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堅実勇者  作者: 髭付きだるま
第2章 行商人見習い
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第23話 逆茂木作り

マール国は豊かな自然に囲まれた風光明媚な土地柄だ。

こう書くと良さげに聞こえるが何の事はないただの田舎である。

自然に囲まれたというよりも、人口が少ないため自然を開拓する必要がなく、そのまま残ってしまっているという状況なだけだ。


自然が少ない場所では一本の木を切るためにも関係各位に許可を得る必要があったりするが、このマール国ではそんなことはない。むしろ適切な管理をする人材が枯渇しているため、好き勝手伐採しても一向に問題はない。


だからここが一番良いのだ。逆茂木作りをするためには。



「では2人ともこれから逆茂木作りを始める」


鬱蒼とした森の手前にある特徴的な岩の前でギイの宣言にケンとハナは姿勢を正した。ケンは若干おどおどとしていたがそれも暫くすれば落ち着くだろう。


「ではまずは材料の調達だ、2人共森に入って適当な木を持って来なさい」


「あのお師匠様、木を切り倒して逆茂木を作るのではないのですか?」


ハナの言うことも尤もだ。落ちている木では細すぎて逆茂木として成り立たないだろう。

子供の遊びではなく凶悪なモンスター相手に使う物なのだ。余りに細ければ突撃された時にそのままへし折れてしまう。



「まずは細い木を使ってお前たちに最適な逆茂木の形を整える所から始める。一度軽い木を使って作ってみれば必要な高さと幅が分かる。それを参考に徐々に重い逆茂木を作り、お前たちに最適な物を選ぶのだ。ハナは私と、ヘイはケンに付いて行け。ただし手も口も出すな。まずはそれぞれで自由に逆茂木を作ってみるのだ」


言われて2人は森へと入っていく。バックアップが共に来ている安心感からか足取りは軽い。森の中は日差しが遮られてはいるものの完全では無い為、木漏れ日の中を歩いているような気持ちになり心地良い気分だ。


そして材料になりそうな枝は結構な数が落ちている。しかし逆茂木として使うためにはある程度太くて長い木が必要な為、暫く森の中をウロウロして程良い木の枝を集めてから森の外に出た。


そこで2人は気が付いた。どうやら随分と離れた場所に出てしまったらしいと。

そして2人は罰が悪そうに先程森に入った岩の前に戻って来た。


「その顔を見ると気づいた様だな」


岩に戻ると早速ギイが口を開く。その口調は何処か面白がっているようで同時に呆れてもいるようだった。


「あの、僕は材料集めに夢中になって違う場所から出て来てしまいました」


「私もです。と言うよりも森の中で現在地を全く把握していませんでした」


2人は入り口に戻れなかった事を恥じているようだ。しかしギイから見ればとてもそれだけで済む話ではない。


「ヘイ、お前から見てケンはどうだった?」


その質問にヘイは容赦なく答えていく。


・入り口を見失う

・森の中で現在地を把握していない

・足元ばかり見て周囲の確認を怠っていた

・薬草や薬の材料になる草花があったが気づかずに通り過ぎていた

・落ちている木を拾うばかりで、生えている木の枝を切断するという発想がなかった

・木の枝を剪定せずに持ってきている

・枝しか持ってきていない。縛るための「ツタ」を忘れている

・全般的に注意不足。俺抜きで森に入ったら死ぬ



その答えにギイは「こちらも全く同じ状態だった」と返した。弟子2人は項垂れるばかりだ。


「2人共私達が着いて来ているとはいえ、外ではいつ不測の事態が起きるか分からない。もしも森の中でモンスターに出くわして現在地が分からないなんて事になれば最悪野垂れ死にだ。このような道のない地形を通る時には、必ず通ってきたルートが分かるように目印を刻むように心掛けなさい。」


「また足元ばかり見ているのも問題だ。この付近には存在しないが森の中ではモンスターは勿論の事、毒を持った虫や草花も存在している。そういった物に注意を払わないのは致命傷だ。そして逆にこちらに有益な草花も存在している。ついでに取れば小銭稼ぎになるし、万が一の時には薬の知識がお前達や仲間の命を救うだろう」



だから帰ったらそういう本を読んで勉強をし、冒険者ギルドで薬草採取の依頼を受けなさいとギイは語った。とにかく繰り返して覚えるのが一番なのである。


「では今取ってきた物を置いてもう一度だ。2人共枝の数は十分だがツタが無いからな」



そして2人は今度は慎重に森に入り、強めのツタを取って来た。

もちろん入り口は間違えなかった。


「大変結構。では逆茂木を作ってみよう」


2人は四苦八苦して取り敢えず逆茂木を完成させた。枝とツタを使ったので随分と不細工だ。しかも最初は中々自立してくれなかった。倒れないようにつっかえ棒が必要だと気づいてからはどうにかなったが。


「ふむまあ最初はこんなものか、昔のヘイを思い出すな」


「5年も前の話ですよ師匠。で、2人共まだこいつは未完成だ。先を尖らせるのを忘れてるぜ」


あっと2人は思い出してナイフを取り出して先を尖らせる。するとそれなりに逆茂木っぽいものが出現したのだった。


「宜しい。2人共これがお前達が初めて作った逆茂木だ。最初は手こずっただろうが作り続けていくたびに手慣れていくから心配するな。ではもう一度だ。今回を参考にして新たな逆茂木を作り出せ。これから暫くは何日でも日が暮れるまで行うからそのつもりでな」



師匠のスパルタに2人の弟子は悲鳴を上げた。

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