ギター
世の中にとっては、確かに彼は悪く見られてしまうのか。
俺、高菜修希はそんな一人の少年と一緒にギターを弾いている。
そんな俺の隣にいるのは、蒼井彩都という、普通の人からみたら変わり者って言われる、俺の親友だ。
彼のギターソロはとにかく指の動きが早いのが特徴で、抑えた弦の一つ一つ的確にピッキングしていく。ギタリストなら誰でもできると、言われるかもしれない。ギターを始めてもう十年にもなる俺だが、主に弾き語りをずっとしてきたので、ほとんどストロークしかしてこなかった。
それなのに、視線は弾きはじめてまだ一回もフレットに視線を動かしていない。『慣れ』という言葉で片付けてしまうとそれで終わってしまうが、彼が言うには、『慣れ』だそうだ。修希は新しいことに挑戦し、先輩たちのスゴ技を目にする度、『そうしてそんなことができるんですか?』と聞く。
彼らもまた、『慣れ』と『努力』というワードで俺をごまかすように言う。中学までやっていた野球部で、『どうしたら三振しなくなりますか?』というような、今思えば恥ずかしい質問を質問をぶつけたが、その人の返答も全く同じ。
しかしこんな場合もある。ギターを全く弾いたことのない友達が、俺がたかがコードチェンジを繰り返すだけで尊敬の目で見てくる。音楽の授業でギターを扱う時のみ、俺はヒーローになれる。どこにでもいるギター好きな少年だというのに。
その友達に、『どうしたらコードチェンジが上手く出来るようになるのか』と、真剣な表情で聞かれたら思わず吹き出してしまうかもしれない。こんな簡単なこと、そんな真剣になるまでもないだろって笑うかも。まあ、ピアノを弾ける人を見るたび、『どこをどう押したら弾けるのやら』とか思ったりする。
当に、今そんな気分。『エリーゼのために』を弾き終わった彩都はいぶかしそうにこちらを見る。
「なんだよ?見てないほうが良かったか?」
「いや・・・違うけどな。・・・やっぱりなんでもないさ」
と言って立ち上がって、エレキをギタースタンドに立てた。「もう5時だ。・・・軽音部の連中と出くわす前に帰るぞ」
「・・・・、うん。そうだな」
俺と彩都は、2週間程前まで軽音楽部に所属していた。だが、理由があって・・・。
退部した。
よろしくお願いいたします!初めての投稿作品です。