第12話 冒険者ギルド2
しばらく待っているとギルド職員が一枚のプレートを持って来た。
それをケンに渡してくる。
「お待たせしました。こちらがケンさんのギルド会員証になります。」
受け取ったギルド証は鈍く光る銅板でありそこにはこう書かれていた。
冒険者ギルド会員証
名前:ケン
出身:マール国 ノースファースト村
特技:槍
経歴:宿屋見習い10年 冒険者0年
実績:無し
冒険者ランク:I
先程書類に記入した内容に加えて実績とランクという項目が追加されている。ケンがそのことについて問うと職員は丁寧に答えてくれた。
「実績はそのまま「冒険者として何をなしたか」になります。今は登録したてですから無しになっておりますが、町中での仕事や城壁外での仕事、モンスターの討伐などで書かれていくことが増えていきます。これを見ることでその冒険者がどのような仕事を得意としているかが分かるのです。」
「ランクは冒険者としての地位を示しています。上からS、A、B、C、D、E、F、G、H、Iの10段階ですが、Iとは「登録だけして何もしていない」方のランクです。成功失敗問わず依頼を一つでも受ければ一つ上のHに上がることが出来ます。それから先は依頼の達成回数や受けた依頼の難易度によって上がったり下がったりします。なおGとHランクの方は町中での依頼しか受けることは出来ません。Fランクに上がって初めて城壁外の仕事を受けられますのでまずはFランクを目指して下さい」
「ちなみに依頼書は入ってすぐ左側に貼ってあります。壁に貼ってあるものは「常時依頼」で衝立に貼ってあるものが「特別依頼」です。常時依頼はその名の通りいつでも受け付けている依頼でして、ドブの清掃、ゴミ拾い、孤児院の手伝い、兵士の訓練相手、一般的なモンスターの討伐などです。また特別依頼は緊急性の高いものが掲示されております。ちなみに特別依頼の方が料金は高めとなっております。受ける際は依頼書を持ってあちらの「冒険者受付」へお並び下さい」
そういって職員は「冒険者受付」の方を指差す。ケンもそちらを見ると様々な格好をした冒険者達がカウンターの順番待ちをしていた。全般的にいかつい人が多く鎧も着ているため何というかあそこだけ「濃い」感じだ。
「最後にこのギルド証は全世界共通です。街に入ったり国境を超える際の身分証明書にもなります。また入場料が免除になったり各種割引が受けられる特典がございます。
なお紛失や破損した場合には再発行手数料がかかりますのでご注意下さい」
その他詳しいことはギルドに備え付けてある冒険者ギルド解説書を読むか職員にお聞き下さいと言われ説明は終了した。
ケンが今受けた説明を咀嚼していた所にヘイが声をかけてきた。
「おう大丈夫か?分かんねー事があれば早めに聞いておけよ」
「はい大丈夫です。・・・だとお思います。取り敢えず何度か依頼を受けるべきでしょうか?」
「そうだな、習うより慣れろって言うしな。師匠が帰ってくるまでは町中の依頼を受けてランクを上げながらここでの生活に慣れてった方が良いだろうな。取り敢えずFまで上げれば町の外の依頼が受けられる様になる。そうなれば行商に行くたびに小遣い稼ぎが出来るようになるぜ」
行商人は町を出て村々を巡ったり、他の町へ行ったり、他所の国へ行ったりする仕事である。ならば行くついでに道中や目的地で商売以外の仕事が取れるならそれに越したことはない。ついで仕事とはいえ「塵も積もれば山となる」のである。
またケンは自分と同じく世界を回ることを目的としているのだから冒険者登録をしておかないと余計な出費が嵩む事になる。入国料や町の入場料も決して安くはないのだから。
「そういえばアニキのランクは何になるんですか?」
「俺は今Eランクだな。この国は平和でモンスターも弱いのしかいないからそもそもランクが上がんねーんだよ。ダンジョンがある国や、危険地帯がある国だとそこのモンスターの討伐難易度も上がるから上のランクも居るらしいけどな。」
「なるほど、そういえば気になったのですけど何で一番上がSなんですかね?Aで良いような気もするのですが」
「SってのはスペシャルのSでな、つまり特別って意味なんだよ。どう考えても人間やめてるとか、積み上げた実績がおかしいとかいう連中に付けられる名誉みたいなもんだな。なろうとしてなれるもんじゃない。つーかAやBだって相当凄いからな。俺らは行商人なんだからあんま高いランクは要らねーんだよ。そもそも行商人的にはここは依頼を受ける場所じゃなくて依頼をする場所だからな」
そういってヘイは「依頼受付」と書かれたカウンターへと向かっていく。こちらは「冒険者受付」と違い普通の格好の人しかいない。今も商人風の人が受付で職員と話し合っていた。
「俺たち行商人は行商に旅立つ前にここで護衛を雇って行くのが一般的だ。あのカウンターで何処に何日の予定で行くからどれくらいの強さの冒険者を何人必要かを伝えればそれにあった冒険者をギルドが選別してくれるって寸法だ。ちなみに依頼料は全額前払い制で冒険者は依頼が完了した後でギルドから金を貰えるって仕組みだ」
「なるほど、あれ?でも5年前に僕の村に来た時は護衛は居ませんでしたよね」
「そりゃあそうだろう。師匠に番頭に兄さんと姉さんが居たんだ。正直過剰戦力だったんだよ。必要なければ護衛も要らないけどな。お前がゴブリンの集団に一人で立ち向かえるなら良いが、そうでないなら必ず雇え。金は無くしても稼げばいいが、命は取り返せないぞ」
「分かりました、肝に銘じます」
頷いたケンを見届けた後ヘイは依頼受付から依頼表が貼ってある壁へと移動した。
「んでこっちが依頼表だ。基本的には冒険者として見るものだが行商人としても重要な情報が書いてあるからこまめにチェックしろよ。何度か見ている内にモンスターの分布状況や町の流行なんかが分かるようになる。町にいる間は出来れば毎日来て見ておけ、やってる内に重要性が理解出来るようになるはずだ」
「分かりました。えっと取り敢えず依頼を受けてみたいのですがどれかおすすめはありますか?」
「まぁ初めてだからな、このどぶ掃除とかゴミ拾いとかで良いと思うぞ。町での暮らしに慣れてきたら店の手伝いとかお使い系に手を出して最終的には可能な限り全種類やっておけ。行商人として色んな経験を積むのは重要だし、何より顔を覚えてもらえる。頼む方だって知らない奴より知ってる奴に仕事を任せたいと思うもんだ」
「うわぁ全種類ですか、アニキもやったんですか?」
「もちろんだ、5年前の初めての行商が終わった後に「外に行くのはまだ早かった、しばらく町の中で訓練だ」って言われてな、その間に並行して町中の依頼をやらされたんだよ。そしたらその時に知り合った何人かが後で依頼主になったり商売相手になってくれたりしてな。馬鹿に出来ねぇと思ったもんさ」
そんな話を聞いたケンは気合を入れて依頼書を見始めた。ギイ商会の近くのゴミ拾いの依頼書を持って列に並ぶケンを見て、師匠が帰ってくるまではこれで退屈しなさそうだとヘイは考えたのだった。




