いらだち
「やれやれ、油泥棒も楽じゃないね」
ねじ回しが言いました。
「僕はほとんど使われないよ。」
「そんなに暇なら代わってほしいね。」
電動ねじ回しが答えました。
「ぼくは忙しくて忙しくてたまらないよ。」
「君はそうだろうね。僕は買われてから一切使われていないんだよ。」
ねじ回しはあくびをしながら答えました。
「さび付く前に使ってほしいと思っているんだけど。」
「君は自分では動かないし、ご主人様は僕みたいに強い力でねじを締めたいことが多いみたいだしね。でも、いずれその日が来ると思うよ?」
「まあね。だから、油を盗みながら何とかしてるのさ。こんな風にね。」
そういうと、ねじ回しは工具箱をカリカリと引っ掻きました。
「図太いねぇ。あまりにガチャガチャやりすぎて、捨てられないようにほどほどにね。」
電動ねじ回しが、あきれたように言うと、ねじ回しがくつくつと喉を鳴らしました。
「その時はその時さ。僕はその時まで、工具箱にもっときれいな傷でもつけることにするよ。」
電動ねじ回しは、肩をすくめてねじ回しを笑いました。
ねじ回しも、電動ねじ回しをあざ笑いました。