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第二十四話 二人の信念

海で、息をする。二十四話です!今回はアルティとヴァルドの戦いに終止符が打たれます!お互いの信念をぶつけ合う激アツな戦いが繰り広げられるのでお楽しみに!

【前回のあらすじ】

ラエナンジ副頭目――ヴァルドとの激突は、ついに限界を超えた。准特等兵・アルティ・チュードは、アロンダイトに許された特殊能力を解放。打撃と同時に放たれる高周波の閃光――視覚を強制的に遮断する“神経を揺らす光”で、戦場を支配する。


閃光。

衝撃。

白。


一瞬の空白に叩き込まれる鉄槌。怒りに任せるヴァルドを、容赦なく追い詰めていく。


だが――


ヴァルドは“視覚”を捨てた。水流の歪み、筋肉の収縮音、踏み込みの振動。聴覚のみで敵を捉える異様な戦闘勘。閃光は通じない。優位は崩れ、戦況は再び拮抗へ。


一方、離れた場所では仲間たちが戦況を見守っていた。

援護に向かおうとする潮斗を制し、「信じろ」と告げる一等兵。――あの人は必ず、笑って帰ってくる。怒りで前に出る海賊と、未来を背負って立つ准特等兵。覚悟と覚悟が真正面から激突する中、戦場はついに“決着の領域”へ踏み込もうとしていた。

目を捨てた男と、未来を背負う男――

その名を聞けば、戦場の空気がひりつく。


ヴァルドとアルティの激闘は、遂に終盤へと差し掛かっていた。


ヴァルドの視神経は限界まで損なわれ、光はもはや敵だった。

視界は闇に沈み、頼れるのは耳と体感だけ――それでも彼は、音だけを頼りに立っている。


一方、アルティの身体も悲鳴を上げる。

棍棒の衝撃で全身に亀裂が走り、呼吸のたびに骨が軋む。拳を握るたびに激痛が走る。


退けば“助かる”可能性はある。だが、二人は退かない。


ヴァルドは怒りを燃料に立ち、アルティは背負った未来を支えに踏みとどまる。

一歩踏み出すたびに骨が悲鳴を上げ、刃を振るうたびに神経が焼ける。


それは単なる意地でも、誇りでも、信念でもない。

もっと歪で、もっと人間臭い衝動――守りたいものと譲れないものが、拳と刃を通して殴り合っているのだ。


(俺は……こんな奴に負けてられねぇんだよ!)


ヴァルドの脳裏に、あの日の景色が鮮やかに甦る。


あの頃は四人家族だった。

父、母、姉、そして自分。


決して裕福じゃない。

父は毎日体を酷使して働き、母は擦り切れた手で料理を作った。

それでも食卓にはいつも笑いがあった。


力強く頼れる父親。

心のこもった手料理を作る母親。

そして、何より自分を大切にしてくれた姉。


幼いヴァルドにとって、それが世界のすべてだった。


――だが。


たった一度の襲撃で、すべてが壊れた。


村に現れたのは、レヴィアタン。

しかもそれは、TWCが討伐し損ねたSクラス個体だった。


体力を回復するため、弱い村を餌場に選んだのだ。


悲鳴。

崩れる家屋。

血の匂い。


父は逃げなかった。

村人を助け、最後まで救助と避難誘導を続け――食われた。


母は叫びながら、姉と自分を安全な場所へ押し出した。

何度も背中を叩き、前へ行けと叫びながら――食われた。


そして姉は――


自分を庇って、目の前で喰い千切られた。


その最期、姉は笑っていた。

「生きて」――そう言う代わりの、静かな笑顔だった。


血に染まった世界の中で、幼いヴァルドは、ただ立ち尽くした。


来るはずの「正義」は来なかった。

守ると言った組織は、間に合わなかった。


助けてくれたのは――

TWCではない。


その“逆”だった。

悪と呼ばれる海賊たちが、血まみれで駆けつけ、怪物を叩き潰した。


その背中は、どんな理屈よりも眩しかった。


俺は、海賊に助けられたあと――ようやく理解した。


ヴァルドとして胸に刻まれた答えだ。


正義は、旗や綺麗ごとの中にはない。


TWCは“正義”を名乗っていた。だが、俺の村は滅びた。家族は喰われた。

その事実は、何一つ変わらない。


ならば、何が正義だ?


絶望の真ん中で泣いている誰かを、

理屈ではなく“力”で引きずり上げられる者。

目の前の地獄を、迷わず叩き潰せる者。


それこそが、真の正義だと俺は知った。


俺を救ったのは、法でも秩序でもない。

血に塗れ、笑いながら怪物を斬り裂く――海賊たちだった。

彼らの背中は、どんな正義の旗よりも眩しかった。


だから俺は決めた。

この世の“正義”なんて幻想だ。

目の前の絶望をぶっ壊せる者こそが、正義だ。


そして今――俺の前に立つのは、未来を背負うと言った男、アルティ・チュードだ。

だがな、俺の絶望はまだ終わっていない。


だから俺は――負けられねぇ。


「俺は……俺はッ!

