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堅実勇者  作者: 髭付きだるま
第2章 行商人見習い
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第55話 勇者誕生

そして1月後、ケン達4人は城の前に到着した。

今回のモンスターの大発生に際し、各地で活躍をした人物を表彰するのが今回の式典の目的らしい。ハナは王女であるため今回は既に城の中に居る。よってケン達は4人で出向いている。


お忘れかもしれないが、この国の城はこの国の首都の中心部に存在する。正確に言うと城を中心として主要な役所関係が密集し、其処を中心として東西に町が伸びているのだ。ちなみに城の後ろは湖である。この国の首都は丸い湖に沿って下向きに取り付いている三日月の様な形をしているのだ。


今回の式典は城の中にある謁見用の大広間で行われる事となっていた。ハナはこの国の王女であるからホスト役となる。実の所ケン達一行は付き合いは長いが未だにハナの王女バージョンを見た事が無かった為、密かに楽しみにしていたのだった。


そして一行は一人を除いて普段着ないような見事な服を着ていた。ギイが弟子達の晴れ姿として特別に仕立ててくれたのだ。一目見て上等と分かる生地を用い、しかし決して華美ではない。


ケンとヘイはあくまでも「少し裕福な商人が背伸びをしました」位に見える服である。


ホドは狩人の服装をベースに「カッコイイ森のエルフ」みたいな感じに仕上がっている。


そしてソレナは立派なマントを羽織り、いつぞや着ていた全身鎧に身を包んでいた。



「お前この馬鹿やろう!何でまたその鎧着てんだよ!」


「ふっふっふっ、確かにこれは重くて行商人の護衛には向かないと証明された訳だが、やはり騎士を目指す身としては正式な式典の場には着ておきたいのだよ。だからこれだけは処分せずに部屋に取っておいたのだ。何安心しろあれから私も鍛えたからな、今日1日これで過ごしても何も問題はない」


「あるに決まってんじゃねーか!師匠が用意してくれた仕立て屋はどうしたんだよ」


「あれは断った。ギイ殿には代わりに仕立て屋に支払う分の料金を頂いてな、鎧の修繕と調整に使ってしまったよ」


「お前の馬鹿さ加減に終わりはないのか!」



ソレナは1人で先に行くと言い一緒に来なかったために、城の前で待ち合わせていたのだが、到着して直ぐに話しかけてきた鎧にヘイは頭を抱えた。


そしてケンとホドはそれぞれの衣装について感想を漏らしている。2人共このような服装をするのは初めてなのだ。嬉しくてしょうが無いのだろう。



「なーなーどうやケン、ワイ格好良いやろ?セクシーやろ?」

「確かに格好良いね、物語に出てくるエルフの格好みたいだ!俺はどう見える?」

「や~結構イケてるで。何だかんだで筋肉も付いてきたし背も伸びとるしな。格好だけならもう一端の行商人やね」



セクシーの下りは華麗にスルーしてケンとホドはお互いを称え合う。

お互い格好のみを褒めているのは中身をよく知っている仲故か。


そうして城の手前でワイワイやっていると、城門が開き兵士が声を掛けてきた。



「相変わらず賑やかですね。皆さんお久しぶりです」

「また姉貴がヘイ兄ちゃんに怒られてるよ~。今度は何をしたのさ~」



それはウエストの町で知り合ったハナの弟でこの国の王子のノウ殿下とソレナの弟で殿下と同僚のホッコだった。



「おお弟よ!どうしてここに?まさかお前も表彰されるのか?」


「いや違うよ、この間の戦いの後に配置換えになって今は王城で働いてるんだ。ちょっと言えない部署の所属になっちゃったから連絡してなかったんだよ」


「言えない部署?何だ水臭い、この姉には何でも相談すれば良いのだ」


「お前って奴は、少しは察しろよ!お久しぶりです王子殿下、本日いらしたのはもしや?」


「流石ですね「参謀殿」あなた達の迎えを父上から命じられまして門の所で待っていたのです」


「それはありがたい。しかし参謀殿はお止め下さい。私は一介の行商人ですから」


「一介の行商人は王城で表彰されたりはしませんよ」



ケン達とノウとホッコは門の前で軽く挨拶を交わす。

そしてここでは何だからと一行は城の中へと入っていった。


ケン達行商人一行は初めて城の内部へと入ったが、そこはハナから聞いていた通り質実剛健とした空間であって決して綺羅びやかな場所では無かった。城の内部には多数の兵士が常駐し、見回り、点検、訓練に勤しんでいる。


