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第八話 その後に残るもの

海で、息をする。八話です!今回は円卓の騎士が沢山登場します!そして主人公は強くなる決意を固める…という感じです!

【前回のあらすじ】

Bクラスの大型レヴィアタンを倒すというだけの任務のはずだった、だがレヴィアタンを倒した直後にSクラスのレヴィアタンが現れ、窮地へと陥る。数人はSクラスに殺され、立っているのは主人公だけになった時、円卓の騎士アーサーが現れて窮地を救った。

砂煙がゆっくりと収まると、そこにあったのは静謐と破片だけだった。巨大なレヴィアタンの胴体が半ばに裂け、周囲の水はまだ血液と体液の混じった濁りを含んでいた。戦いが残したものは想像以上に重い。水の層がいつもより鈍く流れている気がした。


駆けつけた増援と医療班が現場に入る。俺は震える声で道を示した。


「こっちです! 生存者がいます!」


救護の手が慌ただしく動き、負傷者と遺体が次々に確認されていく。報告は簡潔に、しかし刺すように現実を突きつけた。


中村 純――一等兵。即死。回収された遺体は静かに、しかし確実に運ばれていった。

アーベル・グレイス――三等兵。その名はやがて、レヴィアタンの体内から断片と共に発見された。何を伝えようとしていたか、誰にも分からない。

マイク・アンダーソン――二等兵。左腕は欠損、止血はされているが重症。顔は青く、呼吸が乱れている。

ドニーズ・アラン――二等兵。肋骨六本の骨折、折れた骨の一部が肺に食い込んでおり、意識は朦朧。即時の手術が必要だ。

リンネット・アークレイン――一等兵。肋骨四本の骨折、右腕にひび、肝臓と肺の損傷で長期入院が必要と判断された。


医療班の低い声が、水の中に沈むように響く。誰かが呟いた。潮のような静けさが、仲間の間を通り過ぎていった。


(生き残った――俺は生きている)


生還という事実が、胸の奥にぬるりと重く落ちる。守れなかった者たちの顔が浮かび、吐き気が喉をかすめた。増援の指揮を取りながら、俺はただ淡々と現場の整理に従った。遺体の扱い、鱗片の回収、現場の撮影――手順が機械のように進む。その合間に、誰かがアーサーが残した残骸を口にする。あの刹那は確かに存在した。だが、その余韻は慰めにはならなかった。


(場面が切り替わる)

場所は、TWC本部――光を最低限に落とした、薄暗い会議室。重厚な円卓を囲むように、複数の影が座していた。

静寂を破ったのは、苛立ちを隠しきれない声だった。


「北西の海砂地にSクラスのレヴィアタンだぞ!

 今までこんな事は無かった!」


TWC管理委員会の一人が、机を叩くようにして荒々しく言い放つ。


「漁場に近い区域だぞ?

