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恋はかげろうの中に  作者: ルイ シノダ
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第二章 あなたは (4)

ジュンは、奈緒から聞かされた一言に自分では、理解できない世界に入ります。しかし、その一方で同期入社の竹宮瞳とシンガポールの出張を気に二人の距離が詰まります。

(4)


奈緒に言われて、渋谷の交差点から少し離れたコーヒーショップに入った。あまり人がいなかった。奈緒に早速お土産を説明すると目を輝かせながら

「ジュン、ありがとう。私からも話があるんだけど」

「うん、なあに」

気のせいだったのかな・・。いつもの奈緒だと思ってそう言うと、急に真剣な顔になり、下を向いた。えっ、何か、気に障ることあったの。それとも僕が出張している間に奈緒に何か・・。 何も言わない奈緒に、自分以外の人が。と思いながら、自分の心も段々重くなって来た時、意を決したように真剣な眼差しで顔を上げて

「ジュン、驚かないで聞いて・・。赤ちゃんがお腹にいるみたい」

えっ。奈緒の言葉に頭が、一瞬真っ白になった。

「二か月前、ジュンに誘われた時」

あの時・・。奈緒の言葉に自分の心の感情が鮮明になった。そして竹宮の後姿が何故か目の前に蘇った。心の片隅ある不自然さを押し殺しながら。確かにいつもなら、奈緒は、自分が安全な日を選んでジュンを誘ってくれたけど。でも、だから・・。気にもしないで自分の思いを思い切り出した、自分を思い出した。いつもの感覚で、あの時もしてしまった事を考えると確かに心当たりが有った。

「ジュン、どうしよう」

頭の中に何も考えがないままに、すがるような目でジュンを見つめた。

 真っ白だった。頭の中を何とか元に戻しつつ、奈緒の言葉を考えた。すぐに出て来たのは、妊娠、結婚、えーっ。自分は、もうすぐ二七、奈緒二四、でも両親には何も話してない。生活できるの・・。理解できないスパイラルに陥りながら困った顔をしていると

「ジュン」

 お願い。いけない事は言わないで・・。言葉の後に、二つの期待と不安が有った。このままジュンと一緒になってもいい。ジュンがそう言ってくれたら。でも私はまだ二四。ジュンはもうすぐ二七。どうしよう。堕胎。したくない。ジュンと私の宝物。お願い・・。

