第十八話 山影
海で、息をする。十八話です!今回は主人公の親友である隼人と一緒に長期的な任務へ出発します!
【前回のあらすじ】
ラースと共にSクラスの討伐に成功した潮斗は周りから実力を認められた。そして潮斗は上官に呼び出され、本部へ行くと同じ学校を卒業した親友である隼人と再開する。その後、潮斗とラースはそれぞれ昇格し、ラースは准特等兵、潮斗は准一等兵に昇格した。
「二度だ! 二度もだ!」と会議室に怒号が鳴り響いた。
「二度も比較的平和な地域にSクラスが現れた! これはもう異常事態以外の何でもない!」と声を張り上げているのは、TWC管理委員会の幹部だった。
「まぁまぁ…落ち着けって、こういう時こそ冷静に考えないと」
幹部をなだめたのは、ケイだった。
「冷静? 冷静だって?! こんな状況で冷静でいられるか! 大きな被害が無かったのが唯一の救いだ!」
幹部は怒鳴り続ける。
大きな机を囲むように座っていたのは十人の顔ぶれ──
円卓の騎士一位アーサー、二位ランスロット、三位ガウェイン、四位ケイ、五位パーシヴァル、六位ベディヴィエール、八位ガレス、十一位アグラヴェイン、十二位エイレン――それぞれが違う表情を浮かべていた。
ケイが切り出すと、アグラヴェインに向かって
「そういえば、アグラヴェイン…お前、前のSクラスが現れた時から色々と調べてくれてたんだろ? その結果を教えてくれよ」
と促した。アグラヴェインは冷静沈着に資料をめくり、答える。
「えぇ…その結果ですが…おそらく海賊の環境破壊が原因かと。」
一瞬、室内がざわつく。ランスロットが顎を擦りながら疑問を呈した。
「海賊? 海賊なんかがどうしたんだ? 環境破壊はいつもの事だろう?」
アグラヴェインは静かに首を振る。
「えぇ、いつもなら…です。明らかに活動が活発になっている他、環境への被害も拡大しています。」
ベディヴィエールが重々しく呟く。
「急に海賊が活発化……裏がありそうだね」
一方、パーシヴァルは面倒くさそうに肩をすくめる。
「はぁ…次は海賊にも気を配れってか? 面倒でしかない……」
その時、ベディヴィエールの視線が一人に向き、雰囲気が少し重くなる。
「そういえばアンタ……仕事はちゃんとしてるのかい? 前回の会議以来見てないけど……」
ガレスが間に入り、軽くフォローする。
「パーシヴァルさんは自分なりにやってましたよ……一応は…」
パーシヴァルはふと笑い、ちょっと素っ気なく言った。
「ありがとうガレス、後で飲み物奢ってやる」
だがガレスは呆れ混じりに冷たく返す。
「要らないです……」
会議室には再び緊張とわずかな苛立ちが混ざり合った。外で何が起きているのか──それを巡る問いは、すでにTWCの全員に向けられていた。
「それで…話を戻すが、本当に海賊の仕業なのか? 環境破壊のせいでレヴィアタンが活発化するのはよくあったが…今回は異常だ」
いつもの明るい皮肉屋の顔を消したケイが真面目な調子で言った。
「確かにそうだ。本来ならいないはずのレヴィアタンが現れるほどの環境破壊はあまり無かった。それに何で急に海賊が活発になったのかも気になる」
顎を擦りながらランスロットが続ける。
「“裏”がある、としか思えない状況です……ですが、海賊が原因とわかった以上、研究部の仕事ではありません」
冷静沈着に資料をめくっていたアグラヴェインはぴしゃりと言った。
「なら、誰の仕事なんだ?」
問い返すケイに、しばらく口を開かなかったアーサーが静かに答える。
「それは…皆のだよ。TWC全部の仕事だ。誰がなんであろうと関係ない」
その言葉には、明るさと揺るがぬ決意が混じっていた。ランスロットはその返答に軽く「フッ」と鼻で笑い、室内の緊張を少しだけほぐす。
「これからはレヴィアタンだけじゃなくて海賊にも気を配る。各自、気を引き締めてくれ」
アーサーが締めると、円卓の騎士たちはそれぞれ頷きや短い返事を返した。
会議が終わり、席を立つ者たちが部屋を出ていく。廊下に差し込む光がちらつく中、アーサーはそっとガウェインの肩を叩いた。
「君は海賊の動きを見張っててくれ」
隠密を得意とするガウェインは、小さくうなずく。
「了解しました…」
そう言うと、ガウェインは廊下の奥へと消えていった。残された空間に、これから始まる手配と緊張の余韻が静かに残った。
二人は装備を整え、護送車が待機しているTWC本部内の地下駐車場へ向かった。広い空間には重厚な装甲を施された護送車が数台並び、大型の掘削機材や鉱石を扱うトラックが所狭しと停まっている。作業員たちが忙しなく動く音が低く響き、兵站の“厚さ”がこの任務の重要さを語っていた。
「今回の任務、数日かかるらしいぞ」
端末を覗き込んだ隼人が言うと、潮斗は並べられた物資に目を走らせて小さく息を吐いた。北方の山岳地帯での採掘班護衛、そして採取した希少鉱石を積んだ護送車の護衛──代替の利かない鉱物を守る仕事だ。狙われれば致命的になる。
やがて足並みを揃えた兵士たちがぞろぞろと集まり、最終的に十一名が整列する。准特等兵一名、一等兵四名、准一等兵一名、二等兵五名。潮斗と隼人もその列に加わる。
「思ったより大所帯だな」
「それだけ重要ってことだろ」
前に出たのは、年若くも目に迷いのない准特等兵、アルティ・チュードだった。
「今回の任務は長期戦になる可能性がある。谷は視界が悪く、奇襲に最適だ。各自、警戒を怠るな」
その言葉に場の空気がぐっと引き締まる。潮斗は無意識に、隼人からもらった腕時計を握り締めた。
「無事に帰るぞ」
「当たり前だろ」
二人は軽く拳を合わせ、エンジン音が響き始める。
アトランティスを出て一時間ほど。護送車の窓外に北の山岳地帯がはっきりと姿を現した。切り立つ岩肌と絡み合う谷が、まるで牙をむいた獣の背のように連なる。幸いここまでは何事もなく進んできた――そう、ここまでは。
不意に無線が切り裂くように開いた。
『山岳地帯には近くの旧主要都市から流れ出た高クラスのレヴィアタンが出やすい! 他にも鉱石を狙った海賊がうじゃうじゃ湧いて出る! 気を引くな!』
低く太い警告が装甲越しにも腹に響く。声の主の顔が思い浮かぶ。スキンヘッドにサングラス、褐色の肌と隆々たる筋肉──まさに戦場のような風貌だ。
車内の空気が変わった。隼人の口数も自然と減る。廃墟となった旧都市から流れ出る高クラス群、鉱石を狙う海賊、狭い谷――条件は最悪に近い。通信のノイズが少しずつ増し、谷が車列をゆっくりと飲み込んでいく。
「なんか……空気重くね?」
小声の隼人。潮斗は前方を見据え、答えは短く返す。
「最初からこうあるべきなんだよ」
その瞬間、先頭車両のブレーキランプが赤く灯った。――何かが、前方にいる。
海で、息をする。十八話はどうでしたか?会議での不穏な雰囲気、運命的に一緒の任務先になった潮斗と隼人、そして長期の仕事。もし面白いと思ったら感想と評価をいただけると励みになります!次回は山岳地帯に着く直前にトラブル発生!って感じです!お楽しみに




