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おもしろき あの世で異端者  作者: 大地 チイダ
現実
8/22

小さな出会い。

 あれ・・・、と俺はまず思った。

 ここはどこだろう?なんか目の前に大きな液体の入った容器の中に、いろんな、機械のような物が入っている。

 床に手をついた俺は、親友の姿を探した。

 色々な書類が乗っかっている机。本棚。なんかの生物の標本。

 その生物は、まるでトマトに牙が生えた怪物のようだ。手も足もなく、閉ざされた瞼は、今にでも開かれそうだ。

 幸運にも、部屋のあかりがついていてくれたので、ひとまず暗闇の中で怯えることはなかった。

 (おいおい・・・こりゃなんだよ!?ていうか、地面に引きずり込まれたのも普通じゃねえ!・・・まず『地球』じゃないな)

 まるで宇宙人にでも誘拐された気分だ。

 俺は情報を集めようと、誰もいないことをいいことに、机の上に錯乱された書類を見つめる。

 そして驚く。

 

 『3月31日 魔物に襲われた犠牲者リストと、3P以降、その対策』


 どっちかというと、俺はこの書類を読めたことに驚いていた。そして全ての書類に目を通したが、全て読み取れた。

 

 『人類安全生活法』について、とか『リアンユ島環境保全対策案、その256』とか。

 いずれも重要な書類のようで、関係者以外閲覧禁止とある。

 しかし、この内容が世間に知られれば、この組織はあっという間に潰れるだろう。二つとも聞こえは良いが、結構残酷な内容だったりしたから。

 さーて。俺はどうしようか。彩都達もいない。いきなり組織の中心みたいな部屋にひとり途方にくれている。

 ドアは二つ。一つ目は俺のすぐ右にあるノズル式のドア。二つ目は、さらに中心区にいくのか、カードキー式のドアロックがされてある部屋だ。

 ということは、必然的に俺はこの右のドアを抜けて脱出するしかない。

 立ち上がり、やはり目に入ったのは、奥のドアを開けるに必要であろうカードキーが二枚机の引き出しにあったことだった。先ほど鍵がかかっていない引き出し以外は全て調べた。その結果、二つの財布を見つけたのだ。

 (やっぱりなんか『コソ泥』っぽいよな・・・)と、色々カードが入った双方の財布を両手で持ち上げながら悪態をついた。その中に、なんかバーコードのようなマークがされている写真付きのカードがあったのだ。

 どうする?つかってみるか?さらに誰も見ていないのをいいことに、奥に突き進んでみるか?

 ・・・やがてバレることだが、侵入経歴がつかないだろうか。そして俺は無断で他人のIDカードを使用したことについて・・・ていうか泥棒みたいなことをして大丈夫か・・!?と不安が体を硬直させる。

 でも、俺は望んでここに来たわけじゃない。自分の家の前で変な光に包まれて、親友と一緒に巻き込まれただけだ。時間感覚からして、まだ45分・・くらい?1時間は経過していないはずだ。

 俺はさらに周りを調べる。

 そして、大きな試験管のような物体の中に丸い何かが入っていた。

トマトのような魔物?(一応その標本の前に『魔物』とあり、名前とその紹介文が書かれているから)が、口裂け女のようば大きな口を広げてこちらを見ているようだった。

 

 名前 パキア。

   つかまえた当時のレベル12

   ATK(攻撃) 178

   DEF(防御) 189

   SMD(特殊防御)120 

   SMA(特殊攻撃)175

   SP(速さ)150

  下に書かれているのは紹介文だろうか?しかも読み取れる!

『さすが大邪鬼サタナキアの子供だ。子供のころはこんな格好をしているが、成長すると巨大な龍になる。イヴィル値の元々低い人間にはけっしてなつかず、今まで人口飼育に成功した例どころか、無傷で捕獲に成功した例なし。毎回ほぼ死体に近い状態で確保される。細胞を利用してクローンを作ろうとしたが失敗。しかし、その硬い鱗の復元には成功した。これで今後の迷宮から溢れ出る魔物と戦うための心強い防具になってくれることを期待する。今後の研究に期待』

 

 どうやら、このトマトは実はとても危険な生物だと読み取れた。

 死体を取得するのはそんなに難しいことではないらしい。子供なら勝てる、そんな感じが伝わってくる。

 (こいつも、研究の為に殺されたのかな・・・。成長すると人間に危害を与えるから?細胞を利用して鱗を取るため?傷つけられ、立派な成体となる前に、こんなホルマリンのプールに浸けられて)

 確かにこいつは人にとっては忌み嫌われる存在、そして研究者たちにとっては好奇心の対象。

 俺はこの世界・・・まだ断定はできないから・・・部屋?ともかく強い理不尽さを感じた。

 カードキーを使わず部屋を出ることに決めた俺は、最後にその液体の入った容器に手を触れた。冷たい、人もいつかこの中に入れられるのか。俺は墓にちゃんと埋めてもらいたい。

 「じゃあな」

 とだけ、最後に残し、俺は部屋をでた。


 しかし、ドアを開けてすぐに人と出会ったのは本気で驚いたね。

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