 被害が出なかったのが奇跡だ!」


その声で、会議室の空気が一段と張り詰める。だが――それに冷水を浴びせるような落ち着いた声が返った。


「確かに、近年では確認されていませんでしたね」


口を開いたのは、円卓の騎士 第十一位――アグラヴェイン。白衣にも似た研究服を纏い、“騎士”でありながらTWC研究部の代表を務める男だ。


「ですが、“無かった”とは言い切れません。

 記録を遡れば……およそ四十年前に、同様のSクラスの目撃と討伐事例があります」


淡々と、研究者の口調で淡々と告げる。感情は抑えられている。


「今回は――たまたまでしょう」


その言葉に、即座に反応する者がいた。


「研究員のトップが、そんな適当でいいのかぁ?」


円卓の騎士 第五位――パーシヴァルだ。椅子にもたれて肘をつき、露骨に面倒くさそうな表情を浮かべる。


「“たまたま”で済ませられるなら、会議なんて要らねぇだろ」


皮肉混じりに吐かれたその声が、会議室に落ちた。円卓には、他にも名だたる顔ぶれが揃っている。

第一位・アーサー、第二位・ランスロット、第三位・ガウェイン、第四位・ケイ、

第六位・ベディヴィエール、第八位・ガレス、第十二位・エレイン。

誰もがこの異常事態を“知らない”わけではない。ただ――受け止め方が致命的に違っているだけだ。


沈黙の中、アーサーが静かに視線を落とす。彼の脳裡には、先ほど救ったばかりの戦場の光景が浮かんでいた。


やがて、これまで黙していた女性が口を開いた。


「……もしかしたら、何かが原因でレヴィアタンが活発になっているのかもしれない」


円卓の騎士 第一位――アーサー。

その声は静かだが、確かな重みを帯びていた。


「実際、最近のレヴィアタン被害は……まるで、うなぎ登りだ」


会議室の空気がわずかに沈む。


「フン……」


アグラヴェインが眼鏡を押し上げ、小さく鼻を鳴らす。


「なら、こちらで調査しておきましょう。何か分かり次第、すぐに報告します」


研究部代表として、理性的で事務的な方針が示される。ランスロットが腕を組み、場を締めにかかる。


「つまり――油断は禁物ってことだ。お前ら、いつでも出撃できるようにしとけよ?」


その言葉に、場の空気が再び引き締まる。


「たく……面倒くせぇなぁ……」


パーシヴァルは頭を掻き、露骨に不満を漏らす。だがベディヴィエールがすかさず茶化し、場はわずかに和らぐ。


「まぁ、いいじゃないか。パーシヴァル、お前は普段ほとんど仕事してないだろ?ウォーミングアップってことで、そろそろ本気で働いたらどうだ?」


「へいへい……」


パーシヴァルが短く返すと、ケイが立ち上がる。


「じゃあ、話はまとまったな。

 調査は研究部。戦闘面はいつも通り」


一拍置き、ケイが手を叩く。


「はい、解散!」


その一言で、会議は半ば強制的に幕を閉じられた。だが、誰もが心の奥で理解していた――今回のSクラスは、“ただの異常”では終わらないかもしれない、ということを。


(場面が切り替わる)

白い医療灯が、水の中に淡く溶けていく。病室には機械の規則正しい音だけが残り、世界は静かに呼吸していた。ベッドの上でリンネット先輩は目を細めて笑う。肋骨の固定と包帯が痛々しいが、その笑顔はいつもより少しだけ儚げだった。


「……大丈夫ですか、リンネット先輩」


声が震えるのを無理に押し殺して、俺はベッドサイドに立つ。


「もちろん! 大丈夫だよ〜」


明るい声――だけどどこか無理をしている。先輩はそれでも笑って、俺を安心させようとする。胸が痛む。


「……すいません。俺、何もできませんでした……」


言葉が出た。悔しさが喉の奥を塞ぐ。足先まで鉛が入ったように重い。


先輩は少しだけ目を伏せ、でもすぐにいつもの優しい口調に戻した。


「何言ってるの。それは私だって同じよ。あの場はね、潮斗くん一人の責任じゃない。……しょうがなかった、って片付けられることじゃないけど、あの状況だったの」


その言葉に、胸の中で何かがすっと緩む気がした。責められているわけではない。むしろ、誰かに受け止められた――そんな感覚だった。


拳をぎゅっと握る。爪が掌に食い込むのも構わず、震えを堪えて言った。


「俺……人を守りたくて、TWCに入ったんです。でも、このままじゃ何も守れない……」


悔しさが声を震わせる。


リンネット先輩は俺の拳を見て、静かに言った。


「潮斗くん……人ってね、いきなり超人になれるわけじゃないの。天才になれるわけじゃないの。焦らずコツコツ積み上げるのが大切なの。私は、潮斗くんを応援してるよ」


その言葉は、温かくて重かった。俺は深く頷いた。


「……はい!」


病室を出ると、外の水流はいつもと変わらない速度で世界を撫でていた。街の光が淡く揺れ、人々が淡々と日常を送っている。だけど俺の胸の中は騒がしかった。戦場の映像が、血の匂いが、仲間の顔が何度もフラッシュバックする。


