第39話 最奥の村へ
明けて翌日、予定通りに仕入れをし幌付きになった馬車を受け取る。流石は行商人ギルド直営の仕事だ。どこからどう見ても立派な幌馬車が完成していた。
幌の色は真新しい白色、荷物を多く積める様に幌の高さを高めに設定したので内部はかなり広く感じる。サイドには座席も用意されており、荷台の上で長時間座っていても疲れない仕様になっていた。
また、両側中央には小窓もついており、布を上げ下げするだけで窓の開閉が出来る様になっている。これは幌の中に居ながらでも、外の様子を見る事が出来る仕掛けだ。幌があるとどうしても視界が遮られてしまう為である。
早速ケン達は仕入れた商品を積み込んでいった。なお商品は頑丈な木箱に品物毎に入れられており、中には揺れで品物が傷つかないように藁が敷き詰められていた。クッションの代わりである。それを荷台の留め具にベルトで固定していく。こうすれば悪路でも荷物が壊れにくく、外に飛び出すことも無いのだ。
サウスの町及びウエストの町で購入した品物を全て馬車に積み込んだ。しかし予想以上にスペースが余っていたので更に仕入れを増やした。余った所で次の行商時にまた売れば良いのだ。遠く離れた場所へ向かう場合は、持って行く品物の数が多ければ多い程利益の幅が上がるものである。
その後食事をしてから町を出た。これから暫くは携帯食の生活が多くなるため、宿の食堂でおすすめのランチを食べてから出発したのだった。
なおノウとホッコの2人は宿に見送りに来てくれた。昼休みに乗じて訪れたらしい。
「姉上、道中お気をつけて。皆様、姉を宜しくお願い致します」
「ありがとうノウ。あなたもお仕事頑張ってね」
「ケン昨夜は済まなかったな。改めて謝罪しよう」
「こちらこそすいませんでした。以後気をつけます」
ノウは昨日「普通王子」と言われて激高し襲いかかった事をケンに謝罪した。そしてケンは言ってしまったことを謝罪した。昨夜2人が帰ってからハナに「弟は名前にコンプレックスがある」と聞かされてから悪い事をしてしまったと後悔していたのだ。
「姉貴元気でな、帰ってきたら連絡くれよ。連絡先は知ってるだろ?」
「無論だ。土産話を期待しているが良い」
「話だけで土産は無いんだね」
一方ソレナとホッコの2人も別れを惜しんでいた。ちなみにソレナは土産を買ってくるつもりは無いらしい。まぁ行き先はこの国の最奥なのだ。土産らしい土産があるかどうかも分からないのだが。
かくして一行は二人の兵士に見送られてウエストの町を出発した。ちなみにノウ達は宿には行商人をしている家族に会いに来たと言ってあった。国の方針によりノウはあくまで一兵士として扱われていたので王子様が来ていたことも、そもそもこの町に王子様が居ることも宿の従業員は誰1人気づかなかったのだった。
そしてケン達は行商をしながら旅を続けて行った。ウエストの町の先には首都周辺と同じく村々が存在している。しかしあちらが町の周辺に在ったのに対し、こちらは道沿いにポツポツとある程度だ。首都周辺は密集だがこちらは点在といった所か。村と村の距離も奥へ向かえば向かう程長くなっていく。しかしこのような田舎にも住んでいる者達は居るのである。
「ねぇケン、ケンのご家族もノースの町の先の村に住んでいるんでしょう?何故そんな場所に住んでいたの?」
「そんな場所って、あのね町の先って言っても俺の故郷は衛星都市の周辺の村って位置づけだったんだよ。かなり昔のご先祖様が村で宿屋を開いたのが始まりだって聞いてるけどね」
ハナの疑問にケンが答えていく。それにギイが補足を始めた。
「おそらくケンの祖先は衛星都市から先の開拓の村への人手を見込んで宿屋を開いたのだろうな。これから先の村と同じくケンの村も道沿いに在る為、国の最奥に向かう為には必ずその村を通る事になる。よって一定の需要は見込めるのだ。決して悪い商売では無い筈だ」
「そうですね、父さんも「贅沢は出来ないけど食えなくなる訳じゃ無い」って言ってましたから。確かに衛星都市や首都程ではありませんけど、それなりに宿泊客はいましたしね」
ギイ曰く、この国はまず首都が作られ、その後3つの衛星都市が作られた。そして更なる発展の為に衛星都市の更に奥を開拓しようと計画していたが、結局それ以上の人口増加に繋がらずにそのまま最奥の山の麓まで開拓村が続いてしまったとの事だ。
「だからもしこの先この国が発展していくことがあれば、この先の村の何処かが新たな衛星都市になることになるのだろうな。その為には大幅な人口増加が必要ではあるが」
そんな話をしながらも馬車は進み、日が暮れる前には野営場所を定めて野営の準備を始める。
見通しの良い場所で、馬を適当な木に繋ぎ、周囲に逆茂木を展開し擬似的な陣地を形成。その中で炊事用のカマドを準備したり、宿泊用のテントを貼っていく。
馬車の有る無しの違いはあるが既に一年繰り返して来た事だ、最早流れ作業で行うことが出来る様になっていた。
夕食は町で買っておいたものを温めて食べ、見張り2名を置いて残りは休む。ちなみに6人居るので三交代制だ。衛星都市の北側はモンスターの数も増える為、見張りは重要な仕事である。最も王女殿下が居る時点で、誰1人として見張りを疎かにしたことは無いのだが。
そうして夜が明けたら朝食を食べ出発。道沿いに進み、昼過ぎには村に到着し宿を取る。この村がノースの町から先にあったケンの村と同じ扱いの場所にある村だったりする。
到着後広場で行商をした後宿屋で食事を取り就寝。その際ヘイの最初の行商の話になり大いに盛り上がった。しかし今回はモンスターの襲来は無かったようだ。まぁそんな偶然が頻発しては堪らないのだが。
夜が明ければ再び道沿いに進んでいく。途中何度かモンスターに襲われるも旦那とソレナが対応し、偶にケンやハナも戦い全て撃退。危なげない旅路となった。
そしてウエストの町を出発して丁度2週間後、一行はウエストの町から道沿いに進んだ先にあるマール国内最奥の村の1つ、ウエストエンドに到着したのだった。




