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第二十五話 新たな絶望と希望

海で、息をする。二十五話です!今回は新たな海賊の強敵が現れるが、またあの人が現れる!って感じです。

【前回のあらすじ】

目を捨てた男・ヴァルドと、未来を背負う准特等兵 アルティ・チュード――互いの“正義”を掲げた激突は、ついに最終局面へ。


Sクラス個体に家族を奪われ、海賊として力こそが正義だと信じるヴァルド。


完全ではないと自覚しながらも、「今この瞬間に救える者が正義だ」と応じるアルティ。


怒りと責任。


二つの思想が、限界寸前の肉体を駆動させる。武器はひび割れ、骨は軋み、次の一撃で全てが砕ける状況。同時に放たれた渾身の衝突は、海底を揺るがす轟音を生んだ。砕け散る棍棒とハンマー。


そして――先に膝をついたのはヴァルド。立ち尽くすアルティの叫びが戦場に響き渡る。勝者はただ一人。だがそこにあったのは優劣ではなく、信念を貫いた者同士の確かな敬意だった。戦いは終わった。だが、正義の在り方を問う火種は、まだ消えていない。

「クソ! 俺達も行くぞ!」


甲板で見守っていたラエナンジの海賊たちがロープを下ろし、倒れたヴァルドを奪還しようと身を乗り出した。


だが――


ドォォォォオオオン!!


海賊船の側面に、何かが落ちる。衝撃で船体が軋み、甲板が大きく揺れた。


砂煙の中から現れたのは、長い外套を翻す女だった。


「ザマァないね……」


ラエナンジ海賊団の女性幹部、ヴェスティスだ。


「ヴェスティスさん!!」


歓声が湧き上がる一方で、限界を迎えたアルティは砕けたハンマーの柄を放り投げ、拳を構えた。しかしヴェスティスはアルティを一瞥することすらせず、そのまま横切って倒れたヴァルドの腕を掴む。


「帰るぞ」


短い命令。無造作に引きずり、船へ戻そうとする。


アルティは歯を食いしばるが、身体はもう動かない。周囲の兵士たちも、消耗しきっていた。


ヴァルドが甲板に引き上げられた――その直後。


ドォォォォオオオン!!


