第10話 町の案内
ガヤガヤと騒がしい町並みを少年と青年が歩いて行く。
その手には買ったばかりの串焼きが握られており、モグモグと食べながら進んでいた。
「どうだ旨いだろう?」
「はい、美味しいですね。僕屋台で買ったのは初めてです」
「そうか、ちなみにこいつは「買い食い」ってんだ。覚えときな」
ケンとヘイは今町の大通りを適当にぶらついていた。飯を食いがてらと言っていたが、本当に食いながら案内しているようだ。ヘイとしては村人だったケンにまずは街の流儀を教えてやろうという気持ちであったが、見方によっては駄目な先輩に連れ回される後輩に見えなくもない。まぁ周囲には同じように屋台物を食べながら歩き回っている人が沢山居る。問題はないのであろう。
「ところで適当に歩いてるけどどうだ?楽しいか?」
「はい!今までずっと村暮らしでしたから。ここまで来る途中にあった町にも驚きましたけど、ここはもっと凄くて驚きました」
「そりゃ良かった。でもな、ここはこの国の首都だけど他の国にはもっと大きな町があるんだぜ」
「うわー本当ですか?行ってみたいなぁ。ヘイさんは行ったことがあるのですか?」
「何度かな、隣国まで足を伸ばせば結構ゴロゴロしてるもんだぜ。まぁこの町も悪かないけどな」
丁度串焼きを食べ終わったので近くの屋台で汁物を購入し、公園のベンチに座る。改めて見るとやはり村とは違い人も物も馬車も行きかっており街は活気に溢れていた。
「はーやっぱり都会は違いますねぇ」
「そりゃあな、ちなみに村と比較してどんな所が目につく?」
「そうですねぇ、人の多さ、建物の多さ、それに商品の種類の多さでしょうか。でもこうして座ってみると村の建物と較べて建物の高さが違いますね。それと城壁ですかね、村だと柵の外側はいつも見えていたけどここからはサッパリです。」
黙って聞いていたがヘイは中々上出来だと思っていた。行商人になるには周囲の観察眼はどうしても必要になる。こいつは驚いてばかりではなく、それが何に起因するのかちゃんと分析できている。これは教えがいがありそうだと密かに微笑んだ。
「ただ余りキョロキョロすんなよ。新参者だとバレちまうぞ」
「それこの街に着いた時にも言われましたが、バレると何か問題があるんですか?」
「これだけ人がいるとな、必ずしも善人ばっかりとはいかねぇんだ。村だったら他所の目があって出来ないことでも町中なら出来ちまうってこともあるからな。人を疑うことを知らねぇ村人が町の人間に言葉巧みに有り金巻き上げられたなんて話は結構聞くぜ。直接的な暴力で襲ってくる奴らなんかも居るからな、しばらくは教えた道以外は通ったりすんなよ、夜間出歩くのも禁止だ」
「分かりました、他にもあったら色々と教えて下さい」
とっくに食事は終わっており、ヘイはケンに請われるままに街での生活の仕方を教えていく。実際それはケンにとっては初めて聞く話ばかりで新鮮だった。村では旅の話はよく聞いたが、街での生活については余り聞かなかったのだ。街の案内のはずだったのに街での生活の仕方講座になってしまっている。
「まぁ常識的なことをしている限り大丈夫だ。一応商会に帰ったらこの街の詳しい地図を見せてやるよ。今日は俺から離れないこと、いいな」
「了解です、ヘイさん!」
「ヘイさんってのは何か違うな。俺は坊主の兄弟子になる訳だから・・・確か坊主は兄貴のことを「兄さん」って読んでいたよな。よし、俺のことは「アニキ」と呼びな」
「アニキですね、了解ですアニキ!あの僕のことは坊主じゃなくてケンと読んで下さい!」
「わかったぜケン、んじゃそろそろ行くか。連れて行きたい場所があるからな」
そうしてまた2人は大通りを進んで行く。ケンが通って来た外周門を過ぎると徐々に街の雰囲気が変わり始めた。先程までは生活用品や食料品の店が多かったのだが、武具を扱う店や薬を売る店、何の店だか分からない店などが現れ始めた。また通りを歩く人達も一般市民から剣や槍を持った冒険者や兵士が多く見られるようになってきた。
「アニキ、何か通りの雰囲気が変わったように見えますけど?」
「ああ、この街は中心に城や役所やギルドや学校なんかの重要施設があって、その周辺に武器屋・防具屋・道具屋とかの外での活動に必要な店がある。でさっき通り過ぎた外と通じている外周門を過ぎると今度は生活に必要な食料品や生活用品を売る店が並んでんだ。ちなみにギイ商会は東側の端っこ近くにあってな、中心部から西側も同じ作りになってるから分かりやすいぞ」
なるほどこの街に到着前に遠目に街が見えたが確かに中心にお城があって三日月を横にしたような感じで湖に寄り添って街が作られていた。
そうなると今は東側から街の中心部に向かって歩いているわけか。
「何か面白い形ですよね」
「何でも城の北側の湖に沿って町を横に広げていったらしいぞ。だからもし迷ったらとにかく大通りに出ろ。そして東に向かえば確実に商会に辿り着けるからな。」
「分かりました。ところで今は何処へ向かっているんですか?」
「ああそれは・・・」と言いかけてヘイは言葉を止めた。彼らの向かう先に一際目立つ建物が見えてきたからだ。ギイ商会よりも明らかに大きく重厚な作りをしており、出入りする人数も多い。しかもその殆どは冒険者達であり商人や住民はごく少数のようだ。
これを見てケンは父に聞かされたとある施設を思い出した。
「さて着いたぞ。行商人をするなら散々利用することになるだろうからな、よく覚えておけよ」
そう言ってヘイはその建物へと向かう。
「ここがこの国の冒険者ギルドだ」




