仲裁
もうそろそろです!
親に言われたとおりの買物をする俺、高菜修希。卵1パック120円という安さ。しかも12個入りときた。おひとり様2パックまでなので、彩都に(断られると思ったが)同行をお願いしたところ、あっさりと何も言わずついてきてくれた。おかけでノルマ達成だ。でも右手に12個パックの卵が4つも入っているというのは、また違った緊張を味わえる。
それにしても・・・、彩都は親友(だと俺は信じている)、だからいいけど、やっぱりいつかは女の子と一緒に家へ帰ってみたいなあ。夕焼け空があんなに遠く感じるのは気のせいだろうが、やっぱりやり直したい過去が、俺にもあるわけですよ。
と、自然に回りに可愛い子がいないか目を配らせてしまう。公園だ。あまり見すぎると変人に思われてしまう。それをわかっていながら俺は公園を見渡す。
「修希・・・?何を見ているんだ?」
え?俺、親友(だと信じてるぞ、彩都)に怪しまれるくらいブランコのほう見てた!?
幸い向こうの女子高生には気づかれていないみたいだけど・・・。
「うん、ちょっとね・・・」とさりげなく右手で後ろ髪を撫でて少し上を向く。「楽しそうだな・・・ってだけ」
現に女子高生だけではなく、幼稚園ぐらいの子から、小学生の男女が公園を走り回っている。今一人の男の子がコケた。助けに行ったほうがいいのかな?
そんなことを思ってると、親だろうか?すぐに飛び出してきて、持ち運んでいた消毒液を吹きかける。子供はしみて痛いようだ。
俺はそこまで見つめないでいると、突然彩都が公園へ入りだした。
「ええっ!?入っちゃうの?しかもブランコの方?」
んん?よく見てみた。キーコキーコと無人のブランコの音。そしてわかったことがあった。
一人の女の子が足に傷を作っていた。血が出ているようだ。・・・そうか!彩都は普段喧嘩に巻き込まれた時の為に必ず殺菌薬と絆創膏を持ち歩いているというけど。・・・ああ、こんなところで応用が効くなんてな。当たり前じゃないか、人が怪我してる時にタイミングよく殺菌薬を取り出してくれる人がいたら俺でもかっこいいと思うさ!!
「修希、ちょっとこれ持ってろ」
「え?うん、はい」
え?あいつ、俺に殺菌薬と絆創膏渡して別の方行ったぞ?・・・女子高生たちの方だ。何しに行くのか・・。
いや、俺にはわかる。
もし俺の想像通りだったとしても・・・、まずこの娘を助けたほうがいいな。
「大丈夫か?」
「え・・・?あ、ちょっと痛いかも・・・です」
膝に嫌でも目が行く。傷口が狭いものの、血は流れてく。しかも土の上で転んだんだ。俺にも経験があるが、早いとここいつでスプレーしてあげねば!
「あぁ!・・・しみまあ・・・す!!」
「大丈夫。これはほんとうに効くんだから・・・さ(ってあいつは言ってるけど)。全く、どこで手に入るのやら・・・」
とにかく、すぐに絆創膏を貼る。
「相変わらずこれも貼りやすいなあ・・・」
ともかく、これで大丈夫だろう。今思えば、人生で初めて女の子の足に触れた気がしたが、それどころではない。
「気をつけなよ?・・・じゃ行くか・・・おーい彩都?彩ちゃん!?」
「誰が『彩ちゃん』だ。それより早く行くぞ・・・それとこれ。あいつらに取られていたのだろう?カバンと帽子」
まったくタイミングのよろしいことで。
そして彩都の指差す方向を見てみると・・・。
「この鬼!悪魔!私たちは助けないのか!」
「学校に言いつけるから・・・、でも名前わかんないし。でもそのジャージは旭詠南だろ!覚えてろよ・・・佳奈!今日のこと誰かに言いつけたら・・」
「それがどうした。佳奈・・・というの?気にすんな。今日・・・いや、今までされてきたこととすぐぶちまけてしまえ。俺?俺は修希と二人でなんとかするから心配するなって」
え・・・俺も入ってるんですか。