(強くなる方法は……訓練?知識?それとも――)

考えを巡らせていると、ふと、あの日の光景が鮮烈に蘇った。Sクラス。圧倒的な存在。逃げ惑う仲間。だが逃げなかった者もいた。立ち向かっていた者がいた。あの一撃を見たとき、脳裡に確かな閃きが走る。


(答えは単純だ。戦うことだ。現場で、レヴィアタンと向き合うことだ)


訓練室や理論書だけじゃ身につかないものがある。恐怖の中で刃を振るい、体感と感覚で覚えるものがある。今の俺に必要なのは、実戦の経験だ――そう決め、俺は本部へ足を向けた。


TWC本部のロビーはいつもより冷たく感じる。受付の前で言葉を詰め、頭を深く下げる。


「お願いします。もっと、俺に任務を回してください。現場に、出してください」


職員の顔に一瞬ためらいが走る。昨日のこと、つまりSクラスの出現と現場の犠牲を知らぬはずがない。彼は慎重に言葉を選んだ。


「君はまだ……昨日の件で、精神的な回復が必要だ。無理をすると次は君が――」


「それでもです。休んでいるだけでは変わらない。誰かの命を守るために、俺は前に出たいんです」


必死さを込めて訴えると、受付の職員は小さくため息をつく。やがて条件付きで、任務を割り振ることを承諾してくれた。


「ただし、無茶は禁物だ。任務は選別する。体と心のケアは優先してくれ」


「ありがとうございます!」


胸が熱くなる。これが誤魔化しの誓いではなく、軌道に乗せる第一歩だと信じたかった。


そしてしばらくして、俺は美香(二等兵)と二人だけのCクラス討伐へ向かうことになった。彼女は淡々としていて、だが目は厳しい。


「いい? 私の言うことは聞くこと。君、命令違反しまくるって本部に警告されてるんだから」


彼女の言葉は軽いが重い。俺は即座に答える。


「はい、分かってます。もう大丈夫です」


しかし内心は複雑だ。胸の奥で小さくつぶやく。


(俺って、命令違反しまくる奴だって思われてるのか……)


海砂地に到着すると、潮の色が変わる。砂紋が広がる平坦な地形は、プランクトンの光を受けて静かに揺れている。目標はそこに潜んでいた。中型のCクラスだ。


「いい? 私が合図する。私の“3”で行くよ?」


美香が銃を構え、落ち着いて合図を取る。俺は大剣を握りしめる。


「……はい」


「1、2の――」


美香の声が張る。「3」を言い終える前に、身体が勝手に動いた。脚を蹴り出し、大剣を振り抜く。衝動のように、恐怖を押し殺すように。


刃が鱗に深く突き刺さると、振動が手のひらを通って肘へ、肩へと走った。レヴィアタンは一瞬、動きを止めたかに見え――そして崩れた。砂地に大きな影が倒れる。美香が遅れて駆け込んでくる。息を切らしながら辺りを見回し、驚きが顔に走る。


「ちょ、ちょっと……私の出番、なかったんだけど」


俺は剣を下ろし、砂を踏みしめる。喜びよりも虚しさが先に来る。


(……まだだ)

勝利の実感が薄い。小さな手応えはあったが、それだけで満足できるほどの力はついていない。仲間との連携も、命令に従う規律も、まだ身についていない。美香は黙って俺を見ていた。彼女の目には叱責の色だけでなく、少しの興味が混じっている気がした。


「……まだ、強くならないと」

海で、息をする。八話はどうでしたか!まだ次回のことは考えていないので、次回のことは言えません!すいません!もし面白いと感じたら感想と評価をいただけると励みになります!

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