テメェらみてぇな偽物の正義に! 家族を奪われた!」


血を吐きながら叫ぶのは、ヴァルドだ。


「だから俺が! 海賊という“悪”の立場で――正義を掲げる!!」


その瞬間、対峙していたアルティの表情が変わる。怒りでも嘲りでもない。静かで重い顔だ。


「……俺らTWCは、完全な正義だとは言いきれない」


低く、はっきりとした声。アルティは続ける。


「俺もだ。俺に完全な正義感があったなら――戦友は目を失わなかった」


一瞬、瞼が閉じられる。その過去が胸を締めつけるが、彼はすぐに前を向いた。


「だがな」


ヒビだらけの身体で一歩踏み出す。海底の圧が伝わるほど、声は真っ直ぐだ。


「この世の正義が“役”で決まるわけじゃねぇ。悪役かどうかなんて関係ない――」


ハンマーを握る手に、力が籠る。


「“今この瞬間に人を救える奴が正義だ”」


静かだが揺るがぬ言葉。怒りの正義と、責任の正義。二つの思想が、今まさにぶつかろうとしている。


次の一撃が放たれる前に――拳ではない、「信念」がぶつかるのだ。


そしてヴァルドはその言葉に、ふっと微笑んだ。


血に濡れ、視界はほとんど闇に沈んでいるというのに――

その笑みはどこか穏やかだった。


「お前は……偽物じゃなさそうだな」


静かな声だ。


それを聞いたアルティも、小さく口角を上げる。


「ああ。お前も悪くはねぇ」


ほんの一瞬、海底の戦場に不思議な静寂が生まれる。


怒りで始まった衝突の中に、確かに芽生えたものがあった。


立場も思想も違う。

歩んできた道も、背負っているものも違う。


それでも――


互いの覚悟を認めた者同士にだけ生まれる、微かな“戦友”の気配。


だが――だからこそ、止まれない。


ヴァルドは海賊として。

アルティはTWCの准特等兵として。


自分の信じた正義を、最後まで貫くために。


次の瞬間、同時に踏み込む。


迷いはない。


友情が芽生えたからこそ、互いを全力で叩き潰す――

それが、互いへの最大の敬意だった。


ヴァルド と アルティ――

限界に近づいているのは、身体だけではなかった。


激しくぶつかり合った代償は、武器にも刻まれている。

ヴァルドの骨棍棒は蜘蛛の巣のように亀裂が走り、振るうたびに嫌な軋みを響かせる。

アルティのハンマーも無傷ではない。表面は欠け、芯には深いヒビが入っている。


次の全力の一撃で――どちらの武器も砕けてもおかしくない。


武器が先に壊れるのか。

身体が先に折れるのか。


勝敗は、どちらかが“限界”に達した瞬間に決まる。


その事実を誰よりも冷静に理解しているのは、当事者の二人だけだった。


(このままじゃ武器がぶっ壊れる……その前に決着をつけねぇと)——アルティは息を整え、痛む骨を押さえて握力を振り絞る。


(俺の棍棒も壊れ始めてる……だが、それは相手も同じこと!)——暗闇の中でヴァルドは笑う。


(ならば――先に叩き潰した方が勝ちだ)


海底の水圧が軋み、二人は同時に構えた。

次で終わらせる。互いに同じ覚悟を持って。


砕けるのは武器か、あるいは――誇りか。


決着の一撃が、迫っていた。


だが次の瞬間――


ガクッ、と膝が崩れた。


(クソ……膝が……!)


軋んでいた骨が堪えきれず悲鳴をあげる。体勢を崩したその“一瞬”を、暗闇の中で戦っていたヴァルドは見逃さなかった。


「トドメだァァァァ!!」


折れかけた棍棒を全身で振り下ろす。水を裂く一撃が炸裂する。


「クソッ……うおぉぉぉ!!」


膝を抱えたまま、残された力を振り絞る。砕けかけたハンマーを正面で受け止め――


――ドォォォォオオオン!!


海底を揺るがす轟音。衝撃波が砂を巻き上げ、視界を真っ白に覆った。


静けさが戻り、砂煙がゆっくりと晴れると、そこに立っていた二つの影と、砕け散った武器の残骸だけが目に入った。


ヴァルドの棍棒は無残に折れ、中央から粉々に砕けている。

だがアルティの武器も無傷ではなかった。ハンマーの頭部は粉々に砕け落ち、手に残るのはひび割れた柄だけだった。


武器は――両者とも、既に限界を超えていた。


そして、先に崩れ落ちたのは――




ヴァルドだった。


膝が折れ、身体は前のめりに沈む。甲板の上で見守っていた海賊たちがどよめく。


深い静寂の後、アルティは折れた柄を握りしめたまま腕を天に掲げる。


「うおぉぉぉおおおお!!」


その叫びは誇示ではない。生き残った者が上げる、焼けつくような叫びだ。

戦いは終わった。しかし――二人の正義が交差した痕跡は、確かにそこに残っていた。


海底の別地点――


小型の獣を討ち倒した兵士たちも、決着の瞬間を目にしていた。


倒れたのは海賊の副頭目。立っているのは、アルティ・チュード。


一拍の静寂のあと――歓声が爆発する。


「うおおおお!!」

「流石だ! 准特等兵!!」


武器が一斉に掲げられる。銃も槍も剣も、水中で誇らしく揺れた。


砕けた武器を握ったまま立つその姿は、まさに象徴だった。


隣で弓を引く一等兵が、勝ち誇ったように肩を叩く。


「ほらな……必ず勝つって言っただろ?」


肩を叩かれた潮斗は、少しだけ息を吐いた。

潮斗は、限界まで戦った男へ敬意を示すように大剣を高く掲げる。


歓声の中心で、勝者はただ荒い呼吸を繰り返している。

その背中は傷だらけだ。それでも確かに――“今この瞬間に人を救った者”の背中だった。

海で、息をする。二十四話はどうでしたか?激アツな激闘を終えて勝ったのはアルティ!結構良い戦いだったと思います!もし面白いと思ったら感想と評価をいただけると励みになります!あとこの物語はまだまだ序章ですので、また見返せるようにブックマークの登録をお願いします!

次回は疲弊した戦場に新たな敵が?!そして現れる英雄!お楽しみに!

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