 答えを見出す事なんて出来ない。そんな顔をしながら、すがるような目で目の前に座る人を見つめると、奈緒は自分では望んでいない全く反対の言葉が出た。

「ジュンが嫌なら堕胎してもいいよ」

本当は全く正反対の言葉を言いたかった自分を思いつつ、涙声っぽくなりながら言う奈緒に、

「奈緒、冷静になって話そう。簡単に決められるものじゃない」

ジュン・・。その言葉に少しだけ希望を持つと、うんと頷いた。

奈緒の表情に薄っすらと見える心の揺らぎを感じながら、分からない。どうすれば・・。すぐに答えを出せないままに無言の時間が、流れた。

ジュンは、自分の気持ちを順番に整理する思いで、

「奈緒、二人の事だから二人でよく考えよう。まだ、両方の両親も僕たちが付き合っていること知らない。いきなり話したら、収拾が着かなくなる」

奈緒も全く分からなかった。子供を育てるなんて、まるで遠い宇宙のかなたのことだ。他人の子供を可愛いと言っているレベルではない事ぐらいは、分かっている。

「奈緒、もし、奈緒がいいなら、外に出ないか。少し外の空気を吸おうよ」

 ジュンの言葉に、うんと頷くと、二人で外に出た。道玄坂は人でいっぱいだった。

「ジュン、お腹すいた」

気が付くといつの間にか一二時を過ぎていた。道玄坂から建物の間を横切る様に東急本店通りの方に向かい、本店前のパン屋さん兼用のレストランに入った。

奈緒は、トレイを持つと、さっきまでの話は忘れたかのように、

「何食べようかな」

嬉しそう顔をして、棚に並んでいるパンを見ている。色々な菓子パンが並んでいた。

「奈緒、テーブルでもオーダー出来るよ」

「うん、でも美味しそうだから、ここからも取る」

ジュンは、奈緒の横顔を見ながら、頭の中は、さっきの事が重く圧し掛かっていた。

カウンタで、奈緒は、トレイに取ったパンとオレンジジュースを頼むと、ジュンもボリュームいっぱいのスクラッチビーフハムサンドとコーヒーを注文した。

精算すると、店員から番号の付いた旗を渡された。テーブルでそれを置いておけばオーダーした食べ物を持って来てくれる。

ジュンと奈緒は、少し奥まったところに開いているテーブルに二人で座った。

奈緒は、自分で棚から取った菓子パンをテーブルに置くとジュンの顔を見た。


「ジュン」

その後が続かなかった。すがり付くような目でジュンを見つめた。どうすればいいんだろう。答えがすぐに出ないことは、分かっている。両親にこの事を離せば、返ってくる言葉は想像が付く。

 目の前に、答えを求めるような眼で、自分をじっと見て見ている奈緒がいる。少しずつ動き始めた頭の中で、今は二人とも自宅から通っている。結婚するとなると、二人で独立したところに住まわなくてはいけないだろう。それを考えると、自分に、奈緒と子供を育てるだけの収入がない以上、容易に奈緒に一緒になろうとは、言えなかった。

 どうすれば。という言葉しか浮かばなかった。

「ジュン・・・。私はジュンの言う通りにする。でも・・本当は産みたい。ジュンと私の宝物・・」

下を向きながら小さな声で言うと、テーブルの上に置いてあるレタスとツナの入ったパンを少しだけ口に入れた。

「奈緒・・・。僕の収入だけでは生活が出来ない。奈緒やお腹の子に辛い思いをさせてしまう」

「いい。ジュンと二人だったら我慢する。どうしてもだめだったら、両親に言って一緒に住むことにする」

ジュンは、目を大きく見開くと

「とても出来ないよ。住むんだったらうちの方だよ。だけど・・まだ、親には何も言っていない」

 ジュンの両親は、普段から息子の事には、絶対の信頼を置いている。妹もいる。家でも奈緒と子供を育てる余裕など無い。とても現実的な考えではなかった。

 奈緒は、泣くのを我慢するようなしぐさでパンをがむしゃらに食べていた。ただ下を向いて。

 結局、この日は、一週間ぶりにあったが、夕方には別れた。お互いによく考えようと言うことで。


 答えも何も出ないままに月曜日を迎えるとジュンは、会社で竹宮と会った。

「山之内君、おはよう」

シンガポール以来、ジュンに話しかけることに抵抗のなくなった竹宮は、朝から、声をかけて来た。

「おはよう、竹宮さん」

「山之内君、あそこで言った事覚えている」

少し含みのある笑顔を見せながら言う相手に

「えっ」

と言うと

「忘れたの」

と言って急に小声で、周りに人がいないことを確かめると

「私と付き合うって言ったじゃない。いつデートに誘ってくれるの」

「あっ、じゃあ、今日」

頭が奈緒の事で一杯なのに。なんてことを・・。自分の心の軽さを悔やんで、言い直そうとした時、

「今日。今日か、まあ、いいわ。じゃあどこで会う。会社から一緒と言う訳にはいかないでしょ」

「そうか、じゃあ、銀座線の渋谷方面改札口でどう」

「目立つところね。新橋駅のSLの前はどう」

「分かった」

「じゃあ、六時ね」

えっと思っているうちに、竹宮は、営業部署の方へ行ってしまった。

今日と言ってしまった後、言葉を合すように会う約束をしてしまった。女性として魅力のある竹宮の誘いに、優柔不断な対応した自分の心に呵責を感じながらも、無下に断らなかった自分に迷いを感じていた。


