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第二十三話 執念と決意

海で、息をする。二十三話です!体調が優れなくて遅れてしまいすみません!今日からはちゃんと毎日投稿します!今回は海賊の幹部ヴァルドが執念を、TWCの准特等兵アルティが決意を力にして全力で戦います!

【前回のあらすじ】

掘削機の座標が外部から改ざんされていたことが判明し、拠点は何者かの罠にかかっていたと発覚する。さらに掘削機には位置ビーコンが仕込まれており、拠点の場所は敵に筒抜けだった。現れたのはラエナンジ海賊団。投下された鉄箱から小型レヴィアタンが解き放たれ、戦場は混乱に包まれる。そして副頭目ヴァルドが骨棍棒を手に降臨する。

「来いよ、TWCの犬」


その挑発と共に、ヴァルドの棍棒が振り下ろされた。


ブォンッ――

水が裂け、圧が襲う。


「くっ!」


アルティはその棍棒をハンマーの持ち手で受け止める。衝突の瞬間、足元の海底にヒビが走った。


「准特等!」


潮斗が叫び、隼人と共に駆け寄ろうとした瞬間――


「来るんじゃねぇ! お前らは雑魚共を片付けてろ!」


怒号が戦場を裂く。


「でも!」


潮斗がなおも踏み出そうとすると、


「これはタイマンだ! 邪魔すんじゃねぇ!」


アルティの声は鋼のように固かった。


隼人が潮斗の肩を掴む。


「潮斗、レヴィアタンの数が多い……先にそっちを片付けよう」


悔しさに歯を食いしばりながら、潮斗は振り返る。


「……ッ、わかった」


小型のレヴィアタンへと斬りかかる。その背を見送る二人を見下ろし、ヴァルドは低く笑った。


「部下を守ったつもりか? 結局、テメェを倒した後は皆殺しだ」


ケラケラと嗤う。


それを真正面から睨み返し、アルティはハンマーを持ち直す。


「なら――倒されなければイイだろ?」


骨棍棒と鉄槌が再び軋む。圧がぶつかり合う。タイマン。逃げ場はない。


そして、どちらも退かなかった。


ドォォオオン!!


轟音が海中を震わせ、アルティとヴァルドを中心に水流が渦を巻いた。


「ハハハ!」


ヴァルドは楽しげに笑いながら、片手で巨大な骨棍棒を振り回す。暴風のような連撃が繰り出され、間合いを支配して攻撃の隙を一切与えない――まるで相手を押し潰すことだけを目的にした力の嵐だ。


だが、それは“弱い相手”にしか通用しない戦法だった。


ヴァルドが次の一撃を叩き込もうと棍棒を高く持ち上げた──その瞬間、


「オラァ!!」


アルティが真っ直ぐに踏み込んだ。正面からの体当たり。衝撃で「うぐッ!」とヴァルドの巨体がわずかに浮き、数メートル先まで押し飛ばされる。


それでも倒れないヴァルドは、勢いを殺すように棍棒を海底へ突き刺した。だが、間髪入れずアルティのハンマーが唸りを上げる。


ドゴォン!!


腹部へ直撃。鈍い衝撃音と共に、ヴァルドの巨体が吹き飛び、海底を削りながら後退して岩壁へ叩きつけられる。岩が砕け、破片が舞い上がる。


一瞬の静寂のあと、砂煙の向こうでヴァルドがゆっくりと動き出す。血が水に滲み、低い笑い声が再び戦場に響いた。


岩屑を蹴散らしながら、ヴァルドが低く笑った。


「やるじゃねぇか……」


アルティの一撃を受け、唇の端から血を吐き捨てる。だが顔にはまだ余裕が残る。


「本気でぶっ壊す気だったのに……よく耐えてんな」


微かにニヤつきながら、アルティが一歩一歩詰める。水が軋む。互いに間合いを詰め、視線がぶつかる。


同時の動き。


ブォンッ!


刃が水を切るような音と共に振り抜かれ――


ドゴォォォオオン!!


