これが俺らの旅の始まり
まだ途中です。
昼時が近い。彩都に言われてここでずっと待っている俺だけど・・・。
随分話し込んでいるな。さっき綾音ちゃんは帰ってきて昼飯の用意をしてくれているし・・。ちゃっかり昼ごはんに同席させてもらえることになった俺は、親友の妹だとしても女の子の手料理を食べられる嬉しさに心がホカホカしていた。
そして正午がすぎた。まだ彩都は帰ってきていない。この部屋は2階なので、はっきりとは彼らがなにを話しているとかわからないし、窓も玄関とは逆方向の位置に造られているので何も見えない。
(綾音ちゃんのいる台所からなら、なにか聞こえては来るはずだけど。・・・うーん、どうしたのかな?)
もう30分はまたされているだろうか。さすがに彩都がだれと話しているのか気になってくるし、覗きに行ったっていいだろう。
そう思った俺の足取りは俊敏だった。ただ足音を立てないように階段を上手くつま先立ちで降りていく。そんなに降りるたびに音が軋む階段でもなかったのに。
階段を下りて左に行けば玄関だが・・・?
声が聞こえた。
「それが偽善者って言ってんだよっ」
「それでも。後悔したことなんて1度もない。やり返しただけだ。あいつらの分まで・・・」
「彩都君、それでもあなたには失望した」
(確かに世界は彩都のしていることを、『悪』と呼ぶ)
ドアを開ける前に、俺はそう思ったんだ。
(でもそれを『善』と呼び、彼と友達になりたいと思う馬鹿がここにいる)ってね。
一瞬、俺自身がクラスの、いや学校中のやつらから嫌な奴、おかしい奴と見られてしまう未来予想図が頭で完成された。
でも、『全員』じゃないだろうさ。
そして、俺はドアを開けて言った。
「お前らこそ、弱いもの虐めじゃないか!?」
「いたのか!?修希・・・。何言ってんだよ。こいつはな、昔俺の彼女まで殴ったんだぞ!!忘れてるとでも思ったか彩都!」
和彦って、一方的に彩都を『悪』だと決め付けるんだな。
「修希君!あなたは洗脳されているんだよ。よく言うじゃない、救われた者は救ってくれた相手のことを慕うようになるって・・・。きみのは友情じゃない、きっとだれかかっこいい人をおいておけば、人気のある人を見方につければって・・・」
(俺って人気あったのか・・・?少なくとも女子は俺は嫌いだったが)
かっこいいだけですべてを決めて、媚びり、力の弱い男はたまに気にかけられる程度。パシリにして利用し、気に食わない奴は集団で遅いにかかる。そんなやつばかりだ。顔色ばかり伺って。
そして暴力事件を起こしただけで彩都を悪人扱いする。
さらに気に食わないのは、彩都の気持ちをわかった人も少なくともいたようだが、彩都に近づくと同じく学校中から悪人扱いされる、という噂が流れ出したことだった。
だれも助けてくれないのかよ?
「修希君!」
最後まで声を上げて俺に『説得』をしていたのは古高さんだった。
ただ、喋りながら、チラチラ周りを気にしていた・・・。
頭にきた。
「お前らさ。確かにこの彩都は気違いに見えるだろうが、何度も言おう。俺はこいつの友達だ。その友達を馬鹿にするやつは・・・」
「許さねえええええええ!!!!!!1」