ジュンは、竹宮と新橋駅のSLの前で会った。少しだけ打合せが長引き、一五分ほど約束の時間より遅れた。いるかな。と思いながら急いで行くと、SLの前に本を読みながら立っている素敵な女性を見つけた。竹宮だ。

 周りの男がちらちら見ながら通り過ぎていくのが分かる。近くに寄って、

「竹宮さん、ごめん待った」

申し訳ない顔をしながら言うジュンに、ちらっと自分の左手にしている腕時計を見ながら

「一五分遅れね。でも本読んでいたから」

そう言うと気にも留めていない風にジュンの顔を見た。そして

「どこ行く」

「取りあえず、渋谷に行きましょうか」

「いいよ」

新橋から渋谷までは銀座線で一本。一五分とかからずに行ける。二人は改札を入ると、くるりと右にUターンして先頭車両に乗った。

 帰宅時間になっているため、結構竹宮と体が触れあう。竹宮は、胸を腕でクロスさせながら下を向いていた。やがて隣駅の虎の門で人が降りると、ジュンを誘うように車両の中ほどに移動した。

「混んでるね」

目と鼻の先にいる竹宮を意識的に見ないようにしながら言うと

「そうね。帰りの通勤時間だから仕方ないわ」

それでも多少触れ合う毎にジュンは、なるべく気が付かないように他所を見ていた。

やっと、渋谷の駅に着くと

「ちょっと混んでたね」

今度は意識して竹宮を見ながら言うと、何も言わずに頷く仕草だけを見せた。

「山之内君、知っているところある」

「うーん、分からないけど、道元坂上がっていけば結構あるんじゃないかな」

ジュンの言われたままに歩くと映画館を通り過ぎて、すぐ通り沿いに飲み屋ビル。飲み屋が集まっているビルが有った。もう看板に電気が入っている。看板を見上げながら

「竹宮さん、ここでどう」

「いいわよ」

実際、竹宮は、渋谷の夜に飲み来ることなどあまりない。せいぜい隣町で友人と会う程度だった。判断もつかないままに言われた通りに了解すると、ジュンが先に入って行った。エレベータに入ると五人でいっぱいだ。

降りると、店員が、客が来たのを見て、すぐに

「ご予約ですか」

と聞いたので

「いいえ」

と言うと手元にあるパッドを見て

「お客様、お靴を脱いで頂けますか」

靴を脱いで棚に入れると

「どうぞこちらへ」

と言って二人を奥に案内した。


「山之内君、もう一本行く」

「うん」

「竹宮さん、強いね。いつも飲んでいるの」

「そんな訳、ないじゃん。君と一緒だから頑張っているの」

明らかに酔っている。すでに二人で三合を開けている。でもまた一本追加した。大丈夫かなと思いながら

「ところで、竹宮さん、自宅はどこ」

何気なく聞いたつもりだったが、ジュンの顔をじっと見ると

「あっ、山之内君、私を送っていってくれるの、嬉しいな」

「家は」

「あっそうか、質問はそれだったわね。うちの家は、田園調布というところ。渋谷から近いの」

確かに渋谷から近いが、自分の家からは遠い。

「田園調布か。自宅」

「どういう意味で聞いているの」

「いやあ、特に」

ジュンの顔をじっと見ながら

「まあいいわ。自宅よ。両親と一緒。でも西側のロータリーのある高級地区じゃない。東口からグッと下って、少し入ったところ」

意味の分からないことを言っている口元を見ると、明らかに酔っていた。自分も酔いに任せて、話している口元からつい視線を下に降ろすと、色白な肌が少しピンクになっていた。そのまま見ていると、明らかに大きな胸がせりあがるようにくぼみを作っていた。はっと思って視線を上げると