そしてノウを見かけると皆立ち止まり敬礼をして行く。

それを見てケンは本当に偉い人だったのかと感心したのだった。



「今何か失礼なことを考えませんでしたか?」



ノウがケン達に向かってそう聞いてきた。どうやら思っていたことが顔に出てしまったらしい。そして皆同じように考えてしまったらしい。



「申し訳ありません王子殿下。こいつらは今迄高貴な人物に謁見した機会が少ないためいまいち良く分かっていないんですよ」


「まぁ仕方ありません。実際王女である姉と友達感覚で付き合っている訳ですしね。そう言えばホド殿は姉の友人だとか、仲良くして頂いてありがとうございます」


「いやいや礼を言われることちゃうで。ハナは本当に良え奴やさかい、ワイの方こそありがとうやで」


「いえ皆さんには礼を言っておきたかったのです。話を聞く限りセンターの村の状況は酷いものでした。あの状況で非戦闘員達を逃し、村の防備を整え、モンスターの大群を蹴散らして姉を守り抜いたあなた達には感謝してもしきれません」


「私達は何もしていませんよ。作戦を考えたのはヘイですし、何よりもハナ様が先頭に立って動いてくれたから村人達も応えてくれたのです」


「その報告も勿論受けています。しかし町に流れている噂程では無いにしろ、あなた達が先陣を切って動いたからこそ村人達も動いたのです。だから今回の表彰は寧ろ当然なのですよ。あなた達は一介の行商人一行を超える存在なのですから」



そう言ってノウはケン達に感謝の意を伝えてきた。本当はもっと早く会いに行きたかったが、国全体が大変な時期に個人的な感情で動く訳にはいかなかったのだ。


そもそもあの大規模戦闘の後すぐに中央から呼び出しを受けノウとホッコは配置換えとなった。配置されたのは城の内勤であり理由を問いただすと姉の生存が絶望的だという。


王位継承者の1人が生死不明な現状、もう1人の安全の確保は急務だったのだ。

ちなみにホッコはノウの護衛として一緒に城に呼ばれていた。しかし姉とは違い、それを家族に伝える事はしなかったのだ。出来る弟である。


そうこうしている内に控室へと到着した。ケン達は今回の主役である為、ノウ達とはここで別れ、呼び出しが有るまでここで待つという。


部屋の中には国の現状を示すように最低限の調度品しか無かったが、それでも来客を持て成そうという心遣いが感じられた。ケン達は思い思いに時間を潰してお呼びが掛かるのを待っていた。


そして暫くするとケン達は呼ばれ、大広間へと続く扉の前へと通された。ここで名前を呼ばれた後、中に入って謁見をし、褒美を貰って出て行くのが一連の流れであるらしい。




そうして扉が開かれケン達は城の大広間へと入っていった。

大広間の中には中央に謁見する者が通るカーペットが敷かれている。そしてその両側にこの国の兵士や騎士、そして貴族や大臣、大商人達が並んでおり、ギイやギルドマスターの旦那の姿も見える。


そしてカーペットの先、謁見の大広間の端には少し豪華な椅子があり、そこに王冠を被った男性が座っていた。ヘイは見知っていたし、ケン達は特徴が合致したので理解した。あれがこの国の王様である。


しかし一行は中央に座る疲れた眼差しを持つ中年男性よりも、その横に立つ2人の男女に目を奪われた。


片方は見事な儀礼服を着こなし軽い微笑みを向けている少し細めのこの国の王子、つまりノウであった。その斜め後ろには太り気味の体を無理やり服に詰め込んだようなホッコも見える。この2人どうやらケン達を案内した後に着替えたようだ。


そしてノウの横には鮮やかなドレスに身を包んだハナが佇んでいた。まるでこの国の自然の如き美しい緑色を基調としたそのドレスはハナの魅力を存分に引き出しており、普段見慣れているハナとの余りのギャップに一行は度肝を抜かれていた。


