第42話 森の中の泉へ
すいません。42話に間違って43話のタイトルを入れてしまいました。
今回が正しいタイトルです。宜しくお願いします。 2017/02/11
翌朝、ケン達は凄まじい頭痛に悩まされながらゾンビの如く起き出した。
説明の必要もないくらいに二日酔いである。あの後結局夜半過ぎまで飲み明かしてしまい、店の店主に打ち止めを食らってしまった。
曰く「これ以上飲まれると、店の在庫がヤバイ」のだそうだ。ちなみにケン達が持ってきた酒はこの店に買われたので、自分で持ってきて売りさばいた酒を自分で飲みきってしまったことになる。顔を洗いながらそのことに気づき、ケン達は反省した。
そうして昨夜は飲み屋であった宿の食堂でいつもより遅い朝食を取っていると、同じくゾンビのようなホドが食堂へ入って来た。髪はボサボサで服は着崩れて、慎ましやかな胸はさらけ出されており・・・
「ってホドさん見えてる見えてる!」
「隠して!隠しなさい!ほら男共は向こうを向く!」
「というか女だったのかよ・・・」
「そう言えば昨夜の時点ではどちらか聞いていませんでしたねぇ」
ハナとソレナはホドに向かって突撃して衣服を整えてから攫うようにして奥へと向かって行った。これから二人がかりでホドの手入れをするのだろう。
ヘイとケンは後ろを向きながら会話を続けた。2人共ハナとソレナの2人と1年以上共に過ごしているためラッキースケベが起きても慌てることはない。1年以上も若い男女が共に寝起きしていれば何かしらイベントが起きるものなのである。
だから2人はこの1年でこういう場面では下手に慌てると何故か被害に合うという事を学んだのだ。ホドの胸を見た瞬間グッと拳を握りはしたが。
ちなみにギイと旦那はホドが女性だと気づいていた。後で何故分かったのかと聞いた所、ギイは「長年の勘」旦那は「骨格」と説明した。まるで説明になっていない。骨格なんて分かるか。
暫くすると身支度を整えたホドが食堂にやって来た。大きなあくびをしている所を居るとまだ眠そうだ。
「ふあ~おはようさん。皆さん早起きやねぇ」
「おはようございますホドさん」
「おうおはよう!つーかこれでもいつもよりかなり遅いんだがな」
「流石は行商人やねぇ。ワイもこれから早起きの癖を付けんといかんな」
ホドは腹をボリボリと掻きながら椅子にドカッと座り、テーブルの上のパンをモリモリ喰っていく。まんまおっさんである。これで女性と気づけとは無理があるだろう。
一緒にやって来たハナとソレナはぐったりとしている。おそらく女性としての大切な何かを破壊されたのだろう。男達はそれについては一切触れない。男と女の間には踏み込んではならない線というものが存在するのだ。
「そんで今日はどうする予定なんや?」
「今日明日は村の周辺を散策して、明後日の早朝に出発の予定だ。ホドは村にいる間はケンとハナの護衛を頼む」
「村の周辺って森しかないで?」
「こいつらにゃそれが珍しいのさ。ここは国の中でも最奥の一つだからな。これだけ深い森に入るのも森の中の村に来るのも初めてなんだよ」
ホドは狩りで森には頻繁に入るが、普通の人達は基本森には入らない。森の中は視界が悪く野生動物やモンスターも多いため狩人や冒険者でなければ入る必要はないのだ。
ケン、ハナ、ソレナは以前冒険者としての依頼や逆茂木作りのために森に入っていたが、行商人として働き始めてからは森には入らなくなった。ましてやここのような深い森には入ったことがない。実は密かに楽しみにしていたのである。
「つってもワイ、クオーターエルフやから森の中でも普通に迷うで?」
「いや流石に道もない所を分け入って進む必要はねぇんだよ。ここでも普段の仕事で使っている道が幾つかあるからそこを歩くだけで十分さ」
