第27話 正しさのかたち
中央からの最初の正式報告が届いたのは、
何者でもない日から数日後のことだった。
封は厚く、
文面は整っている。
私はゆっくりと目を通す。
中央評議会は、
新たな統一基準を策定した。
効率化。
迅速な決定。
再現性のある制度。
その中心に、
セオドア・ヴェルクの名がある。
私は文書を閉じる。
彼の方法が、
選ばれた。
午後、庭に出る。
足音が一つ。
そして、もう一つ。
「決まりましたか」
彼が言う。
「ええ」
私は頷く。
「合理が採用されました」
彼は少し考える。
「どう感じますか」
私は空を見上げる。
「正しいと思います」
それは本心だった。
急がないことも正しい。
急ぐことも正しい。
内部で育てることも正しい。
制度で整えることも正しい。
私は、
唯一ではない。
夕方、中央から短い便りが届く。
リナからだ。
『効率化は進みました。
けれど、余白は残しています』
私は小さく笑う。
余白。
それは、
完全には消えない。
夜、書斎で記録を書く。
「合理採択」
「多様化確立」
短い一文。
私は思う。
私の方法が、
唯一の正解ではない。
セオドアの方法も、
また正しい。
世界は、
一つの重心だけで動かない。
翌朝、庭に立つ。
足音が重なる。
「あなたのやり方は古くなりましたか」
彼が静かに問う。
私は少し考える。
「いいえ」
古くも、新しくもない。
ただ、
私が選んだだけ。
「正しさは一つではありません」
私は言う。
彼は穏やかに頷く。
「それでも、私は隣を選びます」
私は目を細める。
前に出る人がいても、
別の方法が選ばれても。
私は変わらない。
整わないまま、
動き続ける。
正しさは、
複数ある。
私は、
その一つを選び続ける。
それが、
今の私の立ち方だった。
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