鉄と骨が真正面から衝突する。衝撃波が同心円を描いて広がり、海底の砂が吹き飛ぶ。近くで戦っていた小型のレヴィアタンでさえ体勢を崩すほどの大衝撃だ。


拮抗する力。質量同士の押し合い。


二人は顔を歪めながらも笑う。


「楽しいなァ!」


「上等だ!」


火花のように砕ける骨片と金属の破片が水中へ舞う。互いの力を確かめ合うように押し合い、やがて同時に弾き飛ばされて距離が空く。


だが、静けさが戻る前に二人は既に踏み込み、次の一撃へ向かっていた。


「す、凄い迫力だ……」


遠方で戦っていた二等兵が、衝撃波に足を取られながら呆然と呟く。


「おい! そこの二等兵! レヴィアタンに食われるぞ!」


刀を構えた一等兵の怒声に、我に返った二等兵は慌てて小型の獣へ斬りかかる。


その光景を横目に、一等兵は再び中央の戦場へ視線を戻した。


「確かに、凄い迫力だ……流石、准特等兵ってとこか……」


視線の先では、ヴァルドが笑いながら連撃を繰り出している。骨棍棒が暴風のように唸り、海底を削り取る。


対するアルティは口元こそ笑っているが、サングラスの奥の目は笑っていない。


(クソッタレが……想像以上の力だ……)


衝撃を受け止めるたび、腕が軋む。


(パワー系の准特等兵の俺ですら、油断したら押されちまいそうだ……)


ヴァルドが棍棒を振り抜きながら愉快そうに言う。


「どうした? 顔が笑ってねぇぞ?」


その一言に一瞬、アルティの意識が揺れる。


――見抜かれたか。


だが次の瞬間、アルティは大きく口角を吊り上げた。


「退屈で笑みが消えちまっただけだ!」


強気な声でハンマーを構え直し、真正面から踏み込む。鉄と骨が再び激突するが、今回は――アルティの踏み込みが、ほんのわずか深かった。


「いいことを教えてやる……」


激突の合間、アルティは低く笑った。


「TWCでは准特等兵以上の階級から、特殊能力を持ったアロンダイトの使用が許可される……」


その言葉に、ヴァルドが鼻で笑う。


「だからなんだ? まだ力を隠してたって、俺には勝てねぇ」


アルティはハンマーを軽く掲げる。


「俺のハンマーには……光が宿ってる」


意味深な一言に、ヴァルドは反射的に腕を目の前へかざした。閃光を警戒する姿勢だ。


――だが。


「うぐっ!!」


鈍い衝撃が腹部へ叩き込まれる。横合いからの一撃。アルティは踏み込みと同時に、ハンマーの柄尻で無音の一撃を放っていた。


巨体が宙を舞い、地面へ叩きつけられる。ドォン――砂が巻き上がり、海中に低い悲鳴が漏れる。


「クソッタレがァ!! 汚ぇ真似しやがってェ!!」


ヴァルドの笑顔が消え、代わりに憤怒が浮かぶ。その怒りを見下ろすように、アルティは腹の底から笑った。


「ダハハハハ! TWC全員が正直者だとでも思ったか?!」


その笑みは作り物ではない。光と鉄を武器に、彼は本気で踏み込んでいる。


ハンマーを肩に担ぎ、ゆっくりと歩み寄るアルティ。水が静かに揺れ、周囲の空気が引き締まる。


「戦場で“まさか”って思った時点で負けだ、海賊」


だが、ヴァルドの怒気は収まらない。海底の圧が変わるほどの猛りが、今まさに爆ぜようとしていた。


「この! クソ野郎がァ!!」


怒号と共に、ヴァルドが海底を抉るように突進する。怒りで理性を焼き尽くしたかのような、一直線の踏み込みだ。


対するのは、アルティ。肩をわずかに揺らして笑みを浮かべる。


「もう一度言ってやろうか? 俺のハンマーには光が宿ってる」


余裕を纏った構えに、ヴァルドは鼻を鳴らして叫ぶ。


「そんなことに騙されるとでも思ったかよォ!!」


巨大な棍棒が一閃する――その瞬間、鈍い高音が水中に轟いた。


ヴァアン!


(なんだ……視界が真っ白に……)


閃光が炸裂し、目の前が白く塗り潰される。だが次の瞬間、脇腹に強烈な衝撃が叩き込まれた。


「ぐっはァ!! な、何ィ?!」


棍棒の軌道が掠め、巨体がよろめく。怒りの表情が、瞬時に困惑へと変わる。


アルティは距離を取りつつ、口角を上げてあざ笑う。


「お前! 意外と感情豊かだな!」


「クソ……クソクソクソ!! クソッタレがァ!!」


ヴァルドは再び突進する。しかし――


ヴァアン!


