第23話 静かな空席
王都からの便りは、定期的に届いた。
評議会は延長され、
新しい提案が採択され、
彼の名が何度も記されている。
私はそれを読み、
机の端に置く。
誇らしさはある。
同時に、
小さな空席が胸に広がる。
午前、書斎で文書を整える。
外部からの相談はない。
港町も、
南の町も、
新興地域も。
すべて、問題なく進んでいる。
私は静かな部屋に座る。
役割はない。
判断もない。
急ぎもない。
午後、庭に出る。
足音は一つ。
小径は変わらない。
けれど、
並ぶ音がない。
私は立ち止まる。
並びとは、
同じ場所にいることではなかった。
それでも、
音が重ならない庭は、
少し広い。
夕方、王都から追加の報せが届く。
彼が議長席に招かれたと。
私は封を閉じる。
胸の奥が、
わずかに静まる。
嫉妬ではない。
焦りでもない。
ただ、
世界が彼を前に出している。
夜、机に向かい、
短い記録を書く。
「王都高評価」
「不在継続」
一行で十分だ。
窓の外に夜風が入る。
私は思う。
私はもう、
呼ばれない。
必要とされない。
けれど、
それは敗北ではない。
私は選ばれなくても、
選んでいる。
翌朝、庭に立つ。
足音は一つ。
それでも、
孤独ではない。
彼が前に立つことを、
私は望んでいる。
並ぶということは、
同時に立つことではない。
信頼して、
離れること。
整わないまま、
動き続ける。
空席は、
欠落ではない。
役割が移っただけ。
私は静かに歩き出す。
音は一つ。
それでも、
並びは消えていない。
それが、
今の私の選び方だった。
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