表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
婚約は破棄されましたが、私は静かに身を引いただけです  作者: リリア・ノワール


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

60/62

第60話 今の形

その問いは、

少し遅れてやってきた。


急ぐ必要がなくなった頃、

人はようやく

形を気にし始める。


午後、

外の用件を終えたあと、

廊下で声をかけられた。


「……差し支えなければ」


言葉を選ぶ調子。


「今後の体制について、

 何か決まっていることは

 ありますか」


仕事の話のようで、

そうではない。


関係の話のようで、

それとも違う。


私は、

立ち止まった。


少しだけ考える。


「特には」


そう答える。


「今の形で、

 続いていますので」


相手は、

戸惑ったように

小さく頷いた。


それ以上、

踏み込んではこない。


庭に出る。


風は、

穏やかだった。


私は、

小径を歩きながら思う。


人は、

形が見えないと

不安になる。


だから、

名前をつけたがる。


「何か、

 聞かれましたか」


並んで歩く彼が、

静かに尋ねた。


「少しだけ」


私は、

正直に答える。


「今後の形について」


「答えましたか」


「ええ」


「……どう答えたのですか」


私は、

歩みを止めずに言う。


「今の形だと」


彼は、

それを聞いて

何も言わなかった。


夕暮れの庭は、

光が柔らかい。


私は、

そのまま続ける。


「決めていない、

 ということではなく」


「すでに、

 そうなっている

 という意味です」


彼は、

少しだけ息を吐いた。


「それなら」


それだけ。


同意でも、

安心でもない。


受け入れだ。


夜、

部屋に戻る。


机に向かい、

今日の記録を書く。


特別な出来事はない。


それでも、

一行だけ、

書き添える。


今の形。


それだけで、

十分だった。


灯りを落とす前、

私は静かに思う。


未来を

決めていなくても。


名前を

与えていなくても。


人は、

生き方を

形にしている。


私は、

今の形を

選び続けている。


それは、

終わりではない。


更新され続ける、

現在だ。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


少しでも続きが気になる、と感じていただけましたら、

ブックマーク や 評価 をお願いします。


応援が励みになります!


これからもどうぞよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