14話 突然ですが、地球の危機です
Dr.ヒラガの日記には、いったいなにが書いてあったんでしょう?
こないだKJ001号といっしょにお買い物に行って、小耳に挟んでからというもの──じつは気になってしかたないのです。
彼女は口が堅いので(というより、たぶんセキュリティシステム発動してますね、あれ)詳細は教えてもらえませんでしたが、ドクターの唯一の話相手だと言っても過言ではない助手のボクがなにも知らないなんて。
でもまあ、本人が隠しているみたいですし、KJ001号の「家族になってあげたい」発言からも察するに、あまりハッピーな感じの内容じゃなさそうです。
悲しい過去でもあって、あんな変質者になっちゃったんでしょうか。
と、噂をすれば。
ドクターが自分の部屋から興奮気味に出てきました。
「助手、朗報だ! ついにやったぞ、この地球は24時間後に爆発する!! 今度こそさらばだ人類!!」
……どう間違ったらこんな感じになっちゃうのか、ボクのデータベースにも参考がありません。ぜひともきっかけを知りたいものです。
***
今日の朝ごはんはサンマの塩焼き、ほうれん草とお揚げのおひたし、えのきのお味噌汁。デザートは柿です。おいしそうですね。
Dr.ヒラガは上機嫌なこともあり、めずらしく献立に文句も言わず黙って食べています。
ボクも小骨を取り除いたサンマの身をわけてもらいました。
「サンマおいしい……秋の味覚……はぐはぐ……。で、ドクター? さっき、ナニが何時間後にナニとか言ってませんでしたっけ? どういうナニでしたっけ、それ?」
できれば知りたくなかったんで、しばらくスルー決め込んでたんですけど。
このまま今日という平穏な1日を満喫したかったのはヤマヤマなんですけど。
一応聞いとかないと、ナニやらかしてるかわかりませんからね、この男。
「じつはだな、3年前に『時間差で完成する爆破装置』を用意していたのを思い出したのだ。私の預かり知らぬところで勝手に爆発が起これば、破壊衝動に駆られて壊すこともないだろうとな」
3年も前からそんなろくでもないこと仕込んでたんですか。
ものすごいドヤ顔。完全にニヤニヤしてます。
「預かり知らぬって……つまり、ただ忘れてただけじゃ?」
「忘却を見越した仕掛けだ! 簡単に説明すると、富士山の内部に反物質を製造する巨大な粒子加速器をあらかじめ設置していた。物質と反物質をぶつければ対消滅反応が起こり、大規模な爆発が可能となる。3年かけて、地球を吹っ飛ばすエネルギー量の反物質が出来上がるのだ!!──ということを、今朝思い出した」
なに勝手に富士山で危ない実験やってるんですか!?
ちまちまと秋葉原や中野をドロンしようとしてただけかと思えば。
なかなかとんでもねえことしてやがりますよ、この人!
「目論見は見事成功、地球は木っ端みじんになるぞ。最強兵器のKJ001号なぞいなくとも、破壊は遂行できるということがわかったな。ははははは」
またそんなヒドイこと言って! ちゃっかり手作りごはん食べてるくせに!
当のKJ001号は台所でお茶を淹れてくれてますが……。
ドクターは急に小声になってボクにこそっとないしょ話をしてきました。
「ほら、あれが、その、なにやら怪しげな攻撃を放ってきただろう」
「攻撃? KJ001号の防御システムは優れていますが、彼女は防御のみで攻撃しないでしょう?」
「したんだ! 助手も見ていたはずだ、あれはいわゆる、古今東西の傾国の妖婦たちが使ったとされる魅惑の術というやつではないのか!?」
もごもごと要領を得ない口調でなにを言い出すのかと思えば──
もしかして、あの笑顔のことですか。
まさかとは思いますが、めっちゃ効果あったんですか。
「私は身の危険を感じたのだ。破壊行為を急がねばならん」
自分こそ歩く危険人物なのに!?
そりゃあ彼女にアドバイスしたのはボクですけど、だれだって笑いかけられれば悪い気はしないんじゃないかなぁくらいで言ったんですよ?
はあ~どうしましょう、ドクターが非モテだってことをすっかり忘れてました。
耐性がなさすぎて、意識しすぎちゃう男子中学生みたいなメンタルになってしまいました。
照れ隠しで破壊行為に走られちゃ、人類が困るのです。
「と、いうわけで。地球は23時間後に爆発する。おい、KJ001号、お茶の前にもう一杯飯のおかわりをくれ」
「ふうん、どういうわけかはわかりませんが、それはそれは……大変ですねぇ。あ、ボクももう少しサンマが食べたいのです」
「はい、おふたりともおかわりですね。承知しました」
でも~、いきなり23時間後とか言われても、どうしていいかわかりませんしね~。
逆に落ち着いて朝ごはん食べちゃいましたよ。はぐはぐ。




