3+T=
凄くくだらない事に気付いてしまった。
「ねぇねぇ!宮野!」
「んだよ、酉。何か間違えてるのか?」
高校時代のPC教室に、2人の男女がプログラミングの勉強中。
一見すると、男子が教えて、女子が学んでいると思えるが、実は逆。
まだプログラミング初心者の宮野健太が、変数名を大文字のTで宣言した事で、彼に教える酉麗子は気付いた。
「”3+T=”って、何になると思う?」
プログラミングのマナーであるが、変数名が大文字英字で宣言される事はない(宣言自体は可能ではあるが)。
関数名などの頭文字に大文字の英字を使い、プログラミングコードを綺麗に見やすくするための、マナーである。変数名と関数名が似ているとごっちゃになって、見辛いのだ。
「知らねぇーよ」
「ふっふーん、分からない?」
興味なさげの返しだ。しかし、オカシイという指摘をされているのは分かる。
宮野はその答えに興味はないが、恥をしていると知って、プログラミングコードを眺めて、すぐにミスに気付く。
「分かってるよ。俺がヘマしてた事はな。直したよ」
「この年頃の女の子なら欲しいものだよ?」
「お前のクイズは知らねぇーよ。課題やるぞ」
「えーっ、訊いてよ。すっごくくだらないのよ!!」
それを聞いて、なんのためになる?
むしろ、酉が聞きたいのはこの答えではない事を、まだ彼女と出会ったばかりの宮野でも察しはついた。
「”3+T=”は一体なんなのかなぁ~」
「…………」
宮野の意見を答えろって言っているのだ。
”3+T=”とは、どんな答えになる。
「……サンタか?」
分からん。という答えだ。
けど、それっぽいのを言ったつもりだ。酉のヒントの力が何も役立ってない答え。
「ぶっぶー。正解は、男性器よ!!」
「……………」
そー言って酉は、ペイントソフトを開き始め、マウスでちゃっちゃと描く。
「大文字のTの下から、3を足すと……見えるでしょ!?どう、すごく」
「くだらねぇ」
「でしょーーー!?」
すっごくため息が出るほど、くだらねぇって、お互い分かり合える事で。酉は笑顔になっていた。
「けど、私に訊かれてドキッてした!?すごくした!?言われてどうだった!?」
「まるでしねぇ。くだらねぇから、勉強しようぜ」
「……んんっ?真ん中長くする?太くする?両方?」
「必要に見てんじゃねぇーよ、馬鹿。ありえねぇーよ。ペイントツールは消せ。描くな。勉強できねぇだろ。股に手を突っ込むな。アホ」
「あはははは、抵抗が可愛い~」