そのハナの魅力は参列者達にも効果的な様で、老若男女問わず視線がそちらに集中してしまっていた。


一行は揃ってポカンとしてしまったが、進行役であろう渋い男性の咳払いで我に返り、散々練習した通りに王様であろう男性の前でひざまずいてお言葉を待っていた。


そして進行役の男性がやはり渋い声でケン達の功績を朗読していく。

それは吟遊詩人が歌う英雄譚ではない本物の死闘の物語。

ケン達一行に加え、共に戦った村人達、先に逃された避難民達から事情聴取をし浮かび上がってきたセンターの村防衛戦の真の内容であった。


参列者達は初めて聞く実際の戦闘の凄まじさに息を呑み、それを成し遂げた新たな英雄達に賞賛の目を向けた。


防衛戦の内容が説明された後、続けてケン達に与えられる報奨金が読み上げられた。それは一介の行商人や護衛が受け取るにはかなりの大金であり、貧乏であるこの国にしては相当評価してくれたことが理解出来る内容だった。




本来ならこの後に王様から「よくやった」位の言葉を貰って退出する流れであった。

しかしこの謁見はここからが本番であった。


進行役の男性が「ではこれより国王陛下よりお言葉がある」と話し、一行は耳を傾ける。


ギイの話では

「ここで国王陛下が直々にお前達の功績を讃えて最後は「感謝する」とか「よくやった」で終わるから「ありがとうございます」と答えればいい」

という事だった。



だからケン達はそのつもりであった。

しかし国王陛下の口から出たのは全く想像もしていなかった内容であった。



「我が国と我が娘を守り抜いた諸君の実力と勇気は正に本物であり、我も1人の親として、そしてこの国の王として諸君に深く感謝を述べるものである」


「そして諸君の勇気に敬意を評し、我からも諸君に褒美を贈ることとする」


「行商人ヘイよ、諸国を巡り磨き上げたその深い知略と槍の冴え、更に自らの弟弟子達のみならず縁もゆかりもない村人達をも見捨てぬその心意気は誠に見上げたものである。よってそなたには准男爵の地位を授け、「ボーン」の名を名乗ることを許す。これからは「ヘイ=ボーン」と名乗るが良い」


「冒険者ソレナよ、そなたの活躍は正にかつて我が国の騎士団長を務めた曽祖父の再来と呼べるものである。長きに渡り一族を挙げて我が国に尽くしてきたその忠義に疑う所など微塵もない。よってヘイと同じく准男爵の地位を授け、再び貴族と名乗る権利を授ける。新たな家名は「リー」だ。これからは「ソレナ=リー」と名乗るが良い」


「狩人のホドよ、そなたは我が国の国民で無いにも関わらずその弓で何匹ものモンスターを射殺し、怪我を負いながらも我が娘と我が国を助けるために多大なる貢献を致した。よってそなたには他国の者に与える勲章の中で最上級である「マール国特別親善勲章」を授ける。これを授けられた者は我が国が存在する限り我が国の貴族同様に扱われる。よってそなたにも家名を授ける。家名の名は「ホード」だ。これ以降「ホド=ホード」としての人生を歩むが良い」


「そして行商人のケンよ、そなたはこの一行の中で最も若いにも関わらずモンスターの大群に対して先陣を切り、最後には伝説のモンスターであるキング・ゴブリンを実質1人で倒すに至った。我が娘ハナからも信頼に足る人物であるという評価を下されているそなたは正にこれから英雄となっていく人物であると我は確信しておる。よってそなたには男爵の地位を授け、「ジッツマン」の名を名乗ることを許す。これからは「ケン=ジッツマン」と名乗るが良い」



一同は平伏し練習通りに「ありがとうございます」と感謝の言葉を述べた。

そしてすぐに異常に気づいて揃って顔を挙げたのだった。


「平凡?」

「それなり?」

「程々?」

「堅実?」


ザワザワと大広間がざわめき出す。

そこに国王陛下は更なる爆弾を振らせてきたのだった。


「そしてケン=ジッツマン男爵よ、


「これよりそなたを我が国の勇者として認める!」


我が国出身の勇者となり堅実な活躍のもと無事に生き残るように」



そうしてその日、見習い行商人のケンは堅実勇者ケン=ジッツマンとなったのであった。

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