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婚約は破棄されましたが、私は静かに身を引いただけです  作者: リリア・ノワール


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50/62

第50話 続いている、ということ

その日は、

何かが始まった日でも、

何かが終わった日でもなかった。


ただ、

いつも通りの朝が来て、

いつも通りに一日が過ぎただけだ。


朝、

庭に出る。


空は高く、

雲は薄い。


季節が大きく変わったわけではない。

けれど、

空気は確かに違っている。


私は、

小径を歩きながら思う。


ここまで来たのだ、と。


外の仕事は、

もう私の手を離れ始めている。


完全に、ではない。

けれど、

私がいなくても動く部分が増えた。


それを、

寂しいとは思わなかった。


むしろ、

安堵に近い。


「おはようございます」


声がして、

振り返る。


エドワード様だった。


「おはようございます」


距離も、

立ち位置も、

変わらない。


けれど、

私の中の感覚は

はっきりしている。


「……このまま」


私は、

ぽつりと言った。


「何も決めずに

 続いていくのも」


「悪くないですね」


問いではない。

確認に近い。


彼は、

一拍置いてから答えた。


「ええ」


「続いている、

 ということ自体が」


「すでに

 一つの選択です」


その言葉に、

私は静かに頷く。


庭を一周し、

自然に足を止める。


「……以前の私は」


私は、

少しだけ過去に触れた。


「終わらせることでしか、

 前に進めないと

 思っていました」


「今は」


言葉を選ぶ。


「終わらせなくても、

 進めると分かります」


それは、

とても大きな変化だった。


彼は、

それ以上、何も言わない。


肯定も、

導きもない。


ただ、

隣にいる。


昼前、

それぞれの用事へ向かう。


別れ際も、

特別な言葉はない。


「では」


「ええ」


それで、十分だ。


午後、

書斎で一人になる。


私は、

これまでのことを

静かに振り返っていた。


婚約破棄。

距離を取る選択。

並ぶという再定義。


外へ出て、

戻ってくる。


選ばない未来を見て、

それでも今を選ぶ。


すべてが、

一つの線で

つながっている。


夜、

灯りを落とす前。


私は、

最後に一つだけ思う。


私は、

もう「結論」を

探していない。


代わりに、

今日をどう生きるかを

選び続けている。


それで、

十分だ。


第三部は、

ここで静かに終わる。


そして、

物語はまだ続いている。


何も決まっていないからこそ、

選べる未来が

まだ残っている。


私は、

その先へ進む準備が

できていた。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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