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堅実勇者  作者: 髭付きだるま
第3章 行商人見習い&勇者見習い
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第62話 ハゲ三人衆

「そう言えばホド、あなたの故郷ってこの国じゃないの?」

「ちゃうで」

「あれ?」


ハナが思い出したようにホドに質問をする。

ここはナントーの町の宿屋の女子部屋の中、到着当日の夜の事である。


宿屋に案内されたマール国の勇者一行は、首都サウスから国境まで2日間、そして国境から5日間の旅の疲れをこの宿で存分に癒やしていた。到着した時間は昼前ではあったが、チェックインから荷物整理、食事に洗濯、そして1週間ぶりに汗を流せた一行には最早動く気力など存在していなかったのである。


結局行商も観光も依頼も「明日から」という事で意見が一致し、到着以降宿から一歩も出ずに過ごしていた。そして明日は早めに動こうという事になり、早めの夕食を食べた一行は各々割り振られた部屋へと戻って行った。


そこでそろそろ寝ようかという事でベッドに寝転がってからの会話がこれであった。

ハナはてっきりホドの故郷はシカーク王国だとばかり思っていたので目をパチパチとさせてしまった。

ちなみにソレナは既に寝ている。ベッドに寝たら一瞬だった、子供か。


「えっ、でもホドは森で狩りをしていてウエストエンドまで来ちゃったのよね。そうなると隣の国はシカーク王国でしょ?」

「ん~あ~ハナは勘違いしとるよ。ワイは確かにシカーク王国からマール国へ森伝いに入国したけど、生まれ故郷はまた別や。ワイの故郷はルネッサンス共和国やで」

「「「「えーーーー!!!!」」」」


部屋の中に女達の驚きの声が響き渡る。ルネッサンス共和国と言えば、大陸の西側を支配する超大国だ。どちらかと言えばオリエンタル帝国同様平べったい顔つきが多いマール国等の東側諸国と違ってルネッサンス共和国の人間には金髪碧眼で堀の深い顔つきの者が多いという。


またルネッサンス共和国が存在する大陸西側には独自の文化が存在し、遥か昔に当時の西側の国々を見て回った初代勇者が「まるでルネッサンスだね」と言った事が国名の由来となっているらしい。そんな理由なので「ルネッサンス」とはどういう意味なのか知っている人間は歴史上初代勇者意外誰も居ないのだが。


そんな事よりもルネッサンス共和国の人間が何故シカーク王国に居たのかが重要だ。ハナはそれについてホドに訪ねた。


「大した理由ちゃうで?冒険者ギルドの依頼でルネッサンス共和国からシカーク王国の北の港まで来たってだけや。陸路だと結構な日数が掛かるけど海路なら時間の短縮が出来るさかい船で移動する人は多いし、同じように護衛任務も多いんや」


「えっでもそれって帰りの仕事は大丈夫だったの?」


「問題あらへん。折角だからこっちの国を見て回ろ思てな、片道だけの依頼で受けてたんや。今回の冒険者の奴らと一緒やな。まさかその後久し振りに入った森の中で迷って、更に勇者の仲間にされるとは思ってなかったけどな」


キシシとホドは笑う。良く考えるとマール国出身者でもないホドがこの一行の中で一番無関係なのに、一番順応しているように見える。

その事を聞いてみると思わぬ回答が帰って来た。


「そこら辺はまんまお国の違いやね。ルネッサンス共和国みたいなデカイ国家はモンスターの活性化の時にとにかく被害が集中するんよ。逆にマール国は小さい分被害も少ないやろ?大国の人間は毎回の活性化の時には国民が一丸となって危機に対処するよう教育されてるさかい、勇者の仲間にされても「そんなもんかもな」って感じや」


「でもホド、ケンが勇者に認定された時はありえないって言ってたじゃない」


「いやありえへんやろ!行商人やで!ハナのお父はんを悪う言いたかないけど、今でもありえへんと思てるからなワイは」


「ああそっちか・・・」


「勇者の仲間にされんのは別にええねん。何処に行ってもワイは狩人や、獲物を狩るのが仕事やさかい。けどその勇者が行商人って!しかもケンって!何やねん、どないな人生やねん!って感じなんや」


ホドとしてはモンスターが活性化しようが、国が変わろうが余り関係ないのだろう。何処へ行っても狩人は獲物を狩るだけなのだ。しかし勇者が行商人という謎の事態には堪らず待ったを掛けたといった所か。その心情はは存分に理解出来る。


「ってかハナとソレナはともかく、ハゲ三人衆はどうなんや?今回の勇者の認定について何ぞ思う所は無いんか?」


「ホドさん「ハゲ三人衆」は止めて下さい!私は「ハス」です!」

「アタシは「スミレ」だ!」

「私「レンゲ」・・・」


「合ってるやん。ハス→スミレ→レンゲで最初と最後をくっつければハゲやん。3人いるからハゲ三人衆やん。覚えやすいやん」


「「「やめて~」」」



ちなみに今回の旅に同行している女性はハナ・ソレナ・ホドの他にも存在している。その内兵士として付いてきた3名とは同室であった。彼女達は「勇者の仲間」というよりも「国の兵士」もしくは「王女殿下の護衛」という立場であったので、同じく護衛をしているソレナやホドと同じくハナとは出来るだけ同じ空間で過ごすようにしていたのだ。



