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堅実勇者  作者: 髭付きだるま
第2章 行商人見習い
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第48話 シンの進学準備の話

ケン達ギイ商会の行商人一行はケンの故郷であるノースファースト村には予定通り2泊して、セカンド、サードと村を巡りながら旅を続け、今日の目的地は山間にあるセンターの村である。


ケンの故郷の村では到着の翌日の行商時は村中の村民でごった返した。しかしその殆どはケンと挨拶をするために集まった村民達であり、行商自体の儲けは割りと普通だった。


この村はノースの町と近いため結構な頻度で行商人や冒険者が訪れる。その為皆それ程買い物には困っていないのだ。


本当は村の出身のケンから買ってやりたい所だが、生憎と手持ちの金は限られている。だからノースエンドから帰って来た時に、余っていた物はなるべく買ってくれると約束してくれたのが精一杯だった。村人に無駄金等中々無いものなのである。


そしてその夜、昨日渡し忘れていた家族への土産を渡した後に、ケン達はいよいよ来年に迫ったシンの成人と魔法学校への進学について話し合った。


ケン達三兄弟の末っ子のシンには家族で唯一魔法の才能があったため、昔から魔法学校へ通わせようと家族全員が考えていて、ケンも少ない稼ぎの中からシンの学費をコツコツ貯金していた。


勿論ケンの両親も学費用にとお金を貯めていたのだが到底足りないのは明白だ。

結局足りない分は借金するしかないと決断せざるを得なかった。


ケンがギイの元で修行を開始してから貯めて来た資金は、実を言えばケンの首都までの護衛代とほぼ同額であった。よって想定していた金額は変わらない。


シンの首都までの護衛代&基本的な生活用品や学校で使う備品一式を買えばそれだけでお金は尽きてしまう。


辺境の田舎の宿屋の稼ぎではこれが精一杯だ。

中にはこれすら無い学生も居るのだから贅沢は言えない。

シンはそのことをよく分かっていた。


「それについて師匠から手紙を預かっています」


そうヘイが切り出して取り出した手紙には以下の内容が書いてあった。


曰く、

・ギイはかつて宿屋に泊まった際に聞いたシンの進学の話を覚えており、

 ケンにも確認を取っていたこと。

・もしよければシンが学校に通う間はギイ商会で面倒を見ても良いこと

・その際現在一人部屋に住んでいるケンに二人部屋に移って貰い、

 一緒に住むことになること

・魔法学校での勉強に必要な物の幾つかの流通にはギイ商会も噛んでいるため、

 格安で販売が出来ること

・時期が来ればギイ商会の人間が迎えにも行くこと

・学費に関してもギイ商会が無利息でお貸しできること


等が記されてあった。


「それーはありがたい話だけんど、良いのかい本当に」


「ええ。師匠としても弟子の弟ですから知らない間柄って訳でもないですし、何よりギイ商会としても「魔法使い」と繋がりが出来るのがありがたいと考えてるみたいです」


その言葉に慌てたのは他ならぬシンであった。


「でっでも、僕まだどんな魔法を使えるかも分からないのに・・・」


「どんな能力でも使い様だろ?最悪全く使えない能力だったり、途中で事故か何かで死んじまったりした所で、発生した損害はケンが稼げば良いだけだしな。

今はまだ修行中だけど、国を跨いだ行商を始めれば稼ぎは跳ね上がるからな。

数年もあれば返せる額だぜ」


シンには魔法の才能があるのは分かっていた。

何故なら魔力を発生させることが出来たからだ。

しかし実際にどのような魔法が使えるかは学校で学んだ後でないと分からない。

特にここは田舎の村だ、他に魔法を使える者などいないため完全に宝の持ち腐れ状態だったのだ。


そしてギイとしては6年前に出会ったシン少年の事もよく覚えていた。

この時代才能のある魔法使いは独立するか国の機関で働くか、もしくは高名な冒険者となり巨万の富を得ている。


またそこまで行かなくても魔法が使えるだけで一生食うには困らないとされていた。よって未だ何処にも唾を付けられていない魔法使いは貴重であり、一商会として是非とも恩を売っておきたかったのだ。