「エッチ、どこ見ているの。だめよ。まだ」

まだ。どういう意味だ。まったく竹宮の言葉の意味も理解できないままに、次のお銚子を開けるとさすがにジュンも酔って来た。


「竹宮さん、もう十時過ぎたし、そろそろ帰ろうか。送っていくよ」

「いいわよ。さっきのは冗談」

そう言って立ち上がった。少しふら付いていたが、大丈夫だろうと思うと、自分も少し緩んだ足をしっかりとして会計札を持って、入口へ行った。

会計が終わると、ちょうど帰宅時間と重なったのか、エレベータ込んでいた。二回ほど待って、中に入るとちょうど誰もいない。

二人で、エレベータで降りようとした時、竹宮の足がちょっとだけふら付いた。ジュンは、一瞬支えようとして、背中から手を回すと自然と竹宮の胸の脇を支える形になった。

あっと思ったが、横にもゆったりとする柔らかな感触があった。酔いもあり、手のひらの感触を少しそのまましていても竹宮がそのまま動かない。そのまま、少しだけ手を進めると、彼女の手が、自分の手を抑えた。

「だめ、まだ」

ジュンは、どういう意味か分からなかった。自分の足で立ちなおすと急に笑顔になって

「ありがとう、少し酔ったかな」

その時エレベータのドアが開いて、、まだ、これからの客が並んでいた。

二人で渋谷駅に向かっていくと

「山之内君、家まで送って。電車で」

「えっ」

「いやなの。こんなに酔わせたのはあなたでしょ。酔った女の子が帰り道、悪い男に絡まれてもいいの」

えーっ、自分で勝手に注文していたのに・・。そう思っていたところに

「送ってくれるよね」

明らかに酔っている言い回しで、強気で出る竹宮に

「分かりました。送ります」

結局、竹宮を田園調布の駅の改札まで送った。自分は改札を出ていない。

「山之内君、ありがとう。また明日ね」

そう言うと改札をさっと出て行ってしまった。

全く、何なんだ。そう思いながら渋谷に戻って行った。


竹宮瞳は、坂を下りながらどうしたのかな。男の人の前でこんなに酔うなんて。あいつに気を許しているわけではないんだけど。でも・・

自分の心の揺れを理解できないままに、瞳は、駅から三分程にある家の玄関を開けた。


 竹宮と会っていた間、見ることができなかったスマホを見るとやはり入っていた。

<ジュン、連絡ほしい>

前だったら、簡単に電話した奈緒の心の変化に心に刺さるものを感じるとすぐに返信した。

<奈緒、ごめん。仲間と飲んでいて連絡できなかった>

嘘はついていないと思うと送信ボタンをタップした。もう十二時近かった。

 家に着くまで、返信がなかった。いつもならあるのに。と思いながら風呂に入るとそのままベッドに入った。

 ジュンから返信が有った頃、奈緒は、体調が悪くベッドで横になっていた。


翌日、昼間に奈緒からメールが入った。

<今日会いたい。何時に終わるの>

前だったら、何時に会いたいと言ってきたはずなのに、今回の件で明らかに心に変化が有った。

<今日は六時終わる。六時半にハチ公前交番にしよう>

そう入力して送信をタップするとほどなくして

<分かった。待っている>

と返信が有った。奈緒の心境を思うとジュンも少しだけ仕事から頭が離れた。


「奈緒、良く聞いて」

奈緒は頷くと

「奈緒、お腹の事だけど・・生む為には、やはり結婚する必要があると思う。でも奈緒と一緒になる為には、両方の両親にきちんと説明して、準備をしてとなると。はっきり言って生活的にも相当厳しい。それに奈緒と一緒になっても僕自身が奈緒と一緒にいる時間が少ない。今、参画しているプロジェクトはこれからが大変だ。奈緒一人にばかり負担をかけることになる」

ジュンの言葉を聞いた奈緒は、最初の言葉に一瞬だけ期待したが、言葉が進むに連れて、段々心の中が沈んでいくの感じた。

「いい、ジュンがいない時は一人で頑張る」

「無理だよ。まだ、奈緒は、二四だよ。もっと楽しい時間もある。今、・・その子には申し訳ないけど・・これからもいくらでも機会があるし・・それに、冷たい言い方だけど、今なら、奈緒の体に負担をかけずに出来る・・・」

