第47話 ケンの帰郷
ヘイとソレナがノースの町で家族に捕まったお陰で予定外の日数を使ってしまったが、ケン達は無事に次の宿泊地であるノースファースト村に到着した。
そこはケンの故郷である。
ケンにとっては1年4ヶ月振りの帰郷であり、
ヘイにとっては6年振りの来訪になる。
他の3人にとっては初めてだ。今迄巡ってきた村と大した違いはない。
しかし、ケンの故郷だと考えると何か違うように感じてしまうのだった。
村が見え始めた頃からケンはそわそわしだし、村の入口が見え始めると手を降り出した。それに気付いた見張りが村の方を向いて何かを叫ぶと村人達がゾロゾロと入り口に集まって来た。ケンはもう千切れるのでは無いかというくらいに手を降り続けている。
そして村の入口に到着すると、村人達は村の柵を出てケン達の馬車を取り囲んだ。
ソレナやホドは最初は警戒したが、すぐに必要ないと戦闘態勢を収めた。
村人達は皆笑顔でケンを出迎えただけだったのだから。
「おかえりケン!」
「おかえりなさいケン君!」
「おーかえりケン」
「ケン兄さんおかえりなさい!」
「みんな・・・ただいま!」
村人総掛かりかと思うほどの人数でお出迎えである。ケンは涙を流して喜んでいる。
抱き合っているのは話に聞いた兄弟だろうか?
揉みくちゃにされ、頭をグリグリとやられ、それでもケンは嬉しそうだ。
町に修行に出ていた村の宿屋の次男坊が久し振りに帰郷したのだ、これが正しい反応だろう。この世界何処かに行くのも帰ってくるのも大変なのだから。
「良い村ですね・・・ケンも皆さんも本当に嬉しそうです」
「これが正しい帰郷やろうなぁ。町に入るのを嫌がったり、事ある毎に怒られまくったりしとらん、実に正しい帰郷や」
「悪かったな」
「もう勘弁してくれないか・・・」
ノースの町での経験が余程堪えたのか、ヘイとソレナのダメージがデカイ。
そしてハナとホドはようやく見ることが出来た美しい帰郷の風景に感無量だ。
前が余りに特殊な事情だったとも言えるのだが。
ちなみにケンはソレナと同じく実家にこまめに手紙を送っていた。
ギイ商会での修行の日々や、世話になっているアニキや同僚の女の子の事、
更に行商で回ったこの国の村や景色について書いたそれらの手紙は
村人達全員が知っていた。
この世界プライベート等といった感覚はないし、村は家族みたいなものなのだ。
送られた手紙は全員に共有されていたので、
今日当たり帰ってくる事は分かったいたのだ。
ケンはノースの町の状況で到着日時がズレることも連絡してあった。
ギイ師匠の入れ知恵であったが。
そして手荒い歓迎が終わると、いつもの様に村に入るためのチェックを受けたが、ここでも「本当に行商人になってる!」と騒がれ、実家の宿屋へ向かう途中も村人から様々な声掛けがあった。そしてケンの実家では両親がケンの帰りを待っていたのだった。
「おかーえりケン。元気そうで何よりだ。ヘイー君も久し振りだね、だいぶ貫禄が着いたみたいだね。他ーの皆さんも初めまして、ケンの父です。ケンからの手紙で書かれているので知っていますが会うのは初めてですね。うちーの息子がいつもお世話になっております」
一行は宿屋の中でケンの父親から丁寧な挨拶を受けた。
ちなみに母親も居るがケンを見た途端に抱きついて一言も話さずにそのままだ。
よく見ると薄っすらと涙ぐんでいる。久し振りに帰って来た次男に感無量らしい。
ケンも兄弟もそんな母親を初めて見たので声も上げられずに驚いていた。
結局到着が遅かった為にそのまま泊まることになり、行商自体は明日やることになった。そして明後日には出発だ。だから村には2泊しかしない予定である。
「いやもっと居ても良いんだぞ。久しぶりの帰郷なんだし」
「いやでも結局また帰ってくるじゃないですか。他の町の時と同じく、
ノースエンドまで行って帰って来た時にまたゆっくりしますよ。」
そんな会話を夕食後の食堂でしていた。
いつぞやギイ達が来た時と同じように行商人達と宿屋の家族が一緒に話をしている。
しかしあの時と違い、行商人見習いは2人おり、既に1年以上修行を積んでいた。
そしてその内の1人は家族の一員だったりする。面白いものである。
なおあの後復活した母親はそのまま厨房に突撃し、大量の食事をテーブルの上に並べ始めた。それは素朴な田舎料理ではあったが十分に量も愛情も込められたケンの好物ばかりだった。
そして皆で食事をした後に調子に乗ってお酒も振る舞われ、いつもと違い派手に飲んでしまった母親は今女性陣に絡みまくっていた。
「それでねそれでね、ケンはこの宿でギイさんに弟子にして下さいーって申し込んだの。その時にねゴブリンの集団に村が襲われてね、でもギイさん達がズババって退治してくれたの。ヘイ君は震えてたの。正直頼りなかったわ。でもねでもね、ノースエンドまで行って帰ってきたらもうその時はそれっぽくなっていたの。一皮剥けるって言うの?勿論成人してるんだから剥けてるのでしょうけどね、帰ってきた時はギイさんともう一度お話して信用出来る方だと思ったの。それでね、15歳になって、成人したから村から送り出したの送り出したの。辛かったのよ。でもね息子はいつか家を出ていくものなの。カクは家に残ったけどね。長男だからね。ケンとシンは出て行くの、次男と三男だからね。私は母親だからそれを見送らなきゃならないの。息子は応援しなきゃならないの。あなた達にもいつかきっと分かる日が来るわ。女の子だからね、美人だからね、ところでケンとはどうなの?ギイさんと一緒に来た女性と男性は夫婦だったわ。行商人の夫婦というのは珍しい訳ではないの、勿論行商人と護衛も有りよ。全然有りよ。でも3人はどうなのかしら?貴族様や王族の方達は複数の女性を娶るらしいけど、私達平民は余程裕福でないと何人もの妻は養えないのよ。でも皆良い子だから問題無いのかしら、お母さんって呼んでも良いのよ?」
「良くないよ!何言ってんの母さん!ほら水飲んで、暫く休んでなよ。飲み過ぎだよ」
「何や想像していたよりもおっかさんがパワフルやねぇ」
「ごめんなさい。いつもはあそこまで暴走はしないんですが、ケン兄さんが帰ってきて嬉しさのタガが外れちゃったみたいで」
「・・・お母さんか」
「ハナさん?あの今何と?」
「えっ?いや何でもない、何でもないから!」
「あーれ?脈ある?ケンって意外とやるのか?」
「どうなんだろうな、正直厳しい・・・って訳でもないのか?でもハナの実家はなぁ・・・うーむいまいち良く分からんな」
「やはーり家族が揃うと楽しいなぁ」
そんなこんなで、ケンの実家の夜は楽しく更けていったのだった。




