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堅実勇者  作者: 髭付きだるま
第3章 行商人見習い&勇者見習い
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第85話 ドヴェルグ連合国の旅10 レンチの町

山賊赤錆団を退治し、取り調べが終わり、感謝の夕食会と山賊退治の収支交渉が終わった翌日、ケンの姿はレンチの町の行商地区にあった。


今朝は朝食を食べた後、マール国の勇者一行全員を集め、昨夜決定した山賊退治の収支について説明し、これを全員に分配した。

師匠であるギイから「金の配分については早めに行った方が良い」とアドバイスを受けたからである。


まず全体の収支を発表した後は、各々働き毎に配分率を決めた。

ちなみに略奪品の買取価格が予想以上だった為、

全体の収支も跳ね上がったので全員大盛り上がりだ。


内訳は以下の通りである。


・これからの勇者としての活動資金の為に25%は貯金

・一番活躍した旦那は全体の25%

・次に活躍したスミレは5%

・同じくホドにも5%

・山賊の首領を倒したケンも5%

・シンとギンがセットで2%

・10人の冒険者達に10%(1人1%分)

・9人の兵士達に9%(1人1%分)

・5人の騎士達に5%(1人1%分)

・ギイ、ヘイ、ハナ、ソレナ、ノウ、ホッコ、ニック7人で7%(1人1%分)

・待機組全員で2%



まともな戦果が山賊の首領の首一つだけだったので、ケンは自分の配分率を下げた方が良いのではないかと聞いたが、旦那に却下された。


「馬鹿者、人間相手だろうとモンスター相手だろうと、敵の親玉を倒した者にはそれなりの評価を与えるのは当然だ。寧ろ勇者としての活躍部分の評価が足りないから増やしても良い位なのだぞ」

「勇者としての活躍って・・・俺何かしましたっけか?」

「山賊を退治する事を最終的に決めたのはケン、お前だろう。お前があそこで決断したからこそ赤錆団は壊滅し、多くの被害者を救出することが出来たのだ」

「しかしそれは結果論では?」

「過程がどうであれ、最終的に勇者らしい行動をし、多くの人々を助け、多額の報酬を手にしたのだから誇るべきだ。そうだな・・・私の配分が多すぎるので、5%分をお前に譲ろう。これで私が20%ケンは10%の取り分だ」

「それは多すぎではないですか?」

「配分が少なくては勇者として格好が付かないだろう?多いと思うならこの金を使ってマール国に貢献してくれ。折角の行商人勇者なのだからな」


そういう訳で旦那から配分率を貰ったケンは一行の中で2番目に配分率が多くなった。




ちなみに他のメンバーは誰も不平不満を言わなかった。

こういった場合、普通なら兵士にも冒険者にも、ましてや待機組にもお宝の配分など行わないのが常識らしい。


何故なら冒険者は事前にギルドを通じて護衛の任務を受けており報酬はギルドから払われるし、兵士と騎士は国から給料を貰って王族と勇者の護衛をしているのだ。だからここで配分がなくても何も問題は無い。それが当たり前であった。


しかしケンは今回の山賊退治は彼らの任務外の仕事であると考え、分配することを決定した。待機組にも同様の理由で金を配った。何だかんだで数日間街道で足止めをしてしまったからだ。


そんな訳で彼らはケンの気前の良さに大満足していた。ギイもノウもナッカ大使も彼らに配分する必要は無い事をケンに説明したが、最終的には納得してくれた。


これでケンに対する心象が良くなるなら安いものだと考えたのだ。

勿論元々の金額が多かった為、ケンの取り分も十分にあるからこその判断だったのだが。


その後、配分率をレンチの町の担当官に伝え、各自の口座にそれぞれの金額が振込まれる事となった。なお金額が大き過ぎるため、一度では全額の支払いが不可能であったので分割払いだ。午前中丸々掛けて手続きを終えたマール国勇者一行は、本日支払われた第一回目の入金金額を見て、皆揃ってほくそ笑んでいたのだった。


ちなみに現物で貰うことになった略奪品の殆どはメインメンバーの武具として利用されたり、アイテムボックス内にいざという時の為の換金用として眠っていたりする。残りは馬車に乗せられて待機中だ。ここはレンチの町の兵士の詰め所。盗難に関しては全て町が責任を持つと決められたため、現在も兵士が馬車の周りで警護をしている。




そして昼食を食べ終わって午後、ケンはヘイとホドとギイと共に行商地区を訪れていた。明日から始まるこの街での行商場所を決めるためである。


ちなみにハナとソレナとハスは未だに殺人のショックから抜け切れていないため、詰め所隣の宿舎で休んでいる。スミレとレンゲが世話係として残っており、マール国の兵士や騎士達も大半が疲れが取れずに休んでいた。とはいえ一人元気な旦那が護衛として残っているのでケン達は安心して町を散策していた。


