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八人の世界転移されし王者  作者: 属-金閣
第一部 八人の王
6/15

第六話 『ジダイ王』の秘密

 

 主人公の前に現れたのは、『七王』の一人である『ジダイ王』だった。

 『ジダイ王』は、ゆっくりと主人公に近付き手を差し伸べる。


「大丈夫かい?」


 だが、主人公はその手は取らずに数歩距離を取った。


「そりゃそうだよな。見ず知らずの奴の手なんて取る方が、おかしいよな」


 そう言いながら、『ジダイ王』が高笑いをした。


「(何なんだよ今日は...次から次に『王』がやって来て、こんなに会えるもんなのかよ)」


「それで、君は俺の手を取るか? それとも『剣王』に殺される道を進むかい?」


「っう....」


 『ジダイ王』の問いかけに主人公は、答えに詰まり目を逸らしてしまう。そんな一瞬のうちに『ジダイ王』は主人公の目の前に移動していた。


「まぁ、答えは聞くまででもないだろうがな....」


「っ」


 主人公は突然目の前に手を伸ばして来た『ジダイ王』に驚いたが、瞬発的にその手を弾いた。

 次の瞬間、主人公は体の力が急に抜けその場で尻餅をついてしまう。


「何だ、急に力が....」


 更に主人公は、目の前が霞み始めた。そして先程まで目の前に立っていた『ジダイ王』がいなくなっている事に気付く。


 すると真上から『ジダイ王』の声が聞こえてきた。『ジダイ王』は主人公の真後ろに立ち覗き込む様に顔を近付けていた。


「さぁ、おねんねの時間だよ〜」


 その声は主人公に二重に聞こえると同時に、視界が歪み始める。そして主人公は、そのまま後ろにに倒れてしまう。


「な....何をし....た....」


「あんな『国王』のパシリに、君を渡すわけにはいかないんだよ」


 しどろもどろの口調になった主人公は、そのまま意識を失ってしまう。そして『ジダイ王』は、意識を失った主人公を壁にもたれさせる様に体を起こし上げた。


 すると『ジダイ王』は、主人公の顔に手を当てて呟いた。


「暫くそのままで、いてもらうよ。なに、退屈はさせないさ」


 薄っすら笑いながら告げた『ジダイ王』の元に近付く足音が響く。


「何処かで聞いた事がある声だと思って来たら、お前か『ジダイ王』」


 そこに現れたのは『剣王』だった。『剣王』は、『ジダイ王』の目の前にいる主人公を見てだいたいの状況を把握した。


「誰かと思ったら、脳剣君じゃないか? どうしたんだい? そんな血相変えた顔してさぁ?」


 あえて『ジダイ王』は『剣王』を挑発する様な言い方をするが、『剣王』は挑発には乗ってこなかった。


「どうせお前の事だ、何処から俺をつけて来たんだろう。それと挑発しても無駄だ。今の俺はお前に構ってる暇はないんだ」


「ちっ....いつもみたいに突っ込んで来てくれれば楽だったのによ....」


 そう『ジダイ王』がボヤくと『剣王』が剣を向けた。


「最後の『王』をお前に渡す訳にはいかない。それに今俺は、最後の『王』に認められる試験を受けてる所なんだ。邪魔をするな」


「(認められる試験だと....何だそりゃ?)」


 『剣王』が剣を構えたまま動かずにいると、『ジダイ王』は立ち上がり両手を上に上げた。


「はいはい、抵抗はしませんよー」


「....」


「何? 信用ないの? 何もしないって」


 無抵抗な『ジダイ王』を見て『剣王』が問いかけた。


「お前、いつからそんなに相手を小馬鹿にする様になった?」


「は? どう言う意味だ?」


「まぁいい....今のお前を信用する訳にはいかない。少し気を失ってもらう」


 そう言うと『剣王』は一瞬で『ジダイ王』の背後に移動すると、腰元から鞘に入った短剣で『ジダイ王』の首元を打ち付けるように振り抜いた。だが、その攻撃は空を斬った。


「なっ!?」


「残念」


 そう言いながら、『ジダイ王』は舌を出して顔だけ振り返った。


「お前!....っ!?」


 その時、『剣王』は先程までいた主人公がいなくなっている事に気付く。


「あっ、気付い....」


 そう『ジダイ王』が言い切る前に、『剣王』は『ジダイ王』の胴部を剣で振り抜いていた。しかし、その攻撃も空を斬ってしまう。


「まぁ、つうわけで最後の『王』は俺が貰うわ。....後言い忘れたけど、そろそろ『国王』の調査隊が着く頃だぞ。独断行動と最後の『王』を取り逃した言い訳でも考えてた方がいいんじゃねぇか?」


