第24話 選び続ける人
王都から戻る日が決まった。
便りは簡潔だった。
『数日後に帰ります』
それだけ。
私は庭に出る。
足音は一つ。
並びが戻るまで、
小径は静かだ。
午後、王都から最後の報告が届く。
彼の提案が正式に採択された。
評議会は新しい枠組みへ移行するという。
私は封を閉じる。
胸の奥にあった空席が、
少しだけ落ち着く。
夕方、門が開く音がする。
馬車が止まり、
足音が近づく。
庭に立つ。
音が一つ、
そしてもう一つ。
並ぶ。
「お帰りなさい」
「ただいま戻りました」
しばらく、何も言わない。
風が葉を揺らす。
「前に立たれましたね」
私は言う。
「立たされました」
彼は穏やかだ。
「どうでしたか」
「あなたが言っていた通りでした」
「整えすぎないようにしました」
私は小さく笑う。
夜、庭を歩く。
足音が重なる。
「呼ばれなかったことを、
どう思われましたか」
彼が静かに問う。
私は少し考える。
「静かでした」
それが正直な答えだ。
彼は立ち止まる。
「あなたが何者でなくても」
短く言う。
「私は隣を選びます」
宣言ではない。
確認でもない。
ただの事実のように。
私は視線を上げる。
「役割がなくても?」
「はい」
「呼ばれなくても?」
「はい」
風が静かに通り抜ける。
私は気づく。
私は呼ばれる立場ではない。
基準でも、象徴でもない。
けれど、
彼は選ぶ。
私は選ぶ。
並ぶことは、
役割ではない。
必要だからでもない。
選び続けること。
夜、書斎で記録を書く。
「王都帰還」
「並び確認」
短い文。
私は灯りを落とす。
前に立つ人がいても、
後ろに立つ人がいても。
並びは崩れない。
整わないまま、
動き続ける。
それが、
今の私たちの形だった。
本話もお読みいただき、ありがとうございました!
少しでも続きが気になる、と感じていただけましたら、
ブックマーク や 評価 をお願いします。
応援が励みになります!
これからもどうぞよろしくお願いします!