残りの冒険者達は例によってギルドで仕事探しだ。

山賊騒ぎのお陰で予定よりも到着日が遅れてしまったが、元々余裕を持って日程を組んでいたので、勇者の国での集合日までにはまだ余裕がある。結果この町でも予定通り5日間の行商の修行をし、その後で最終目的地である勇者の国へと向かうことが決まった。彼らはその間、レンチの町で冒険者活動をするのだ。逞しい事である。


レンチの町は勇者の国とドヴェルグ連合国各地を結ぶ街道沿いにある宿場町であり活気があった。


スパナの町が山に引っ付いて作られた鉱山の町だったのに比べ、レンチの町は5m位の城壁にぐるりと囲まれた平地にある街である。


基本的に各家は石造りで、それほど高い建築物はない。精々2階建てだ。

しかし街自体に広さがあるので狭い印象は感じない。

ちなみにこの町は他の街と比べても宿屋の数が多い。

この町からはケン達が通って来たカンナの町へ通じる北の山道、オリエンタル帝国に通じる東の街道、ドヴェルグ連合国首都へと通じる西の街道、そして勇者の国へと通じる南の街道が通っているため旅人達がひっきりなしに訪れるのだ。


その為この街の行商地区もかなりの活気を見せていた。


ここより北では余り見ない黒髪黒目で顔が平たいオリエンタル帝国出身の行商人もここでは良く見かける。ケン達マール国の人間はオリエンタル帝国の人達に近い風貌をしているため、ドワーフばかりだったドヴェルグ連合国内であるにも関わらず、何故かホッとする感じを受けていたのであった。


彼らは東方の国ならではの珍しい品物を商っていた。

こちらでは余り見かけない「コメ」と呼ばれる穀物。「ミソ」や「ショーユ」といった調味料。そしてオリエンタル帝国では「妖怪」と呼ばれているモンスター由来の輸入品が所狭しと並んでいた。


「何々、烏天狗の羽を使ったマントにぬりかべの盾、一反木綿のふんどし?ふんどしって何だ?」

「アニキに分からない物が俺に分かる訳無いですよ」

「何やヘイはオリエンタル帝国には詳しく無いんか?」

「流石にオリエンタル帝国には行ったことは無いからなぁ。俺が行ったことのある国外はシカーク王国とドヴェルグ連合国だけだ」

「はぁ?何やそれ、センターの村で数か国を巡ったとか言うとったやろ」

「ヘイ君、正確には2カ国だろう。それじゃ詐欺だぞ」

「良いんですよ、間違ったことは言ってねぇんだから」

「物は言いようやな、全く・・・」


ケン達は店を冷やかしながら行商に適した場所を探し回った。

結果としてメインストリートからは外れるが人取りのある場所に安くて良い場所があったので、そこを借りて行商をすることを決めたのだった。


そして明日からの場所代を支払いに向かったのだが、領主からのサービスなのか、この街での行商代は今回に限りタダであると告げられた。その為、ケンは場所を変更し、メインストリートの一角を借りることにした。折角の機会だ。人通りの多い場所で出店する機会を逃すのは行商人として失格であろう。


そして日が暮れる前には宿舎に戻った。宿舎の食堂にはハナ達がおり、ドヴェルグ連合国で良く飲まれているトウモロコシ茶を飲んでいた。


「ハナ大丈夫か?まだ気分悪いなら無理するなよ」

「ありがとうケン。もう大分良くなってきたわ。今夜からは食事も取れそうよ」


ハナは若干やつれた顔でそう答える。ハナ達3人は、山賊の襲撃以来、まともに食事が取れていなかったのだ。しかしどうにか水分は取れるようになってきたので、次第に食事も取れるようになるのだろう。食べなければやっていけない。これからは行商人としても勇者の仲間としても、王女としてもタフにならなければならないのだ。


「寧ろケンさんはどうしてそんなあっさりと立ち直ったのですか?」


ハスがそんな事をケンに尋ねてくる。ケンはしばらく考えて自分の考えを告げた。


「う~ん、多分だけど、弓やアックス逆茂木を使って殺したから、直接殺人の感触を味わっていないことが一つ。それと山賊に殺されていた人達を埋葬したのが大きいのかもしれないな」

「ああ、そんな話もありましたねぇ。話を聞くだけでも酷い状況だと分かりますよ」

「うん酷かった。でも話だけで伝わったかどうか・・あの鉱山跡の中の匂いとか、奴隷にされていた人達の泣き声とか、絶望しきった目とかを見てしまうと山賊は殺して正解だったと確信できたからなぁ」

