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婚約は破棄されましたが、私は静かに身を引いただけです  作者: リリア・ノワール
第2部 並んだまま遠くへ

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第32話 庭に集う人たち

新興地域の小規模代表が、

屋敷を訪れたのは、曇り空の午後だった。


正式な使者ではない。


中央を通していない。


あくまで、個人的な来訪。


応接室ではなく、

私は庭に席を用意した。


整いすぎない場所のほうが、

言葉は出やすい。


足音が増える。


一つ。

二つ。

三つ。


その少し後ろに、

もう一つ。


並ぶ音。


「お時間をいただき、感謝いたします」


若い代表は頭を下げる。


表情は固いが、

敵意はない。


「困難があると聞きました」


私は言う。


「はい」


彼は憲章の運用状況を説明する。


処理は速くなった。

責任は明確になった。


だが――


「余裕がありません」


その一言に、私は目を上げる。


「判断が速すぎて、

 現場が追いつきません」


私は何も書き留めない。


ただ聞く。


隣に立つ彼も、何も言わない。


やがて、別の足音が近づく。


整った歩幅。

無駄のない動き。


セオドアだった。


「非公式と聞きましたが」


静かな声。


「非公式です」


私は答える。


彼は庭を見渡す。


中央の机ではなく、

芝生の上。


憲章の外側。


「合理は、機能しています」


彼が言う。


「ですが、速度が一定すぎる」


若い代表が頷く。


私は視線を交わさない。


答えを出さない。


セオドアは少しだけ考え、

口を開く。


「段階適用に変更します」


即断ではない。


調整だ。


「規模に応じた速度差を認める」


庭に風が通る。


私は小さく息を吐く。


「それで十分かと」


私は言う。


具体策は出さない。


選ぶのは、中央だ。


セオドアは私を見る。


「あなたが中にいれば、早い」


私は首を横に振る。


「外にいるから、見えることもあります」


彼は否定しない。


若い代表の表情が、

わずかに緩む。


夜、庭に残る。


足音が一つ。

そして、もう一つ。


「戻らなくてよかったのですか」


彼が問う。


「はい」


私は答える。


中央の椅子ではなく、

庭の椅子。


決定者ではなく、

聞く人。


それで足りる。


「世界がどう動いても」


彼が静かに言う。


「私はあなたの隣にいます」


私は微笑む。


合理は進む。

余白も残る。


整いすぎない世界は、

少しだけ呼吸を取り戻す。


私は中心に立たない。


けれど、

外側から重心を見ている。


整わないまま、

動き続ける。


それが、

今の私の立ち方だった。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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