再び視界を押し潰す白。ハンマーが振り下ろされ、ドゴン!! 衝撃と閃光の連打が続く。


(な、なんだ?! 何が起こってる?!)


ヴァルドは理解できないまま狼狽する。目で追えないものが襲う。

【FBH・ミカレ】

(FBHはフラッシュバン ハンマーの略)

(ミカレはラテン語で閃光)

打撃と同時に高周波の閃光を放っていた。水中で拡散するその発光は瞬時に視界を遮り、単なる光ではなく神経に割り込むような効果を持っいる。


視覚を封じられ、動きが鈍るヴァルドに、アルティが踏み込む。


「戦場で怒った奴から負けるって、教わらなかったか?」


言い放つと同時に、ハンマーが再び唸る。怒りと困惑に揺れる巨体へ、容赦なく一撃が突き刺さった。


「ダハハハハ! どうした!!」


アルティの連撃が止まらない。


ヴァアン!

白。


ドゴォン!!

衝撃。


白。


ハンマーが振るわれるたび、高周波の閃光が炸裂する。視界を奪い、その一瞬の空白に打撃を叩き込む。


だが――


ヴァルドを前に立つその男は、微塵も怯まなかった。


【特注サングラス】

サングラスはUV400。高周波の光をほぼ100%遮断する特殊仕様だ。本来なら多用は自分の視神経を蝕む――だが彼はそれを装備で克服し、欠点を逆手にとって“武器”へと昇華させていた。


閃光の只中で、彼だけが見えている。


「ほらほら! さっきの勢いはどうしたァ!」


白に包まれて体勢を崩すヴァルド。

棍棒を振るう手が空を切り、間合いを詰められる。


その懐へ、アルティ・チュードが滑り込む。


「見えてねぇ相手に、どうやって勝つ?」


腹部、肩、顎。重い一撃が、正確に積み重なっていく。


巨体が膝を折りかける。怒り任せの突進は、もはや通じない。


水中の流れが変わり、戦場は今――完全にアルティの支配下にあった。


(クソ……何も出来ねぇ……完全に敗北……?

嫌だ……嫌だ!!)


ヴァルドの内側で、何かがはじけた。


その刹那ーー


アルティの笑みが、ふっと消える。


視界の端に映ったのは、棍棒を握るはずの腕。

一直線に、顔面へ迫ってきていた。


「クソ!」


アルティは咄嗟に頭を横へ逸らす。


ブォンッ!!


骨が水を裂く音がした。


直撃は避けられた。だが――


耳の一部が抉れ、血が水中へ広がる。熱が、鋭く広がった。視界が一瞬、揺れる。


「俺がァ……こんな形でェ……負ける?」


両目を見開くヴァルド。だがその瞳は、焦点を結んでいない。


いや――見ていないのだ。


「ふざけるな!!」


ヴァルドは視覚を捨てた。頼るは聴覚のみ。


水流の歪み。筋肉の収縮音。踏み込みの振動。音の帯を手繰り、敵を“読む”。


「コイツッ?!」


アルティが反射的に閃光を放つ。


ヴァアン!!


白が押し寄せる。


だが、ヴァルドは止まらない。視界が潰れようが、何も関係がない。音を頼りに、真正面へ突き進む。


ドゴォン!!


棍棒の横薙ぎが振るわれる。アルティはハンマーで受け止めるが、衝撃はこれまでとは質が違う。重く、迷いがない一撃だ。


怒りが、恐怖を焼き尽くしている。


閃光が効かない――視覚遮断という優位が、消え去ったのだ。


ヴァルドは低く、しかし明瞭に笑った。


「見えなくても……聞こえるんだよォ……」


水が震え、音が鋭く跳ね返る。

戦況はゆっくりと、また拮抗へと戻り始めていた。


(コイツ……完全に目を捨ててやがる……)


アルティ・チュードの背に、冷や汗が伝う。


(失明する恐怖も、叩き殺される恐怖も無い……

あるのは怒りだけ……!!)


