これが僕らの旅の始まり2
正義とか、正しいことくらいこの世界の常識だ。
でも、人一人一人に、それぞれの正義がある。自分の信念は、これまで受けてきた教育と環境になる。日本が世界を相手に戦争をしていた昭和5年から20年にかけての15年戦争の時、その時に埋め込まれた軍国主義としての、総力戦としての国民への教育に、輸入を断ち切られ、資源に乏しい日本がさらに貧しくなっていった。だから一番近くて資源や広大な土地を持ち、日本よりも国力が小さいと睨んだ軍部が、朝鮮・中国・東南アジアを睨んだわけだ。
俺が言いたいのは、今まで正しいと教えられてきたことに、疑問を持てるのか?ということだ。戦争だって、アメリカの国力の差を考えて戦争を回避する道もあっただろう。いくら軍事国家の指導を受けてきたとしても。逆に近隣諸国で仲良くして、大きな市場を作り、東アジアとして世界と交渉できなかっただろうか。
と、彩都は戦争の特集番組を見るたびにおれと語り合ったんだ。
「皆さん落ち着いて!!なに人の家の前で殴り合ってんですか!?・・・帰ってください!」
「兄ちゃんに手をだすな・・・っ」
綾音ちゃんと、光・・・?
やべ、すごい殺気・・・。光太郎のほうね。
「きき、君は・・・?その火傷の跡は・・・はっ!ごめんね、そんなつもりじゃ・・・」
思ったことはズバズバという、裏表のない秋山さんが言った。
「いえ、気にされるのは最もだと思います。こんな気持ち悪い顔、みたくないわよ・・・ないですよね?」
あらかじめ言っておくが、綾音ちゃんは元々タメ口口調らしい。しかし、あの火傷の傷がコンプレックスとなり、すかりおとなしくなってしまったようだ。
再開して、あの火傷の跡。関係あるのかはわからないけど、丁寧口調になっていた。
「そんなことないよ、ええと・・・綾音ちゃんよね?・・・こんな形じゃなくて、彩都君の家にいって挨拶したかったわ」
これは古高さんじゃない。
「真朱・・・?」
「円城?」
きれいに声が和彦とかさなり、和彦のほうが彩都がどうして真朱さんのことを呼び捨てにしているのか気になったらしい。これは俺も知らない。
「殴って、悪かった・・・」
なんて彩都が和彦に言い出したりして、予想外だったのか、このタイミングで言われるとは思わなかったのか・・・。
「なぜ今それを言う?まあ、間違ってはないんだけどよお・・・」
秋山さんも古高さんもびっくり顔だ。
「もう帰れ・・・」
彩都が軽音グループたちに背を向けたその時・・・、俺は確かに見た。
彼らの足元が白く、光りだした!?なんだありゃ。
「ちょっと、なにこれ!!」
「なに?吸い込まれる・・・!」
「お、おい待て彩都!助けてくれ・・・」
そう言って手を伸ばす和彦。おかしなこともあるもので・・・下半身が地面に埋まっていた??いや、なんか白いおおきなマンホールみたいなものに、4人とも吸い込まれていくのか!?
彩都はスッと手を出し、和彦の右手をもつ。それを見て俺も慌てて真朱さんの両手をもつ。綾音ちゃんは古高さんを支える。光太郎はだまって俺らを見てるだけだった。助けを求めている秋山さんを、まるで危険生物を見ているかのような視線を、向けているだけ・・・。
そのため、秋山さんは一人はやく、スポッと抜け落ちるように消えてしまった。
「え?秋山が消えたぞ!くそ・・・あの不愛想なガキ・・・見捨てやがった・・・え??」
彩都がその手を離した。「なんだよ・・・あいつはただ『お前が嫌い』なだけで帰ったんだ。今までお前してきたように・・・」
「うわあああああああああ!!!!!!!!」
和彦も消えた。
「和彦ッ!!・・・・これ以上はだめ。修希くん離れて」
「え?」
「バイバイ。これ以上はあなたも巻き込んでしまうから」
「でも・・」
「大丈夫。『またすぐにあえるよ』」
俺は手から力が抜け、彼女を離してしまった。
真朱・・・・?
「真朱アア!!今あんたから手離したでしょう!?少しは女の子を助けようとしなさいよ!・・・修希君変わった。彩都君とつるむようになってから。彼をかばったり、私たちに意見してきたり・・・。そして女の子にも嫌われるくらいの態度で喧嘩売ってきたり・・・。・・・そうよ。きっとあの男がわるいのよ。私はずっと・・・」
忘れてるかもしれないけど、彼女の手を握ってるのは、つまり命綱を握っているのは・・・綾音ちゃん。
すごい・・・視線だ。
「まだ聞きたいことはありますか、修希さん?」
「いや・・・いいんじゃないか??」
「え?」
「さよなら・・・。お兄ちゃんの悪口を言った人」
「キャアアアアアアアアアア!!!」
ともかく、だれもいなくなってしまった・・って俺らもなんか黒っぽい光が、足元がああああ!!!
「綾音っ、急いで光太郎を呼び寄せろ。そして俺に出来るだけ近づけ!」
「は、はい兄さん」
綾音ちゃんははしって家へ戻った。
俺はいてもたってもいられずに彩都に聞いた。
「どうなってるんだ?」
「これは、召喚魔法だ・・・。俺から離れるな修希?下手したらお前だけ違う世界に飛ばされるからな・・・。くっ、『アイツ』め・・・!」
え?耳を疑いたくなった。なんか『こんなの常識!』みたいな感じで『召喚魔法』って言われちゃったんだけど・・・。
「連れてきたっ。兄さん、修希さん、これは・・・?」
「大丈夫。おれもしらない」
「大丈夫なんですか・・・それ?」
「とにかくパニックしている」
「わたしも・・・」
「よし!みんな掴まれ!」
こうして俺らも、色は違えど、黒いマンホール・・・そのまんまじゃないか!・・・・・、とにかく吸い込まれたのだった。
こんな日が、『これが僕らの旅の始まり』となるのだった。