「それはまた・・・奴隷にされていた人達は元気はありませんでしたが、そこまで酷いとは感じませんでしたよ」

「あの人達も救出当初は酷かったんだよ。何を言っても反応が無くてね。合流までの短期間で僅かでも人間らしい反応を返せるように回復したんだ」



ケン自身も、今回の山賊退治の影響はあったが、それ以上に酷い目に合っていた彼らを見たことで、衝撃の度合いが緩和されたようだ。良いのか悪いのか。


結局その夜、ハナ達は久しぶりに食事を取ることが出来た。

尤も肉料理は遠慮し、野菜とスープがメインであったが。




そしてハナ達との話が終わった頃合いで、今度はニックが帰って来た。

傍らにはナナとシンが連れ添っている。そして当然ギンとペンも居た。


山賊団に居たギンペは「ペン」と名付けられ、ナナと共に行動していた。

そしてナナはアジトから移動している時も、レンチの町に到着してからもニックから離れようとしなかった。ニックが離れようとすると途端に泣き出すのだ。ニックは困っていたが放って行く訳にもいかず、一緒に行動していた。


そしてシンはペンの事が放っておけずに一緒に行動していた。

他の奴隷にされていた人達はこの国の兵士達が対応している。

しかしギンペについては正直二の次になっていた。

よってこの町で唯一ギンぺの考えが理解できるシンが、ペンの担当に名乗りを上げたのだ。

シンの甲斐甲斐しい世話のお陰で、ペンもようやく普通のギンペのように振る舞えるようになってきた。


結果としてニックとナナとシンとギンとペンはセットになって行動することになったのだ。

「ギンぺと子供を引き連れた流れの牧師様」として町で噂になっていたのだが、結局その噂は町を出るまでにニックの耳には入らなかった。


彼は例によってこの街の炎の教会に向かい、その後は町中を歩き回っていたらしい。そしてニックはこの街でのケン達の評判を体感してきたのだそうだ。


「とにかく好意的な意見が殆どだったな。やっぱあの凱旋パレードの衝撃がデカかったみたいだぜ」

「凱旋パレードって、俺達この街の所属って訳じゃ無いんだけどなぁ」

「勿論俺らは違うがな。この街の兵士達の立場からすれば凱旋パレードで合ってるだろうがよ。救援要請されて、兵士が出発して、山賊達に捕らわれていた連中を助けてきたんだから凱旋になるのさ」

「倒したのは俺達なんだけどな」

「それについては領主から発表が有ったらしくてな、住民全員きちんと理解してたぜ。尤も勇者が行商人だって部分だけは半信半疑だったけどな」

「それは仕方ないな」


そう言ってケンとニックは笑いあった。

ニック的には町中を歩いているだけで何もしていないのに感謝されてしまったので、逆に困惑したそうだ。


「お前も明日からの行商時は人が押しかけてくるだろうから気をつけろよ」

「そう言われてもな、今日町を歩いていても誰も声を掛けて来なかったぜ?」

「言っただろ?半信半疑だって。お前はともかくハナが店に立てば絶対にバレる。そして同時に行商人が勇者だって事に信憑性が増すんだ。精々気合い入れて商売するんだな」


そう言ったニックの予言が当たっていたのは、翌日の行商開始後暫く立ってから証明されることとなる。





そして翌日から行商地区において、ケンとハナの最後の町での行商の修行が開始された。


ここでの修行が終われば、後は勇者の国へと向かうのみである。


そして、勇者の国に着いた後は、各国勇者達との顔合わせの為の準備で残りの日数は潰れるだろうと言われていた。よってまともに修行が出来る場所はこのレンチの町が最後である。ケンもハナも気合を入れて商売に精を出していた。


そして今、ニックの予想通り2人が始めた屋台は今迄に無いほどの大盛況を迎えていた。

何故なら出店してから暫くすると、山賊を退治した行商人が行商地区に出店しているという噂がレンチの町の至る所に広まり、ケン達を一目見ようと街中の町民達が押し寄せてきたからだ。


彼らは最初遠巻きに見ているだけであったが、その内見るだけでは飽き足らず、ケン達に話しかけ、握手を求めてくる様になった。

ケンが勇者で、ハナが王女だという話はとっくに知れ渡っていたので、町民達は新たな英雄の誕生に湧いていたのだ。


そしてケンとハナは、この状況を利用して商売を始めた。

とはいえ、握手一回幾らとか言うようなアコギな商売はしない。

要は「自分達は今行商人として活動しているから、話したければ何か買ってくれ」と宣言したのだ。

結果として、ケン達がレンチの町まで運んできた行商用の商品は期日を待たずに全て捌ききれてしまった。

余りに売れすぎて商品が足りず、勇者の国で売る予定であった商品まで売ってしまったほどだ。これについてはギイからも許可が出た。利益が出せる時に儲けておくことも重要だそうだ。



その結果、予定より2日も早く行商地区での販売は終了し、ケン達は出発までの間に十分な休息を取ることが出来た。

そして予定通りレンチの町を出発し、勇者の国へと旅立ったのだった。

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