第11話 冒険者ギルド
冒険者ギルド
町では村と違い様々な職種が存在し、その互助組織としてギルドという組合を組んでいる場合が多い。町の商人なら商人ギルド、行商人なら行商人ギルド、鍛冶師なら鍛冶ギルドと言った具合だ。
冒険者ギルドとはその名の通り冒険者のギルドであり、冒険者達の行動の管理・補助・運営を行っている。冒険者は世界を股にかける者も多く、その業務は多岐に渡るため世界各地に冒険者ギルドは存在している。
マール国の冒険者ギルド。
それがこの国の首都の大通りの中心部に存在した。
ケンはその建物の大きさに圧倒されていた。遠目からでもギイ商会の建物よりも大きいことは分かっていたが、いざ目の前に立つとその大きさがよく実感できる。
見た目はまるで巨大なお屋敷のようだ。しかしよく見ると要所要所に継ぎ接ぎで補完がされており、築年数は相当古いものだと推察できる。と言うよりもここに来るまでに見た町並みと違い明らかに別時代の建築物という雰囲気を醸し出していた。
「驚いたか?冒険者ギルドってのはかなり昔から存在してるらしくてな、おまけに時代によっては砦の役割も持ってたみたいで今でも使える程のかなり頑丈な作りなんだわ」
自分が初めて冒険者ギルドを見た時と同じ反応をしている弟弟子に満足しつつ、ヘイはギルドへと向かっていく。
ポカンとしていたケンは慌てて追いついて建物に入っていこうとするヘイへと呼びかけた。
「凄い建物ですねアニキ!じゃあ今日は早速冒険者ギルドを案内してくれるんですね」
「そりゃあ行商人するならここは欠かせないからな。」
行商人は確かに自らの足で世界を回って商売をするが、町の外には一人では対応出来ない危険がゴマンとあるものだ。ではどうするかというと殆どの行商人が冒険者ギルドに護衛依頼を出して共に旅をするのである。
冒険者によっては護衛をメインに受ける者達もおり、お互い良好な関係を保っているのであった。
「でもまぁ今回はケンの冒険者登録に来たんだけどな」
「えっ僕のですか?」
「そりゃあそうだろ。行商人でも冒険者登録している連中は多いし、ギイ商会は全員冒険者登録しているからな。それにお前もちゃんと鍛えてきたみたいだしな」
そう言ってヘイはニヤリと笑う。先程商会の入り口で再会した時,最初ヘイはケンのことが誰だか分からなかった。それはケンが5年前に較べて明らかに「鍛えてあった」からでもある。
「当ててやろうか?お前は5年前のあの日以来行商人になるために一生懸命に修行してた・・・そうだろ?」
「はい!兄さんやシンと一緒に鍛えてました。」
ケンは素直に返事をして同時に言い当てたことに感動した。一方ヘイが何故分かったのかといえば、この5年間同じように修行してきたからである。あの日の自分の無様さも、師匠たちのカッコ良さも身に染みて理解しているのだ。同じものを見た弟弟子が何をしてきたかなんて手に取るように分かるのである。
そうこうしている内に2人はギルド内に入っていった。扉を抜けると天井が高い、吹き抜けになっていて広々とした室内が目に入った。入って左側には大量の張り紙が貼り付けてある壁と何枚もの垂直に立つ板があり、「依頼一覧」と書かれている看板が掛けられている。
奥はカウンターになっており、何人もの職員が忙しそうに行き来をしていた。「依頼受付」「新規登録」「冒険者受付」「相談窓口」「素材提出場所」などと行った看板が並んでおり、ヘイはそのうちの一つ「新規登録」へと向かっていった。
「こんにちは冒険者ギルドへようこそ。おやギイ商会のヘイさんではありませんか。本日はどのようなご用件でしょうか?」
「今日は俺の弟弟子の冒険者登録に来たのさ、宜しく頼むよ」
「宜しくお願いします」
ケンがペコリと頭を下げたのを見てギルド職員は軽い驚きに見舞われた。ギイ商会の会頭のギイには沢山の弟子入り志願者がいるものの未だに目の前のヘイ以外を弟子に取ったという話は聞かない。その彼が「弟弟子」として紹介してきたということはこの少年はギイの2番目の弟子ということになる。軽い興奮に見舞われながらも職務を全うするためにギルド職員は新人登録を開始した。
「そうですかギイ会頭の新しいお弟子さんですね。こちらこそ宜しくお願い致します。ではまずこちらの書類に必要事項を記入して下さい。その後で登録を行い、冒険者ギルドの仕組みについて説明させていただきます」
「分かりました」と言ってから書類に目を落とすと、名前・出身地・特技・経歴といった項目が見て取れた。
「すいません、この特技と経歴について説明をお願いします」
「分かりました。特技はそのままあなたが何を得意にしているのかということです。冒険者の仕事は多岐にわたります。中には特殊技能が必要になってくるものもあり、そういった技能保持者は重宝するのです。もちろん剣が得意ですとか足が速いといったものでも構いません。なお手の内を明かしたくないという方もいますのであくまでも自己申告です。しかし正直に書いていただけると助かります」
「経歴とはそのままどういった人生を歩んできたのかですね。例えばそちらのヘイさんでしたら経歴には商人手伝い10年・行商人歴5年・冒険者歴5年となります。これも経歴を見ることでどのようなことが出来るかを計るためのものです。家業を手伝っていたとか元兵士だったり魔法学校を卒業したりしていなければ何も書かなくて大丈夫ですよ。」
ギルド職員は丁寧に質問に答えていく。そしてケンは礼を言い書類を埋めていった
名前:ケン
出身地:ノースファースト村
特技:槍
経歴:宿屋手伝い10年
そして提出。ヘイは提出された書類を見てウンウンと頷いている。特技欄の槍は自分も含めたギイ商会全員の共通の特技だ。やはり我が弟弟子もあの時の戦闘を見て槍の訓練をしてきたらしい。
ギルド職員も書類を見て満足そうに頷いていた。特技経歴共に必要最低限の事が書かれており、ギイ会頭に弟子入りするだけあってキチンと字も読み書き出来るようだ。そして槍といえばギイ商会の得意分野であるため職員は大いに納得したのだった。
「ではこれより冒険者登録を行います。その後は冒険者ギルドの仕組みについて説明させていただきます」




