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堅実勇者  作者: 髭付きだるま
第1章 幼少期
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第1話 村の三兄弟

村があった。普通の村だ。いやどこが普通だと言われれば困るが、取り立てて言うこともない村である。


村の中心部には十数件の家があり、その周りには畑が広がる。家畜も飼われており柵の中でのんびりと草を食べている。


その脇には街道が通っているが、往来は余り多くはない。南に向かって馬車でしばらく行けば街があり、その先には首都があるが、北に向かっても山と湖、そして同じような幾つかの村しかない。移動するのは湖へ向かう物好きや行商人、そして依頼を受けた冒険者くらいである。


こんなこの国ではありふれたごく普通の村から物語は始まる。





「「「あははははっ!」」」


3人の少年達が走る、走る、走る!

満面の笑みだ、楽しくて仕方ないのだろう。そこに理由はない。少年時代とは何故か理由もなく楽しいものなのだ。


「カク兄待ってー。シンも早く来いよー」

「兄さん達早いや、もっとゆっくり~」


3兄弟だろうか?真ん中ぐらいの背丈の少年が弟らしき小柄な人影を気遣いながら一番大きい少年を追いかけている。一番大きい少年は先頭を走りながらしかし置き去りにすることもない。そして一番小さい少年はそんな二人に追いつこうと必死だ。



「ほーら二人共頑張れー!見晴らしの丘はもう少しだぞー!」


彼らは村を一望できる小高い丘を目指しているようだ。ちなみに見晴らしの丘と言っているが正式名称ではない。少年達が勝手に名付けただけだ。少年時代とはそういうものだ。


カク兄と呼ばれた少年がまず始めに着いて周囲を確認。そしてしばらく後二人の弟が連れ立って到着した。2番めは弟と共に着くことにしたようだ。



「ぜーぜー!」

「シーン!もう少し体力をつけろよ、いーくら魔法の才能があっても疲れて動けなくなっちゃどうしようもないぞ。」

「しょうがないよ、シンは一番小さいんだから。大きくなったら大丈夫だって!」

「そ~うかな?まぁそうだな。ちゃーんと大きくなれよシン!」



なっはっはっ!と少年は高笑いする。二人の弟もニコニコしている。仲の良い3兄弟のようだ。


彼らはひとしきり笑ったあと村を見ながら腰を下ろした。

そしてキョロキョロと周囲を見回している。正確に言うならおもに南北に通じる街道の先を見ているようだ。



「う~ん、今日は誰も通らないなぁ。」

「いーつものことだろ!前に来た冒険者は3日前だっただろ。」

「そうだけどさ、でも来てくれないとうちの宿が儲からないよ」

「冒険の話も聞けないしね!でも行商の話も良いんだよなぁ」

「ケーンは本当に旅人の話が好きだなぁ。シーンは余り心配するなよ。年に数回は団体さんが泊まってくから赤字になったことがないって父さんも言ってたぞ。」

「父さんも兄さんものんびり過ぎだよ・・・」


なるほど村の宿屋の3兄弟のようだ。「のんびり屋の長男」と「冒険好きの次男」、そして「しっかり者の三男」のようである。バランスが取れている。・・・取れているのか?


そんな感じで盛り上がっていた3人だったが、ふとみると街道の南側から薄く砂煙が上がっているのが見え始めた。3人揃って目を凝らすと、そこには荷物を積んだ馬車が写ったのだった。



「やった!行商人さんだ!」

「兄さん達!急いで帰って準備しないと!」

「そーうだな、今日は忙しくなるな。よし二人共家まで競争だ!」


言ってすぐに長男は丘を駆け下りていく。弟二人もそれに続くが決して置いていったりはしない。村の近くといえど野生動物やモンスターが出ることもある。兄はちゃんと大人に教えられて弟の面倒を見ているのだ。



そして村の柵を飛び越えて三人は自宅でもある村唯一の宿へ向かっていく。もちろん村といえども入り口があり、見張りはいるが基本住民は好きなところから出入りしているのである。



「父さーん、母さーん!行商人さんが来たよー」

「ぜーぜー、馬車だよ。ぜーぜー、それなりの人数だよ!」

「みーなみから来てるよ。荷物が一杯だったよ」



3人は家に到着するなり見てきたことを伝える。どうやら見晴らしの丘は遊び場がてら宿のお客の到着を事前に知るための見張り場でもあったようだ。



「まぁまぁ馬車かい?馬車かい?南からなら街からか首都からだね。荷物がいっぱいならこの先の村にも行くんだね。なら美味しい料理を作って体力つけて貰わないとね!布団も出さないといけないね、あんた達倉庫から布団の予備を出して!食材間に合ったかしら?」

「母ーさん先走り過ぎだ。とりあえず馬車が到着してからで十分間に合うよ」



話を聞いてすぐにお客を迎える準備をしようとする母親を止める父親。確かに来たからといってこの宿に泊まるとは限らない。宿代をケチっったり、食事は自分で用意する者もいるのだ。準備が肩透かしになることもあるのだ。


「まぁまぁ私ったら!私ったら!そうよね、とりあえず待ちの姿勢よね」

「宿ー屋は基本それで良いんだよ。でも3人共よく知らせてくれたな、とりあえず片づけと玄関前の掃除だけやってしまおうか」

「「「はーい!!!」」」


少年達はいつもの様にお客を迎え入れるための手伝いを始める。この世界子供も普通に働いているが、自営業者ならなおさらである。


いつもの風景いつもの家族の団らんである。でもいつもと違ったのは今回来た行商人はとびきりの変わり種だったということであった。

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