ハスはハナと同い年の兵士であり、元々は王女殿下に憧れて兵士を目指していたのだ。しかしハナは成人してからはお見合いの旅に出てしまい、帰って来てからは行商人になってしまったので全く接点は無かった。


しかし今回の勇者一行の募集を見て即座に応募、兵士歴は僅か2年半であったが、女性の立候補者が少なかったこともあり採用されていた。



スミレは既に兵士歴15年のベテランだ。成人してから15年間ずっと兵士をしており既に御年30歳。この世界では正に行き遅れと呼ばれる女性である。


しかしそれには理由がある。彼女は強かったのだ、剣に槍に弓と一通りの武術を高水準で会得していた彼女は、マール国の近衛部隊の副隊長であり兵士時代のハナの教官役でもあった。


そして彼女は1つの誓いを立てていた。「自分より弱い男とは結婚しない」という割とありふれた誓いだ。しかしそれが彼女の婚期を逃す原因となっていたのだ。


なにしろマール国は基本平和なのでそれ程の強さは必要とされていないのだ。よって同い年や少し上の世代では彼女には歯が立たない者しか居らず、自然彼女は更に上の世代との結婚を意識する。


しかし更に上の世代で彼女より強い者達は軒並み結婚をしており、残念ながら夫婦仲もよく、妻に先立たれた者もいない。

結果この年まで結婚相手が見つからず、遂に30の大台に乗ってしまった。


遂に彼女は「マール国にいては結婚せずに人生が終わってしまう」という結論に辿り着き、この旅に参加することとなった。


ちなみにこの彼女の動機については彼女自身から参加者全員に告知済みだ。彼女は結婚するまでは前線で存分に働き、結婚してからは後方支援として女性陣の纏め役をする予定になっている。


国としても彼女の存在は大きかったが、人生の半分を国に尽くしてくれた彼女に結婚願望を諦めろとは言えず、マール国上層部は優秀な人材を泣く泣く送り出したという。



そしてレンゲはそもそも兵士では無かった。彼女は元々はハナ王女付きの女官であり、お見合いの旅にも共に付いて行った女性である。

彼女は帰国後は城で内勤をしていた。そして今回ハナが勇者の仲間として旅立つことを聞くと、即座に参加者に名乗りを上げたのだ。


しかし今回の旅は何時終わるのかどころか生きて帰れるかも分からない勇者の旅である。普通の女官など参加出来る訳も無かったが、ハスと同じく女性の応募者がおらず、何よりもハナとは知り合いであるという理由で仕方なしに兵士見習いとして参加が認められたのだ。



ちなみにスミレは移動中及び休憩時間はほぼハスとレンゲに付きっ切りで2人に兵士としての訓練を受けさせていた。そして夜間、3人はハナ達と同じテントで眠りにつき男の兵士が守れない時間を担当している。


しかしそんな3人の自己紹介を聞いた後にホドが名付けたのは「ハゲ三人衆」である。この名前は実はじわじわと勇者一行の中で定着し始めているのだが、彼女達はその事に気がついていなかった。



「まぁそのアダ名はともかく、アタシは国王陛下の決定に従うよ。あの人は前の魔物の活性化が終了した後に危機的状況に陥った国を立て直した名君だ。たまに無茶苦茶だと思う命令をすることはあっても満足する結果は出して来たんだからね」


スミレはハッキリと国王陛下への信頼を口にする。兵士として15年も仕えていれば自国の置かれている状況も分かってくる。マール国は実際危険な状況であった。しかしそれでも諦めずに国を維持してきた国王陛下には全幅の信頼を寄せていたのである。



「うーん私は正直不安ですよねぇ。だって行商人ですよ!ハナ様にはもっと相応しい殿方が居る筈なんですから!」


ハスは懐疑的な意見を口にした。しかしケンの実力がどうかよりもハナとの釣り合いに目が向いているように見える。憧れの姫様が行商人に嫁入するのは耐えられないようだ。姫と勇者は結婚するものだという先入観があるのだろう。

誰一人そんな事は言っていないのだが。



「私は保留で・・・正直勇者とかよく分からないし、何が国にとって良いことなのかも分からない。結局それは終わった後に判断される事だと思うの」


レンゲは中立というよりも本当に分かっていないのだろう。基本大部分の国民はこの意見だ。国王様の意見だから信じたいけど、常識が拒否をするといった所か。

普通の女官に勇者や国家や世界の事など明らかに分不相応な話なのだ。仕方ない。



「結果結論は出ずか・・・まぁそやね。最終的に判断するのは歴史やね」


「何か壮大に纏めたわねぇ。まぁでも今更変更も出来ない訳だし、一緒に頑張るしかないのだけどね」


「私はハナ様に最後まで着いて行きます!・・・ムニャ」


寝ぼけたソレナが寝言を言った時点で5人は笑いだし、それから暫くして部屋の明かりは消えていった。

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