今度は海底そのものが沈み込むような衝撃が走る。


「今度はなんだ!?」


煙が巻き上がる中、現れた影に海賊も兵士も息を呑む。そこに立っていたのは――


円卓の騎士、第三位、ガウェインだ。


「円卓の騎士!?!」


どよめきが甲板を揺らす。ヴェスティスは舌打ちを漏らした。


「……チッ」


その場を一瞬で見渡す冷たい目。


「おい! お前ら、アイツをくれてやりな!」


命令口調で周囲を制するヴェスティスに、部下が怯んで声を上げる。


「ですが……ボスが怒りませんかね?」


不安げな反応に、ヴェスティスはさらに高圧的になる。


「うちの命令が聞けないのか? ボスに怒られる心配はするな。円卓にぶち殺される心配をしな!」


言い捨てると、彼女は甲板から巨大な鉄箱を蹴り落とした。ズシン、と重い衝撃が海底へ伝わる。沈んだ箱は内側から軋み、次の瞬間――破裂した。


箱の中から現れたのは、禍々しい巨体。推定Sクラス相当のレヴィアタンだ。


兵士たちの顔色が変わる。満身創痍の戦場に、さらなる災厄が投げ込まれた。


だがガウェインはその巨体を冷静に見据え、わずかに笑った。


「……面倒を置いていくとは。海賊らしいな」


戦いは終わっていなかった。

それどころか――ここからが、本番だった。


巨大なカーゴランプが、重々しい音を立てて閉じていく。


金属と金属が噛み合う衝撃が甲板を震わせ、海流がざわつく。


その瞬間――船縁に立っていた ヴェスティス が振り返る。


ニヤリと口角を吊り上げ、ゆっくりと中指を立てた。

完全な挑発。その視線の先には、円卓の騎士 第三位、ガウェイン がいる。


海賊船が離脱を始める中、ガウェイン は無言でその光景を見送った。

「……ハァ」――小さく、深いため息。怒りでも焦りでもない。面倒が増えたことを知らせるため息だ。


次の瞬間、背後の装置が作動する。アロンダイトが取り出され、装備完了の駆動音が水を切るように鳴る。


視線は瞬時に、海底に現れた禍々しい巨体、レヴィアタンへ向く。

逃げる海賊を追うことはしない。今、対処すべきは――災厄そのものだ。


「さて」

淡々と呟き、次の一歩を踏み出すと、海底の砂が弾けた。


円卓第三位の“後始末”が、静かに始まった。


ガウェインのアロンダイトは、普通の剣とは違った形をしていた。


拳に装着する――カタール。

握り込むと刃と腕が一体化し、打撃と刺突が同時に極まる、近接特化の兵装だ。


ガチャ、という小さな音。

金属が噛み合い、指が通り、拳が固定される。

刃と腕が直結する感覚は、もはや“武器を持つ”のではなく“武器になる”という一体感を与えた。


蒼い光が刃面を走る。


そのとき――

レヴィアタンが低く唸り、巨大な顎を開く。咆哮が水流を震わせ、海底の砂が吹き飛んだ。


だが、ガウェインは慌てない。

ゆっくりと歩を進める。一定の歩幅、一定の呼吸。咆哮は雑音に過ぎないかのように、彼の動きは冷静そのものだ。


怪物が体を揺らして迫る。圧倒的な質量で押しつぶすように尾を振り、距離を詰める――その瞬間、十メートルを切った。


ガウェインがわずかに腰を落とす。拳を構え、刃先を真っ直ぐに向ける。


「――静かにしろ」


その低い声が海底に吸い込まれるように消えた次の瞬間、海底が爆ぜた。


――踏み込み。


その一歩で、海底が深く抉れた。

ガウェインの足が地面をえぐるほどの圧力を生む。


次の瞬間には、もう目の前にいた。

消えたように見える速度で接近し、拳に装着されたカタール型アロンダイトが一直線に振り抜かれる。


斬撃が走る。

刃はレヴィアタンの腹部を横一文字に裂いた。


そして遅れて来る衝撃。

ドォォォォン!!


音速を超えた衝撃波が炸裂する。水中に鳴るソニックブームが海底を揺るがした。


ゴォォアアアア!!


怪物が断末の咆哮を上げる。だが、巨体もただでは倒れない。反転して巨大な尾を薙ぎ払い、圧殺の軌道を描く。


だがガウェインは既に跳んでいた。

尾の通過跡は地面ごと抉られ、岩盤が砕け散る。直撃すれば即死を意味する威力だと誰の目にも明らかだった。


空中で姿勢を整えながら、ガウェインは静かに呟く。


「二回目……」


重力に従い落ちる軌道で、今度は縦に刃を振り下ろす。

鱗の隙間を正確に捉え、一直線に突き刺すような斬撃が走る。


ザンッ!!


硬質な鱗が割け、刃は深部へと食い込んだ。着地と同時に砂が静かに舞い、背後で遅れて血潮が噴き出す。


怪物はようやく理解する。

目の前にいるのは、単なる兵士ではない――災厄を狩る者だ。


拳の刃に残る血を払うその姿は、名実ともに“円卓の騎士”の領分を示していた。


Sクラス相当のレヴィアタンは、明らかに怒りに支配されていた。


血を撒き散らし、巨顎を振りかざす。一直線――噛み砕く軌道。だが狙いはそこにない。


刹那、左に半歩。

拳を装着した者の身体がわずかに動いただけで、巨大な顎は空を噛む。


「三回目……」


淡々とした声と共に、閃光が走る。

カタールが横薙ぎに走り、怪物の左頬を豪快に裂いた。硬質な鱗と肉が断ち割られ、口元が裂けて血泡が弾ける。怪物は苦鳴をあげる。


だが、そこで動きが止まる。――いや、止めたのはあえての動作だ。姿勢を低く落とし、腰を沈め、拳の刃を胸の後ろへ引く。刃は真横、わずかに上向きに構えられる。戦場の喧騒が一瞬だけ遠のく。


