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第二十話 第二波

海で、息をする。二十話です!今回はレヴィアタンと海賊を倒し、山岳地帯へ踏み入ります!

【前回のあらすじ】

山岳地帯へ行く道の途中に突如現れたレヴィアタンを倒した潮斗達は更に奥へ進んだ、すると爆発音と共に更にレヴィアタンが現れる。そしてレヴィアタンとの戦闘中に更に海賊が現れた、そんな中で潮斗はレヴィアタンと戦い、隼人は海賊と戦っていた。

「入った!」


潮斗の大剣が、正確に装甲の割れ目へ叩き込まれる。硬質な鱗が軋み、岩のような外殻に亀裂が走った。砕けた破片が飛び散り、その奥に赤黒い肉が覗く。確かな手応えが腕に伝わる。


「あとここを集中的に…」


勝機が見えた瞬間、空気が震える。レヴィアタンが甲高い咆哮を上げ、筋肉が膨れ上がると四肢が異様な速度で伸びた。


「――っ!」


振り払うような一撃が襲い、潮斗は咄嗟に体勢を崩す。


「うっ!」


横薙ぎの衝撃に身体が弾き飛ばされ、鈍い痛みが骨まで響く。視界が白く回転し、次の瞬間には崖に叩きつけられていた。大剣が手から滑り落ち、岩肌を転がる。砂煙の向こう、怒りに濁った瞳がゆっくりと潮斗を捉え直す。


霞む視界の奥で、巨体が再びこちらへ向かって来るのが見えた。潮斗は歯を食いしばり、転がった大剣に手を伸ばす。指先が柄に触れる――その瞬間、巨大な腕がゆっくりと持ち上がった。潰すための一撃だ。間に合わない。恐怖が胸を締め上げる。


ガギィィイイン!


振り下ろされた腕が、突然どこかに弾かれた。衝撃波が砂を巻き上げ、耳がキーンと鳴る。


「潮斗!ヒデェ面してんな!」


聞き慣れた声が飛び込んだ。盾を構えた隼人が真正面から一撃を受け止め、押し返している。盾が軋み、隼人の足元が沈むが、なお耐えている。


「立て!」


短い号令。隼人は潮斗の腕を掴み、力任せに引き上げる。


「お前……海賊は?」


潮斗は呼吸を整えようとしながら問いかけた。


「友人が困ってるならそっちに行くだろ?」


即答が返る。潮斗は苦笑を漏らし、眉の端で鼻先を鳴らした。


「フッ…そうかよ」


痛みで震える腕を押さえつつ、大剣を握り直す。背中の痛み、腕の痺れ、全身に張り付く血と砂。それでも踏みとどまれるのは、ここに立つ理由があるからだ。


隼人が盾を打ち鳴らす。金属音が短く谷に響き渡る。


「よしゃ!行くぞ!」


「ああ!行くぞ!」


二人は並んで構えた。崖を背に、巨体を正面に見据える。互いの呼吸が同期するのを感じ取り、次の瞬間、ふたりは同時に地面を蹴った。砂が舞い、谷の空気が裂ける。大剣と盾――それがぶつかる音は、この場のすべてを告げるように鋭かった。


「ギャァアアオオオ!」


怒号のような咆哮が谷を裂き、レヴィアタンが再び大きく腕を振り上げた。巨体が影となって覆いかぶさり、地面は震え、砂が舞う。


だが――その一撃を、隼人が真正面から受け止めた。盾が鈍く軋み、火花が散る。衝撃が腕から肩へと跳ね返るが、隼人は足を踏みしめて踏みとどまる。顔は血と土で汚れているが、声は途切れない。


「潮斗!」


その一瞬の隙を逃さず、潮斗が踏み込む。大剣が唸りを上げ、刃先がレヴィアタンの胴を引き裂く。硬い鱗に刃が弾かれる嫌な手応えが腕に伝わるが、完全防御ではない。確かに、ヒビが走っている。


「隼人!」


「おう!」


振り下ろされる腕を、隼人が盾で弾く。衝撃の反動を利用して相手の体勢を狂わせると、潮斗はためらわずにその割れ目めがけて刃を叩き込む。斬撃が連続するたび、鱗は砕け、血しぶきが飛び散った。


