1.迷宮屋台
迷宮ー600年ほど前に突如世界に現れた13の試練場。あらゆる怪物が徘徊し、迷宮に近づくものへと牙を剥く。
しかし、人類は多くの犠牲を出したとしても迷宮への挑戦を諦めなかった。
迷宮から手にはいる数多の資源を求め、多くの人々が命をかけ迷宮へと足を運ぶ。
いつしか迷宮を中心とした集落ができ、街となり、国となった。
この世界の人類にとって、迷宮は多くの命を奪う脅威であると同時に多大なる恩恵のある代物なのである。
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『ムゥの迷宮』世界に現れた13の迷宮が1つ。
今日も多くの探索者がこの迷宮へと挑戦している。
彼らが探索者と呼ばれている理由はこの『ムゥの迷宮』が地下へ続くタイプの迷宮であることとその入り口が水面の様な波紋を刻む結界の様な何かに覆われており、水中に潜るかの様に見えることから名付けられた。
迷宮の入り口には探索者達が利用する商店や露店屋台などが並ぶ探索者街と呼ばれる街が形成されている。
ここはその一角、実店舗を持たない露天商や屋台が並ぶ場所。迷宮の入り口に最も近く、多くの探索者が迷宮へ挑む前に最後の準備を整える場でもある。
「おい、小瓶屋そんな重そうな顔してると客は来ねぇぞ!もっと堂々としてろ」
大柄で筋骨隆々な褐色肌の男が慣れた手つきで肉串を調理しながら隣な屋台に向かって声をかける。
「別に、僕はほそぼそとやってければ良いんですよ」
小瓶屋と呼ばれた青年は、椅子に座り自身の屋台のテーブルへと身体を預け、頬杖をつきながら気怠そうな表情で男に対してそう言い返す。
「ガハハ、せっかく良いもの扱ってるんだからもう少し、堂々としてればいいのに」
大男は笑いながら自身の商品である肉串を準備していく。ジューという音とともに食欲をそそる脂の匂いと煙が広がり、探索者が数人近づいて来てら肉串を購入していく。
次々と来る客に対して、待たせることなく対応する大男の姿は長くここで屋台をやっていることが伺える。本人曰くここの場所でも古参だと言っていた。
「店主さん、治癒効果のある小瓶はありますか」
「うぇっ!?えっとありますよ」
隣屋台の大男の仕事ぶりをぼーっと眺めていると突然声をかけられ、小瓶屋は気の抜けた返答をする。
小瓶屋が視線を上げると茶色に近い赤髪に黄土色の瞳をし、傷ひとつのない革製の軽めの鎧を来た青年が立っていた。
「そしたら3本ください!!」
赤茶髪の青年は元気のよい声で話す。
「治癒効果の度合いはどうされます。一応小と並、中程度までなら在庫がありますが……初めて見る感じですかね、まずこの濁りが強いものが小治癒の小瓶、少し透明度が出てきているものが並治癒の小瓶、この透き通っているのが中になります。この色は材料によって変わっていきます」
小瓶屋は、下の棚から3種類の1つずつ取り出し、説明する。
赤茶髪の青年はキラキラとした瞳で小瓶を眺める。
「えっと小でお願いします」
「かしこまりました。では小3本で360ゼルになります」
小瓶屋は慣れた手つきで小治癒の小瓶を用意する。それを見た赤茶髪の青年は、ぎこちない手つきで、小銀貨(100ゼル)を3枚と大銅貨(50ゼル)1枚、小銅貨(10ゼル)を1枚取り出す。
「ちょうどですね。こちら小治癒の小瓶3本です。あとこれはただの独り言なんですが購入前に料金の確認とどんなものかは把握しておいたほうが良いと思いますよ」
赤茶髪の青年は商品を受け取ったあとに、ハッとした表情で小瓶屋を見る。
「ここらへんは粗悪品を売る業者もいますし、相場を知らないと高く売りつけられますからね、迷宮は命をかける場なのでよりよい品を多く集めるのも探索者の腕の見せどころなので頑張ってくださいね」
赤茶髪の青年は「ありがとうございます」と良い頭を下げ、そそくさと離れていく。
迷宮周りの露店では詐欺や粗悪品を売る業者が後を絶たない。人の命を何とも思わない連中はどこにでもいる。特に先ほどの赤茶髪の青年のようないかにも駆け出しですみたいな存在は奴らにとってはいいグーガだろうな。
「珍しいな小瓶屋、アンタが駆け出し探索者にアドバイスとはな」
「流石の僕でもいかにもな駆け出しが目の前にいたら小言の1つや2つ出ますよ」
客足が少し落ち着いた。隣屋台のの大男が硬貨をしまう小瓶屋に向かって話す。
1ゼル=1円と考えていただければいいです。




