲン型になってもなお可愛いボクにできることといったら、愛嬌を振りまいて敵を油断させるくらいですが。
「わたくしは建物内で働いている人々にまで手を出す気はありません。目的はあくまで施設に保管されている研究成果です」
あっ、よかった。
さすがヒナギクさん、常識的! Dr.ヒラガとは違うのです。
「まずは、中にいる職員を外に出すための扇動作戦です。エレちゃんを屋上で降ろしますから、このダイナマイトで自爆してください」
「ボクはどうなるんですか!?」
「ゲンスケさんのためなら、命を懸けるのが妻子(仮)の役目。名誉とともに散りましょう!」
違わなーーい!!
もうダメだ、この夫婦(仮)! 娘役を降板させてもらっていいですか!!
***
ボクたちはとりあえず屋上から研究所に侵入し、誰もいない部屋に潜伏しました。
「ヒナギクさん、いったん落ち着いてください!」
「申し訳ありません、つい背中に血が上ってしまい……」
背中に? 頭じゃなくて?
「後ろに冷却ファンがあります。少しあおいでいただけませんか?」
あ、あった。ありました、背中にファン。
たしかにちょっと回転が重くて、かなり熱くなってしまってます。ハイテクアンドロイドなのに7、8年間使ったパソコンみたいなとこあるんですね。
えーと、なにかあおぐものは……。
そのへんの机に置いてあった書類用のファイルでいいか。えいえい。
「も〜、なんでいきなりこんなに暴走しちゃったんですか」
「わたくしは、ゲンスケさんの発明品を取り戻したいだけなのです」
発明品?
そういえばなんか、完成した治療薬をよこせみたいなことをアララギさんという女性が言ってましたね。
「でも、ドクターはいつもの破壊衝動で燃やすつもりだったみたいですし……。しかるべき機関のひとに渡したほうが、有効活用してもらえるのでは?」
「エレちゃん、おかしいとは思いませんか。あのゲンスケさんが、爆破するのではなくただ燃やすなんて」
「むむ? 破壊には変わらないんじゃ?」
「地味すぎます」
たしかに!
不治の病の治療薬なんて完成させた日には、花火を仕込んだ爆弾で派手にドカンとやるぞ、とかなんとか言って大喜びで打ち上げそうなのに。
なーんかずっと、テンション低かったんですよねぇ……。
まさか弱みを握られていて、脅し取られた感じなんでしょうか。
職も家族もなければ守るべき尊厳もとくになさそうな、あの無敵人間 Dr.ヒラガに弱み……!?
いやまあ、家に呼んで開口一番割烹着を着せようとしたことはじゅうぶん恥ずかしい黒歴史ですけど。それだけじゃ、あんなにしおらしくならないでしょうし。
ていうか、いつのまにかなし崩しにゲンスケさん呼びしてません?
おとなしそうな顔して、周りから固めたり既成事実作っていくタイプの女ですよ、このひと。
「ところで、ヒナギクさん。さっきからなんか変な音がしませんか? パチパチって」
「調査します──安全基準を超える電流の存在を検知しました。発生源はエレちゃんが持っているA4サイズの書類収納ファイル、原因は人並み外れた帯電体質にPVC(ポリ塩化ビニル)製のクリアフォルダが反応したものと思われます」
なるほど。ボクのデータベースによると、小学生が下敷きで遊んでるのと同じ原理ですよね。静電気で髪の毛が逆立ったりするやつ。
そういえばボクにも特技があったんでした。いらないけど。
「わー、すごいパチパチする。結構楽しいですね。えいえい」
「エレちゃん、それ以上は危険です! さっき渡したダイナマイトをすぐに離してください!!」
えっ?




