第25話 中央へ向かう人たち
王都から戻ったあとの屋敷は、
以前より少しだけ賑やかだった。
報せが増えたわけではない。
人の出入りが増えた。
港町のリナ。
南の町の代表。
新興地域の若い補佐官。
今度は彼らが、
王都へ招かれている。
私は応接室で、
その報告を受ける。
「正式に中央会議へ参加します」
リナは落ち着いた声で言う。
以前のような緊張はない。
「おめでとうございます」
私は答える。
「助言は?」
彼女は一瞬だけ迷う。
「必要ですか」
私は問い返す。
彼女は小さく笑う。
「いえ」
それで十分だった。
午後、庭に出る。
足音が一つ。
そして、もう一つ。
「時代が移りましたね」
彼が言う。
「ええ」
私は頷く。
中央へ向かうのは、
私ではない。
次の世代だ。
夕方、マリエラからも便りが届く。
『広報部門の代表として参加します』
彼女の筆跡は、
力強い。
私は封を閉じる。
胸の奥に、
小さな温かさが広がる。
寂しさではない。
誇りでもない。
ただ、
自然な流れ。
夜、庭を歩く。
足音が重なる。
「招かれませんでした」
私は言う。
「当然です」
彼は穏やかだ。
「どう感じますか」
私は少し考える。
「静かです」
役割は、
完全に移った。
私は中央に属していない。
必要でもない。
それでも、
隣は変わらない。
翌朝、リナたちが出立する。
私は門の内側で見送る。
「急がないでください」
それだけ伝える。
助言は少ない。
選ぶのは、彼女たちだ。
門が閉じる。
庭に戻る。
足音は一つ。
少し遅れて、もう一つ。
「あなたは行かなくてよかったのですか」
彼が静かに問う。
私は微笑む。
「はい」
私は行く立場ではない。
行かない立場でもない。
ただ、
選ばなかっただけ。
夜、机に向かう。
今日の記録を書く。
「中央参加、次世代へ移行」
短い一文。
私は気づく。
私の物語は、
中央へ向かわない。
並ぶことが、
中心だから。
整わないまま、
動き続ける。
それが、
今の私の選び方だった。
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