第28話 統合の打診
合理が中央で採択されてから、数日後。
屋敷に一通の正式文書が届いた。
王都の紋章。
私は応接室で封を開く。
文面は丁寧だった。
新体制の統合顧問として、
名誉職を設ける。
各地の過渡期を支えた人物として、
象徴的な立場を――
私は最後まで読み、
静かに封を閉じる。
名を外したはずの場所から、
再び、名を求められる。
午後、庭に出る。
足音が一つ。
そして、もう一つ。
「戻されましたか」
彼が言う。
「ええ」
私は頷く。
「統合顧問という立場を用意すると」
彼は少し考える。
「引き受けますか」
私は空を見上げる。
名誉職。
責任は重くない。
決定権も限定的。
象徴として立つだけ。
以前の私なら、
受けただろうか。
分からない。
夜、書斎で文書を読み返す。
役割は軽い。
だが、
立場は戻る。
私は問い直す。
私は、もう一度、
象徴になるのか。
それとも、
完全に手放すのか。
翌朝、庭に立つ。
足音が重なる。
「迷っていますか」
彼が静かに問う。
私は少し考える。
「少しだけ」
役割は軽い。
けれど、
立てば重心は戻る。
彼は歩調を変えない。
「あなたが何を選んでも、
私は隣に立ちます」
私は目を細める。
それは答えではない。
けれど、
支えでもない。
ただの事実。
午後、私は返書を書く。
『ご厚意に感謝いたします。
しかし、統合は内部で完結すべきと考えます。
私は関与いたしません』
短い文。
名を戻さない。
夜、庭を歩く。
足音が重なる。
「断りました」
私は言う。
彼は小さく頷く。
「理由は」
「選ばれない立場を、
選び続けたいからです」
象徴は不要。
私は役割で立たない。
並びは、
肩書きに依存しない。
整わないまま、
動き続ける。
統合は進む。
合理も、余白も、
共存していく。
私は中央に立たない。
それでも、
隣に立つ。
それが、
今の私の選び方だった。
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