涙が止まらなかった。もっと優しい言葉をかけてくれると思っていた。まさか、一番自分が望まない言葉を聞くなんて

「いや・・」

「ご両親も・・」

まだ、お母さんには話していない。もし言ったら・・そう思うと確かに怖かった。ジュンの言うことが正しいかもしれない。

 何も言わないままに、視線がジュンの目線から段々下っていた。何分経ったのか分からなかった。ジュンも何も言わない。

 奈緒はゆっくりと顔を起こすと

「ジュン、もし、もし、堕胎したとして、その後は。ジュンは、これからも私の側に居てくれるの」

涙に濡れる目で、必死にしがみつくような思いを出しながら言うと

「当たり前だよ。僕はいつも奈緒の側にいるよ」.

言葉に嘘はなかった。ゆっくりと大事に奈緒との関係を育てようした。だが、それはほんの一つの事で大きく流れが変わった。ゆっくりと流れていた川が、急に狭まり、川底も大きな石がごろごろ有るように。

長いような短いような時間が流れた。

「分かった。ジュンの言う通りにする」

 奈緒は、まだ、大きくないお腹を両手でゆっくりと触った。あなたは・・自分のお腹に宿った新しい命を自分の手で。ごめんなさい、本当にごめんなさい・・。自然と涙が出て来た。溢れることが止まらずに、ハンカチで目を抑えるともっと涙が出て来た。声を我慢するのが精いっぱいだった。

 奈緒・・。目の前にいる大切な女性ひとが、声を出せずに泣いている。自分の責任だ・・。ジュンは、その姿に心臓が両手で締め付けられるような気持ちになった。今の奈緒には、何の言葉も意味をなさない。それを知っているからこそ、ただ奈緒を見つめるだけだった。ただ心の中でごめん。と言う思いだけがあった。


それから、一週間後、インターネットで探した両親や親せきに分からない、他の区にある病院に行って処置をした。帰りの車の中で、奈緒は下を向きながら、涙が止まらなかった。

ジュンは、今日の日の為にホテルの一室を予約しておいた。奈緒の体を休ませるためだ。ベッドの上で横になる奈緒に

「側にずっといるから少し寝なさい。体の為に」

奈緒は確かに体に強い違和感が有った。

「ありがとう。ジュン」

そう言うと奈緒は、目を閉じた。医者からもらった痛み止めが効いているのかもしれない。すぐに眠りについた。

その寝顔を見ながらジュンは、自分がしてしまった事、そして自身の今回の責任。更にこれから奈緒が背負うで有ろう責任と、奈緒への自分自身の責任を強く感じていた。

これからどうすれば頭の中は、全く整理出来ないでいた。


 それから二週間が経った。少しずつ奈緒は、元気を取り戻していった。ジュン自身の奈緒に対する責任と思いも感じていたからだろう。

 毎日の様にジュンは、奈緒に連絡し体調を聞いた。奈緒は体調が悪い事を理由に三日間の休みを取った。親には、ただ、体調が優れないとだけ言った。医者を呼ぶと言う親に、絶対にいらないと言って、自分の部屋にこもった。食事とジュンと会う以外は。医者が見たら原因は一発でわかってしまう。ばれるわけにはいかなかった。

親も最初はしつこく言っていたが、二日目からはあきらめたように何も言わなかった。初め体に重さを感じていた奈緒も日が経つにつれ、良くなってきた。

 ジュンも仕事で遅くならない限り、少しでも奈緒の側に居ようと思い、仕事帰りに少しの時間でも、奈緒の体の負担を考えて、経堂の駅で待合わせして有った。そんな効果もあったのか、ジュン自身も少しずつ、二週間前に負った心の負担が軽くなるのを感じていた。



ジュンは、自分が犯した罪と奈緒への責任で一生懸命、奈緒の側に居ようと思いいます。しかし、その心の奥で竹宮との心の接点が多くなって行くのも感じてました。

奈緒の回復と共に張りつめていた緊張が緩む様に竹宮との距離が縮まります。

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