怒りだけで前へ出る男——それがどれほど厄介か。TWCで十五年、生き残ってきた彼には痛いほど分かっていた。恐怖を捨てた人間は強い。理屈も損得もない。ただ前へ出るだけだ。


だが、アルティは呼吸を整える。


「フッ……だからなんだ?」


ハンマーを握り直す。

「目を捨てた? そんな奴、TWCにはいくらでもいるわ!」


脳裏に浮かぶのは、かつての戦友。任務中、自分を庇って両目を失った男。あいつには子供がいた——まだ小さく、これから成長する子供が。見たかったはずだ、笑顔も、背が伸びる姿も。胸の奥が熱くなり、それは怒りではなく決意となった。


「だから俺は……この武器を選んだ」


ハンマーが淡く光る。

「俺のせいで失明した戦友の……見たかった未来を全部背負って!!」


突進してくるヴァルド。怒号と共に振り上げられる棍棒。だがアルティは閃光に頼らない。退かず、真正面から踏み込む。


ドゴォォォン!!


骨と鉄が激突し、衝撃波が海底を裂く。視覚を捨てた怒りと、未来を背負う覚悟——真正面からぶつかり合う中で、アルティの目は今度こそ本気の笑みを浮かべていた。


戦場から少し離れた海賊船の甲板。


揺れる船体の上で、船員たちが固唾を呑んで戦いを見守っていた。


遠くから響く轟音。

海底を震わせる衝撃が、水を伝ってここまで届く。


「お、おい……俺達も行った方が良くないか?」


若い船員が不安げに呟く。視線の先では、ヴァルドが激しく打ち合っている。


「バカ野郎が!」


別の船員が怒鳴りつけた。


「ヴァルドさんを信じれねぇのか?!」


「す、すいません!」


思わず背筋を伸ばす若い船員。叱った男は腕を組み、戦場を睨んだまま低く続ける。


「ヴァルドさんを見てみろ……あれが、あの漢の戦いだ」


――ドゴォォン!!


再び轟音が響き、船体がわずかに揺れる。甲板に立つ者たちの足元が震えた。


「あれは、俺らが邪魔していいもんじゃねぇ……」


拳を握り締めながら、男は吐き出すように言う。


「ヴァルドさんの指示があるまで待ってろ」


甲板に重い沈黙が落ちる。


誰も動かない。

誰も目を逸らさない。


それぞれが信じている。


怒りを燃やして戦う頭領を。

そしてその向こうで、未来を背負って立つアルティ・チュードという男の覚悟を。


「おい! 俺達もアルティ准特等の援護を!」


潮斗が歯を食いしばる。

遠くで響く衝撃音が、水を震わせ、胸の奥までざわつかせる。


だが――


「駄目だ!」


弓を構えた一等兵が、潮斗の肩を強く掴んだ。


「俺達がアルティさんの援護に行ったって、足手まといなだけだ!」


「やってみなきゃわからないでしょう!」


潮斗の声が震える。怒りではない。焦りだ。


視線の先。

閃光と衝撃の中心で、アルティ・チュードがヴァルドと真正面から殴り合っている。


一等兵は視線を逸らさずに言った。


「……お前の気持ちもわかる!」


矢を番え、静かに続ける。


「でも、アルティさんを信じろ!」


弦がきしむ。


「あの人は無茶するけど――必ず笑って帰ってくる!」


その言葉に、潮斗は拳を握ったまま黙り込む。

再び、遠方で轟音が炸裂する。


数秒の沈黙のあと――


「……わかりました」


短く答え、潮斗は背を向けた。

小型のレヴィアタンへ駆け出す。


その背を見送りながら、一等兵は小さく息を吐く。


そして、誰にも届かない声で呟いた。


「無理矢理な約束ですけど……守ってくださいよ、アルティさん……」


矢が放たれる。


戦場は、まだ終わらない。


それでも信じている。


あの准特等兵は――必ず、笑って帰ってくると。

海で、息をする。二十三話はどうでしたか?もし面白いと思ったら感想と評価をいただけると励みになります!このシリーズもまだまだ序章ですので、いつでも読み返せるようにブラックマークの登録もお願いします!

次回はアルティとヴァルドの戦いに決着がつきます!

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