第22話 選ばれる立場
王都へ向かう朝は、静かだった。
門の前に馬車が用意される。
見送りは大げさではない。
「行ってまいります」
「ええ」
それだけ。
以前なら、
私は同行していただろう。
補佐として、
助言者として、
あるいは“並び”として。
今回は違う。
招かれたのは、
彼だけだ。
馬車が遠ざかる。
私は振り返らない。
庭に戻る。
足音は一つ。
小径は変わらない。
木々の影も同じだ。
けれど、
重なるはずの音がない。
午前、書斎に向かう。
机の上は静かだ。
港町も、
南の町も、
問題なく進んでいる。
私は文書を整える。
役割はない。
急ぐ用事もない。
午後、王都からの速報が届く。
評議会は盛況。
彼の提案が高く評価されたという。
私は文面を読み、
封を閉じる。
胸の奥に、
小さな揺れが生まれる。
誇らしい。
同時に、
静かだ。
夕方、庭に出る。
足音は一つ。
風が葉を揺らす。
私は思う。
彼が前に出ることを、
私は望んでいた。
並ぶとは、
交互に立つことではない。
それぞれが、
必要な位置に立つこと。
夜、短い便りが届く。
彼からだ。
『順調です。
こちらも整えすぎないようにしています』
私は小さく笑う。
整えすぎない。
その言葉が、
王都でも使われている。
私は返事を書く。
『急がないでください』
それだけ。
翌朝、
庭に立つ。
足音は一つ。
けれど、
孤独ではない。
彼が前に出ても、
私は後ろに下がったわけではない。
並びは、
距離で決まらない。
選び続けること。
それだけだ。
王都で評価される彼。
屋敷で静かに立つ私。
役割はずれた。
けれど、
関係はずれていない。
私は気づく。
選ばれる立場は、
揺れる。
だが、
選ぶ立場は揺れない。
整わないまま、
動き続ける。
それが、
今の私の立ち方だった。
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