「っっんぐ!!」


 そして『ジダイ王』の体は徐々に消えて行く。それを前に『剣王』は何も出来ずに、奥歯を噛み締めながら睨んで立ち尽くしているのみだった。


「貴様....余計な事まで....」


「愚かな脳剣君....次は、君主の命に背かないようするんだね〜」


 『ジダイ王』は『剣王』を見下すように高笑いして目の前から消えた。

 その数分後、『剣王』の近くに『国王』が派遣していた騎士達がやって来た。


「こちらに居られましたか『剣王』様。『国王』の命でやって参りました調査隊の....」


「少し黙ってろ....」


「い、今何と?」


 『剣王』は黙って剣を床から壁に向かって振り抜くと、壁の一部が滑り落ちた。


「今の俺に話しかけるな」


「は、はい」


 その光景と『剣王』の威圧的な発言に萎縮した騎士達は二、三歩下がり待機する。


「(『ジダイ王』、お前だけは許さん....)」



 ◆



 そこは暗い暗い森の中だった。俺はそこを誰かと一緒に走って何処かへと向かっていた。

 俺の前を走る人がこちらをチラッと向いて、何を言っていたが、顔も見えず何を言っているか分からなかった。


 直後、目の前を走っていた人物が、真横から出て来た人物に突っ込まれて俺の視界から消えた。その場で足を止めたが、先程まで前を走っていた人物から先に行く様にジェスチャーされたので、俺は断腸の思いで再び森の中を走り始めた。


 そこで何故か俺は、涙が溢れて出していた。俺にはなぜ涙を溢しているのかは分からなかった。


 すると目の前が真っ暗になった。何が起きたのか分からずにいると、すぐに目の前が明るくなった。


 そこに広がっていた光景は先程までの場所とは違っていた。俺の目の前には光る透明の壁があり、目の前には誰だか分からないが、血だられの人物が俺を守るように立っていた。


 その正面には、顔も分からぬ人物が七人立っていた。俺は誰だが分からなかったが、何故だか異様なまでの怒りと悔しさが湧き上がって来た。


 俺は見えない壁を叩きながら、その人物達に何かを叫んだ。すると、七人のうちの一人が近づいて来て、俺を守るように立っていた人物の口元を塞ぐと勢い良く腹部を殴るような仕草をすると、俺の目の前の透明な壁にその人物の血が飛び散った。