「アニキ、俺山の方へ向かっていた道の先に行ってみたいです」
「いいんじゃねぇか?確かこの先には綺麗な泉があった筈だぜ」
「なら食事が終わったらそこに行きましょうか。ソレナ、ホドさん宜しくお願いしますね」
「分かりましたハナさん」
「ワイも了解や。ちゅ~かタメやろ?さん付はいらんねん、「ホド」って呼び捨てにしてや」
「分かりましたホド・・・あの「ため」って何ですか?」
「同い年って意味や、宜しくなハナ!」
「はい!宜しくホド!」
ハナとホドは意気投合したのか2人で盛り上がっている。それをみてソレナは少し寂しい気持ちになった。自分も大分打ち解けてきたという自覚があるがハナのことはどうしても「王女殿下」として見てしまう。
「王族」について知識のないケンやそもそも王族という事をしらないホドはすんなりとハナを呼び捨てにし、距離を詰めているが自分はそうはいかない。少ししんみりとしてしまったが、護衛として頑張ろうと心を入れ替えてソレナは朝食の残りを食べ始めた。
そして朝食後にケン達は村の奥の道を進んで行った。ちなみにギイと旦那は同行していない。歳のせいで酒が抜けきらないため宿で休んでいることにしたのだ。この周辺には特に強いモンスターも居ないため大丈夫だろうと判断された。
そして一行は今森の中に作られた道を進んでいた。先頭には森に詳しいホドが立ち、後ろをケンとハナが歩いている。ヘイとソレナは最後尾だ。ヘイは行商人だが実力的にはソレナ以上なので護衛されるのではなくする方に回っていた。
なおモンスターの出現に備えて全員武装済みだ。ホドは持っていた弓矢を、ソレナは剣を持ち、行商人3人は全員槍持ちだ。いくら軽い散策のつもりでも村の外の森に武装なしでは入らないのだ。
「しかし本当に深い森ですねぇ。泉ってのはどのくらい先にあるんですか?」
「歩いて一時間位だったかな?悪ぃもう4年も前の話だから正確には覚えてねぇや」
「ヘイは何でこの村に来たんや?」
「俺もこいつらと同じで新米だった時に修行でここまで来たんだよ。それからはご無沙汰だったけどな」
「成る程なぁ、ん?ちょい待ち」
言ってホドは森の中に入っていった。しかししゃがんで何かをしたかと思うとすぐに戻ってきた。どうやら何か草を採取してきたらしい。よく見ると薄っすらと青みがかっている。
「ほいこれやるで」
「何ですかこれは?」
「甘露草ゆーてな、噛むと甘い蜜が出てくるんよ。魔法薬の材料にもなったりするらしいけど知識がないからよう分からん」
「おいおい結構なお値段がする草じゃねぇかよ」
ヘイが驚いている間にケン達はホドに渡された草にパクっと噛み付いた。
「あっ本当だ甘い」
「いや喰うなよ!仮にも行商人なんだから売って金に替える事を考えろ!」
「ケチ臭いなぁこんなん森の中には仰山生えとるで。商売人が自分が扱っとるもんについて知らんのは不味いんとちゃうか?」
「んぐっ・・・分かった俺にもくれ。・・・本当だ甘い」
一行はモグモグと草を食べながら歩いて行く。ここにギイや旦那が居れば甘露草はそのまま食べても魔力が回復するというウンチクが聞けたのだろうが、今のメンバーは誰もそのことを知らなかった。
尤もその前に、会ってまだ1日も経っていない人物から勧められた野草を食べるなと怒られただろうが。
そのまま暫く進むと森の先に開けた場所があり、どうやらそこが目的地である泉のある場所のようだ。しかし一行はその手前で足を止めた。聞き覚えのある声が聞こえてきたのである。
「ギャギャギャ」
「ゲガヤヤギャギャ」
「ギャハーハ」
目的地である泉にはゴブリンの集団が居たのである。