「四回目……」


その呟きが終わるや否や、空間が裂ける。爆発的な踏み込み。音速を超えた速度が刃に乗る。一直線、開いた口へ正面から突き刺し――閃光が走った瞬間、怪物の身体は中央から真っ二つに割れた。


口から尾へ、断面が露わになり、遅れて血が噴き出す。ドサリと両断された巨体が海底へ沈んでいく。


砂がゆっくりと舞い落ちる中、刃を握る男はゆっくりと立ち上がる。刀身の血を振り払うわけでもなく、ただ静かにそれだけをする。


円卓の騎士、第三位――ガウェイン。

四撃で終わらせる、その名に恥じぬ仕事ぶりだった。


海底に沈む、両断された巨体の静寂の中で、ガウェインはゆっくりと拳を解いた。


彼のアロンダイト――カタール型兵装には、異質な仕組みが組み込まれている。


一撃目。

二撃目。

三撃目。


そこまでは“蓄積”に過ぎない。

斬撃の軌道、衝撃、振動、敵の構造――それらを内部機構が瞬時に演算し、刃に書き込んでいく。


そして――四撃目。


解放されるのは、圧倒的な斬れ味だ。


名は《クアルト・テンポール》


ラテン語で「第四」を意味するその名にふさわしく、四回目の斬撃にのみ発動する“絶対切断”――対象の構造的弱点を強制的に貫く刃である。


どれほど硬い鱗でも、どれほど分厚い装甲でも、四度目には斬れる。だが制約は明白だ。三度を確実に当てなければ意味を成さない。外せば効果は無に帰す。つまりこの能力は「四回当てられる相手にしか使えない」。


Sクラス相当のレヴィアタンを、単独で四撃――それが円卓第三位の技量だった。


ガウェインは振り返り、疲弊した仲間たちを見渡す。淡々と言う。


「終わった。撤収しろ」


その声には命令以上のものがあった。刃を携えた背中はすでに、戦場を支配している。四回目は、終止符。その戦い方が、確かにそれを示していた。


「フッ……さすがは円卓の騎士だな……」


その呟きは、アルティ・チュードのものだった。

彼は、ガウェインがSクラス相当のレヴィアタンを討ち取る瞬間を、確かにその目で見届けていた。


緊張が切れたのか、彼はその場に腰を下ろす。

荒い呼吸、震える指先。生きていること自体が奇跡に思える戦場だ。


「あのレヴィアタンを……たったの四撃で……」


誰かのかすれた声が漏れる。歓声はない。圧倒的な力を前に、兵士たちは言葉を失っていた。四撃――それだけで決着が付いたという事実が、最前線の者たちの胸に重くのしかかる。


ガウェインは静かに周囲を見渡す。装甲は割れ、血が滲み、立っているのがやっとの者もいる。

短く、しかし確かな声音で言った。


「……かなり消耗しているな。皆、休め……今はそれが必要だ」


命令というより労いに近いその声に、兵士たちの張り詰めた表情が少しずつほどけていく。

砕け散った海底の静寂のなかで、彼らは一瞬だけ呼吸を整えた。

海で、息をする。二十五話はどうでしたか?新たに現れた海賊の幹部ヴェスティスと円卓の騎士の第三位であるガウェイン。そして海賊船が放り出したレヴィアタンをたったの四撃で倒すガウェイン… 円卓の騎士の圧倒的な力が見れましたね!

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