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堅実勇者  作者: 髭付きだるま
第2章 行商人見習い
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第25話 本格的な逆茂木作り

カーンカーン

ギーコギーコ


森の中に何やら作業をしている音がする。しかも中々終わらない。どうやら相当数の木を伐採し、ノコギリで長さを揃えているようだ。材木として使用するのだろうか?いや違う、もちろんこれは逆茂木を作る音なのである。



「師匠~一体どれだけ逆茂木作るんですか~?」


「もう5つ目ですよ。流石にこれ以上は・・・」


森にケンとハナの悲鳴が響き渡る。


工具を買い揃えて森の前の岩場に到着してからというもの、


休みなく木を切り倒し、

長さを揃えて、

先を尖らせ、

組み合わせて、

逆茂木を作る


以上の工程を既に5回は行っているのだ、いい加減に疲労困憊である。


「そうだなここいらで一度休憩を入れるか」


「やったー」「ありがとうございます」


ギイの提案で2人はどっと地面に座り込み持ってきた軽食と飲み物をバクバクゴクゴクと腹に入れていく。ここ最近の逆茂木作りのスパルタ授業で途中の補給食の必要性を認識した2人は師匠に許可を貰って町で軽食と飲み物を用意してきていたのだ。


ハナもケンと同じように腹に食事を詰め込んでいく。彼女は兵士に混じって特訓していたので外での食事にも慣れているのだ。つくづく王女様の幻想を打ち砕いていく妹弟子である。


「2人共休みながらで良いから聞け、逆茂木は後2つ作成する。何故か分かるか?」


「後2つで合計7つ・・・そうかアイテムボックスと同じ数ですね」


「えっでも水や食料や貴金属を入れるのでは無いのですか?兄さんの様に」


2人は揃ってヘイの方を見る。彼は呆れた様子で説明をした。


「あのなぁ忘れてんのか?お前らはまだ一度も行商をしたこともないだろう。それなのにいきなり遠出なんてさせる訳ないだろうが。最初はそんな遠くない村の往復だよ。比較的安全だしアイテムボックスに頼らない行商の仕方を教えなきゃならんから暫くはアイテムボックスは全部逆茂木で埋めておけ。」



そう、2人は行商人に弟子入りして一月以上も経ったにも関わらず、未だに行商には出たことがないのである。


だからギイはまずは近くの安全な場所への往復から初めて徐々に行商人としてのキャリアを積ませるつもりであった。


そして何よりも重要な理由としては、


「そもそもお前ら今そんなに現金持ってないだろ。保管する貴金属自体無いじゃねーか。工具屋の後にも言ったけどな、お前らが行商で売る品物はお前らが自分の金で買うんだよ。行商の荷物を入れる背負カバンと武器は商会のお古を譲ってやるがな、多分今のお前らの金じゃ荷物を満杯にすることも出来ねーぞ。」


そう、結局2人は今それほど金が無いのである。ギイ商会で寝泊まりし、食事も付いているとは言え冒険者の町での稼ぎでは行商人の品物代には程遠いのだ。行商人として行商をするためには何を置いても最初の資金が無くては始まらないのである。


「あの兄さん、でも水は重いからアイテムボックスに入れて運ぼうと思っていたのですけど」


「その方法は確かに良いけどな、必ずアイテムボックス以外でも水と食料は持つようにしておけ。アイテムボックスに頼り切りだとイザという時に飲水が無い、なんて事態になることもある。俺は無いけどアイテムボックスに入っていた水瓶を出した際に地面が不安定で水瓶が割れたなんて話もあるからな」


だから本当はアイテムボックスに入れる物は出した時に壊れない物や傷ついても構わない物が望ましいのだ。逆茂木とか。

アイテムボックスは確かに便利だが頼りすぎるのもいけない。

これもまたギイの教えの一つである。


「さて休憩は終わりだ。残り2つの逆茂木を仕上げてその後は戦闘時や緊急時を想定して逆茂木の出し入れの練習に移るぞ」


「いきなりですか?こいつらには早くないですかね」


「この2人はお前の時の反省も踏まえて慎重に育てるつもりなのでな」


「ははっ確かに、俺の時はいきなり馬に乗っての行商でしたからね」



ケンはヘイが大慌てしていたあの日の夜を思い出したが、口には出さずに作業に戻る。

いや戻ろうとした所で、森の奥からこちらに向かって来る人影を発見した。


いやそれは人影ではない。棍棒ですら無いただの木の枝を持ち、腰にはボロ布を巻きつけてボロボロの顔面でこちらを見ているモンスター。それはゴブリンであった。


「ゴブリンです!森の奥に一匹!」


瞬時に全員が臨戦態勢に入った。ギイとヘイは勿論の事、何度かゴブリンと戦ったことのあるハナや、村人として何度もゴブリンと戦う大人達を見てきたケンも臆さずに行動に移れた。


そして全員でゴブリンを見るがどう見てもそれはボロボロだ。見るも無残な状態で今にも死にそうな個体である。それが一匹フラフラとこちらに向かって来ていた。


「えっと師匠どうしましょう?このゴブリン既に死にそうなんですけど」


「冒険者に襲われたのか仲間内で揉め事でも起きたのかは知らんが、死にそうならば殺しておこう」


「そうですねゴブリンは生かしておいても害にしかなりませんし」


ゴブリンに対して容赦のないセリフである。それもその筈、ゴブリンとはこの世界では大変有名な害獣代表なのである。


「よしケン、お前まだモンスターと戦って無かっただろ。今ここでこいつを仕留めろ」


「えっ!?」


突然の初陣のお知らせである。ケンは慌てるがその間にもゴブリンはこちらへと近づいてくる。手負いとは言えモンスターだ、決して油断は出来ない。ケンは用意していた槍を手にゴブリンへと向かって行くのだった。

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