一撃、二撃、三撃——鱗が砕け散る音が、戦場の中で高く響く。レヴィアタンは暴れ反撃を重ねるが、二人の動きは噛み合っている。隼人の盾が攻撃を受け止め、潮斗の刃が正確に切り裂く。攻撃が来るたびに隼人が止めを作り、潮斗が決める。その呼吸はぴたりと合い、視線を交わさずとも互いの次を読めている。


少しずつ、巨体の動きは鈍くなった。怒りに任せた反撃は空を切り、確実に削られていく。気づけば、レヴィアタンは為す術なく反撃を繰り返すだけの存在と化していた。二重戦線の混乱の中で、今この瞬間だけは潮斗と隼人が主導権を握っている。


斬り結ぶ最中、潮斗の脳裏にふと別の光景が蘇った。――傷口は一つじゃない。自分が刻んだ胴の割れ目ばかりを見ていたが、弓を持った一等兵が撃ち抜いた脳天の傷がある。そこに大剣を叩き込めば、終わる。


(俺としたことが……視野が狭くなってたな)


わずかな自己嫌悪が過ぎると同時に、潮斗は決断を口にした。


「隼人!アレやるぞ!」


「おう!いや、アレってなんだ?!」


戸惑う隼人の声。しかし潮斗の動きを見て、すぐに理解が走る。


「あぁ!アレだな!」


説明はいらない。隼人は地面を固く踏み締め、盾を潮斗に向けて構える。レヴィアタンの腕が再び迫る。二人の呼吸がぴたりと合い、間合いが詰まる。


潮斗が盾へと踏み込む。合図と同時に、隼人が全身の力を込めて盾を垂直に跳ね上げた。盾は跳躍台となり、潮斗の身体が空へと打ち上がる。


「うぉぉぉおおお!」


谷の空気を切り裂き、潮斗は一直線に巨体へと突進する。レヴィアタンの腕が掴み取ろうと伸びるが、潮斗は空中で身をひねり、その一撃をかわす。腕の上に着地し、そのまま駆け上がる。巨体の表面を走る足取りは一瞬の躊躇もなく、目指すは脳天の傷口だ。


空中で大剣を振りかぶり、渾身の力を込めて突き刺す。刃が深く、深くめり込む瞬間、谷に響くような破砕音とともに、レヴィアタンの断末が轟いた。


「ギャァアアアアアオオオオ!!」


最後の咆哮が大地を震わせ、巨体が激しく痙攣して足を崩す。潮斗は刃を握ったまま飛び退き、地面に転がる。砂煙が舞い上がり、静寂が一瞬訪れる。


次の瞬間、大地を揺らしながらレヴィアタンの巨体が崩れ落ちた。砂埃がゆっくりと晴れる中、二人の影が並んで立っている。息を切らし、傷と泥にまみれながらも、互いの存在を確認するように、小さな達成の間を共有していた。


崩れ落ちた巨体の前で、砂煙がゆっくりと晴れていく。


「潮斗!」


隼人が笑いながら手を差し出す。


「隼人!」


潮斗はその手を力強く叩いた。乾いた音が谷に響く。指先がじんと痺れるが、それが生きている証のように思えた。


いつの間にか銃声は止み、あたりには倒れ伏した海賊たちの姿だけが残っている。生き残った者たちは武器も仲間も置き去りにして、山道の奥へと逃走していた。


「あのレヴィアタンは片付いたみたいだな!」


准特等兵のアルティ・チュードが、気を失っている海賊の胸ぐらを掴みながら歩み寄ってくる。乱暴に引きずられた海賊の装備が地面を擦る。


「はい!ですが負傷者が…」


潮斗の視線は、先ほど自分を庇って撃たれた一等兵へ向けられる。だが、そこにはすでに応急処置を受け、止血を終えた姿があった。包帯は赤く滲んでいるものの、呼吸は安定している。周囲では衛生兵が的確に指示を飛ばしていた。