 そして守っていた人は下にずり落ちると、その人を殺した奴が、俺に向かって笑いながら口を開いた。


「どうだ? 目の前で■■■が殺されるのは? だがこれで、全員無駄死だな。何でこんなザコを逃そうとするんだか?」


 俺はその言葉に反論するよりも、目の前の奴を殺したいと言う感情が抑えきれなくなっていた。


「まぁ、それもしょうがないよな〜あれも、それも、こいつも、ぜ〜ぶお前が弱いせいだもんな〜■■■。....いや、コイツらにはこう呼ばれてたんだっけ? 主人公君」


 その場で俺は、言葉にならない叫び声をその者に向かって発した。


 直後、記憶の映像がブツんと切れた。



 ◆



 主人公が次に目を覚ますと、また薄暗い部屋だった。目の前には柵があり、ここが牢屋だと分かった。


 すると主人公は、朦朧とした記憶の中で何が夢を見ていたような気もしていたが、何を見ていたか思い出せずにいた。


 そして頭がズキズキとしていたが、徐々に痛みも引き意識がハッキリして来ると、直前までの記憶を思い出す。


「....そうだ。確か俺は、『ジダイ王』とか言う奴に何かされて、その後....その後....」


 そこまで思い出すも、明確にどうなったかまでは思い出せずにいた。

 すると背後から声をかけられて振り向くと、そこには片腕ずつ壁の拘束具に繋がれ、俯いた状態で着てる服もボロボロの人物がいた。


「君は、何故ここに連れて来られたんだ?」


「俺は....よく分からない」


 主人公の答えに壁に繋がれた人物は、追求せず別の質問をした。


「それでは、君は何者だい?」


「....俺は....俺にも分からない....」


「そうか」


 壁に繋がれた人物が小さく呟くと、主人公はその人物へと近付いた。


「それで、貴方は誰なんだ? 何で拘束されて、ここに居るんだ?」


 壁に繋がれた人物は俯いたまま主人公の問いかけに応えた。


「私は、アイツに利用されているんだよ。私が外にいると、アイツにとって都合が悪いからね」


「アイツって?」


 そう聞き返した所で、柵の外に『ジダイ王』が現れた。


「目を覚ましたのか、最後の『王』。で、早速そいつとお喋りかい?」


「アンタは!」


 主人公はすぐさま柵まで近付くと、『ジダイ王』に柵から手を出そうとした。だが、その手は柵に貼られていた結界によって弾かれる。


「いってぇ....」


 手に電気が走ったような痛みが伝わり、すぐさま手を振るって痛みを和らげ、『ジダイ王』を睨む主人公。


「そう睨むなよ。ここまで運ぶの大変だったんだぞ?」


「ここは何処だ? あの時何をした? あの人を何故拘束している?」


「質問が多いな....お前、自分の立場が分かってるのか?」


 そのまま主人公と『ジダイ王』は睨み続けたが、暫くすると『ジダイ王』が目線を外し軽いため息を漏らす。そのまま柵と逆の壁に移動し、両腕を組んで寄り掛かった。


「お前の質問に答える義務など俺にはない。お前は俺の質問に答えればいいんだよ」


「っ! ふざけっ....!?」


 主人公が言い返そうとした時だった、突然めまいが起こりその場で座り込んでしまう。

 暫く呻き声をあげながら痛みと戦う主人公を見て、『ジダイ王』は小さく舌打ちをした。


「(まだ完全に解けてないのかよ....)」


 そこに壁に繋がれた人物が口を挟んで来た。


「おい、さっきの言葉は本当なのか! そこの彼が最後の『王』と言うのは」


「あぁ、本当だぞ。『魔王』『剣王』が、彼を最後の『王』を言っていたからな」


「そうか。遂に現れたのか、八人目の『王』が....」


 壁に繋がれた人物は、それだけ聞くとまた静かになる。その間に主人公のめまいも治ると、再び立ち上がり『ジダイ王』の方を向く。


「お前にも言っとくがな、俺はお前らが探す『王』とかじゃないぞ。勝手にお前らがそう言ってるだけで、俺はただ元の世界に帰りたいだけなんだよ!」


 主人公が力強く言い放つと、『ジダイ王』が大きく笑う。


「お前がどう思うが勝手だが、この世界の人間でない時点でお前は既に特別な存在なんだよ。現に俺達『七王』は全員別世界にいたんだぞ。そう考えると、お前も別世界から来た時点で、同じ『王』もしくは、『王』になる事は間違いないと言う事だ」


「っ....」


 その発言に主人公は何を言い返していいか思い付かずに、黙ってしまう。


「まぁ、まだ自覚が無いと言うだけで、いずれお前自身が何の『王』か分かるだろう。『王』とは魂に刻まれているもんだ。決して忘れるものじゃないからな」


「魂に....刻まれたもの」


「それは比喩的な表現だ。とりあえず、お前も『王』と言うわけだ」


「俺が、お前らと同じ『王』?」


 主人公は二、三歩後ろに下がり信じられないような表情で頭を左右に振った。主人公は『ジダイ王』の言葉を信じられずにいると、突然激しい頭痛が襲う。


 今まで以上に激しい痛みが主人公を襲う。頭から何かが割って出ようとしている様な痛みと戦い、苦しい声を上げる。


 突然の事に、『ジダイ王』と壁に繋がれた人物は驚く。


「(なんだ....もう解けたんじゃないのか?)」


「(彼は、本当に最後の『王』なのか?)」


 主人公は頭痛に耐える中で、今まで曖昧になっていた記憶を思い出す。コウカと出会う前に化け物を一掃した事、コウカの村を救った事、魔王城での人間擬き達を倒した事。


 全て自分がやっていた事を思い出す。


「あれは....俺が....やっていた....のか?」


 だが、主人公の頭痛は治らず痛みが増すばかりだった。そしてそれを見た壁に繋がれた人物が、『ジダイ王』に向かって言い放つ。


「おい、今すぐ彼に力を使え! このままじゃ、彼がどうにかなるぞ!」


「うるさい! 俺に命令するな!」


 そう答えると『ジダイ王』は主人公に向かって片手を向けて何かを放つ様な動作をする。すると主人公の呻く様な声が止まると、主人公はその場で眠ってしまう。


 それを見て二人は、一安心したのか安堵のため息を漏らす。


「おい、彼に事前に何か力を使ったのか?」


「黙れ! お前には関係ない事だ!」


「それと、これで目的を果たしたんじゃないのか? 俺を解放してくれてもいいだろ?」


「今日はやけにお喋りだな! 『()()()()』!」


 その言葉を言った直後、壁に繋がれた人物はニヤッと笑い、『ジダイ王』は自分の失言に気付き舌打ちをする。


「やっと私の名前を呼んだな、『虚王』よ。これで私の力もやっと使える様になるな」


「お前、狙っていたのか?」


 そう柵の外にいた『ジダイ王』が言うと、徐々に姿が変わっていった。そして壁に繋がれた人物の姿も変わり、そこには『ジダイ王』が繋がれていた。


 一方で柵の外には、先程より少し背が低く目付きが悪い姿となった元『ジダイ王』こと『虚王』が立っていた。


「まぁ、一時的解けたとしてもまた同じ事をすればいいだけだ。『ジダイ王』お前はまだ俺の役に立ってもらうぞ」


「それは、どうかな? 二度も引っかかる様な私ではないぞ」


「そんな状態で、どんな強気の言葉を言っても意味ないぞ『ジダイ王』!」


「っ....」


 『虚王』は柵に近付き、片腕を繋がれている『ジダイ王』に向けて笑みを浮かべた。その瞬間だった、眠っていたはずの主人公が、突然俯いたまま起き上がると『ジダイ王』と『虚王』の間に立ち塞がった。

 そして主人公は、小さく呟いた。


「全部、思い出した....俺は『世界王』だ」



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