それにシンの進学の頃にはケンの修行も終わっている予定だ。

ならばヘイが言ったようにそれなりの稼ぎを出すことも出来るようになっている筈なのだ。


よってシンの学費を出すことについてはギイ商会としては損も無い、寧ろ得の方が多い話であったため、会計のモウもOKを出したのである。


「ちゅーかそれ言うんやな。ワザワザ言わんでも黙って援助すりゃえぇのに」


「馬鹿俺らは行商人だぞ。

英雄譚に出てくるお人好しの勇者様じゃねぇんだからしっかりとお互いのメリットを提示した方が結果的に上手く行くんだよ。

商人が何も言わずに金を出してきたらそれは絶対裏があるんだ。覚えておけよ」


ホドのツッコミにヘイが答える。ギイは1人の商人としてシンという魔法使い見習いの将来に投資することを決断したのだ。そこに恥ずべき物がなければ正々堂々と説得した方が後々ドラブルが起こらなくて済むのである。


「たーしかにキチンと説明してくれて納得が行ったよ。シンどうする?おーれはこの話乗るべきだと思うけど」


「そうだね・・・えっとヘイさん前向きに検討させて下さい。返事はノースエンドから帰って来た時で良いでしょうか?」


「ああ良いぜ、ご両親ともキチンと相談して決めな」


そんな訳でシンの進学話をしている内に夜は更け、次の日の朝にケン達は村を出発したのだった。

来た時と較べて出て行く時の見送りは少ない。

何故ならすぐに帰って来ると皆分かっているからである。

でも家族は見送りに来た。

ノースエンドから帰ってきた時はまた暖かく迎えてくれるだろう。



そして旅を続ける一行の話題はシン少年についてだった。

実際村を出発してから大抵はこの話をしていた。


「でも意外ですね、ケンさんの弟さんに魔法の才能があるとは。てっきり魔法使いの血統でないと発現しないと思っていましたよ」


「そうでもないさ。それを言ったらそいつらの初代はどうだったんだって話になるしな。魔法使いの一族出身でなくとも魔法の才能がある奴ってのは結構居るもんだぜ」


「俺も最初は驚きましたよ。「お兄ちゃん何か出てる~」って魔力出してるんですもん。大人が魔力の事を知っていて、村中大騒ぎになりましたからね」


「そう言えばホドは魔法は使えないの?クオーターとは言えエルフの血が入ってるんでしょ?」


「ワイが使えるのは風を使った周囲の気配察知の魔法やね。今も使ってるで」


「えっ?そうなの、全く気づかなかった。あっでもホドは良くモンスターを見つけてたよね、あれってそういう理由があったんだ」


「地味な魔法やさかいな。ワイは魔法よりも弓の方が得意やねん」


そんな話をしながら馬車は進んでいく。

この辺りは小高い山々が数多く点在しておりその間を縫うように坂道が続いていた。そして景色の良い場所で昼食を取り、夕方近くになった時に道の先に今日の目的地であるセンターの村が見えてきた。


この村はマール国内において山あいに存在する唯一の村である。

この山々は丁度国の真ん中に国を横断する形で存在していた。

ここの手前の村とこの次の村の回りにはそれぞれ草原が広がっているが、ここだけは周囲には山しかない。

ノースの町からこの村に行く為には長い坂を登らねばならず、この村の先に行く為には更に急なつづら折りの坂を下らなければならないのだ。


ちなみにイーストエンドやウエストエンドへ続く道は平地であり、この山々が途切れている場所に存在した。要するにこの村はこの国の中でも非常に珍しい場所に存在していたのである。


だからケン達はこの村を訪れることを楽しみにしていた。何しろマール国内で唯一山岳風景を楽しめる場所だからだ。住んでいる村人達からすれば、広い畑も草原も無く、移動も大変な場所でしかないのだが。


到着時間が遅いので行商も観光も明日にしようと、一行はまず宿屋へと向かいチェックインをしてから部屋で寛いでいた。


しかし暫くすると村の中が騒がしくなった。

何だと思って外を見ると北の方から大量の人間が村へと押し寄せて来ていた。


見た瞬間盗賊団かとも考えたが、良く見れば馬車の上には老人や子供、赤ん坊まで乗っている。彼らはどうやらここより北に住んでいる村人達だというのが分かった。しかし何やら良くない事が起きたらしい。彼らはどう考えても旅をするための準備をしていない。明らかに着の身着のままの姿だ。


ケン達は即座に身支度を整えて村の入口へと向かった。取り敢えず情報を得ようと考えたからだ。そしてそこで衝撃の事実を告げられる事になった。


北の大森林でモンスターが大量発生。

そのモンスター達は北の村々を飲み込みながら現在この村へと迫っていると。

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