それを見た瞬間、潮斗の肩から力が抜ける。ほっと、胸の奥が温かくなった。


「よし!障害物は一旦消えた!休んでないで出発だ!」


アルティは胸ぐらを掴んでいた海賊を無造作に放り投げ、そのまま装甲車へ乗り込む。エンジン音が再び谷に響き始める。


戦場の匂いがまだ残る中、隊列は再編されていく。

この戦いで負傷者は出た。だが――死者は一人もいなかった。

それが、最後の死者のいない護衛任務だった。


「痛っ……」


崖に叩きつけられた時の鈍い痛みが、遅れて背中を走る。揺れる装甲車の座席に身を預けながら、潮斗は顔をしかめた。


「大丈夫かよ」


隣に座る隼人が、どこか楽しそうに笑いながら言う。


「何笑ってんだよ…」


そう返す頃には、車列はすでに山岳地帯へと入っていた。窓の外には切り立った岩肌が続き、細い道が蛇のようにうねっている。目的地まではあと数十分。


(このまま平和に進めればいいが…)


誰もが心のどこかでそう願った、その瞬間だった。


――ドォンッ!!


山の上で爆発が起き、轟音が谷を揺らす。次の瞬間、無数の岩が崩れ落ち、雨のように降り注いだ。


「衝撃に備えろ!」


アルティ准特等兵の怒号が無線越しに響く。装甲車が激しく揺れ、岩が装甲を叩く重い音が連続する。内部の空気が震え、砂埃が舞う。


だが幸い、厚い装甲が衝撃を受け止めた。やがて落石は止み、エンジン音だけが残る。


しかし――前方の道は、大きな岩で完全に塞がれていた。


「クソッタレが……」


アルティ准特等兵が舌打ちしながら装甲車を降りる。巨大な岩の前まで歩み寄ると、振り返って叫んだ。


「離れてろ!」


彼の手に現れたのは、使い込まれて無骨な形状へと変わった巨大なハンマー――アロンダイト。


両手で柄を握り、地面を踏みしめる。


「ぶっ壊す(ハルト・ジェトロッペン)!!」


ハンマーが大きく振り下ろされる。空気を裂く轟音とともに、衝撃波が周囲へ広がった。


次の瞬間、巨大な岩が内側から爆ぜるように粉砕される。破片が弾け飛び、小さな石が雨のように降り注ぐ。


コツ、コツ、と装甲車の上を叩く軽い音が響く中、道は再び開かれた。


「よぉし!じゃあ出発だ……」


アルティ・チュードが叫ぶと、砕けた岩の粉塵がゆっくりと晴れていった――その先に、低く唸るエンジン音が近づいてくる。


煙の壁を突き破るように、何台もの海賊の車両が姿を現した。乱雑に改造された装甲車、剥き出しの銃座、車体に刻まれた荒々しい紋章が並ぶ。急停止、ドアが乱暴に開き、武装した連中がわらわらと降りてくるその様は、まるで群れの襲来のようだった。


「……ッ!! 邪魔だァァ!退けえェェ!」


アルティの声が山間に響く。額の血管が浮き、ハンマーを握る手に力がこもる。彼は一歩を踏み出し、砲弾のように群れめがけて突進した。


「ぶっ壊すッ!」


ハンマーが振られると、装甲車の一台が横に吹き飛び、宙に舞い上がって地面へ叩きつけられて爆ぜる。火花と煙があがり、衝撃が周囲を震わせた。


「テメェらもコイツらをぶっ壊せ!」


アルティの怒号が合図となり、護衛の戦闘員たちは一斉に車から降りる。安全装置を外す音、刃を抜く音、銃を構える音が続々と重なる。空気は一瞬で戦闘の色に染まった。


潮斗は大剣を担ぎ、隼人は盾と剣を構える。二人並んで立つと、さっきまでの静けさは完全に消え、山岳地帯は再び戦場へと変わった。

海で、息をする。二十話はどうでしたか?突如現れたレヴィアタンを潮斗と隼人のコンビネーションで圧倒し、お互いを信頼し合っていることが改めてわかりましたね。そして海賊も倒されて、更に進みやっと山岳地帯に入ったのに……更に海賊。次回はこの長期任務で初めての犠牲者が出ます!

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