詩 彼女をブランコに誘う
「ブランコに乗ろうぜ」
「え」
下校途中、小さな公園があるのだが、俺はブランコを指差し、誘ってみる。
公園には子ども達が「キャッ、キャ」言いながら、走り回っている。
「ブランコ、乗りたいの?」
「おう」
素直に答えると、彼女が分かったとうなずいてくる。
夕日に照らされて、全体的にオレンジっぽい彼女。
色気があるというよりは、可愛さが増している。
「子ども達、使ってないみたいだから、遊ぼうか」
「よし、行こう」
話はまとまり、2人でブランコに乗る。
「わ。小学生以来だ」
彼女が恐る恐るなるのに対し、俺はすぐにこぎ始める。
「懐かしいな」
「うん」
2人はゆっくり動き出し、風に乗る。
子どもの頃といっても、5、6年前の話だが、よく競争して乗っていたっけと思い出す。
彼女は最初こそ強張っていたが、段々と笑顔になってくる。
「気持ち良い。もうちょっとスピード、あげようかな」
彼女はそう言い、足に力を込める。
学生とブランコ。
珍しいのか、子ども達がちらりと見て、すぐに顔を背ける。
俺の顔、怖いか?
と思ったのだが、他人のことなんか分かるわけがない。
「きゃあ!! 空に届きそう!!」
「おい。あんまりスピードを出すなよ。その、スカートなんだし」
「あ…」
彼女が恥ずかしそうに動きを止めたので、俺もこぐのをやめる。
ブランコから降りると、彼女の背後に回る。
「どうしたの?」
「俺が背中を押してやろうと思って」
軽く両手で押すと、彼女のブランコが動き出す。
ゆっくりにしてやろうと、力を調節する。
「押さなくていいよ。その、1人は恥ずかしいから」
「いいの。俺がしたいの」
小さな頼りなさそうな背中。
俺は守るように、両手に力を込める。
大丈夫、守ってやるからな。




