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04 異世界の女神3 女帝(最恐)

カイザル(享年86)見た目42歳。リンについて、彼女が娘なのか、妹なのか、認知が曖昧になっている。ごっちゃになっていることに自分では気付いていない。「湯たんぽちゃん」と呼んだり「リン」と呼んだり、大雑把に彼女を慈しむ自称「ボケ老人」。


スペルモル(12)視力悪い。メガネっ子。

 スペルモルには双子の姉がいる。名はカイゼリン。意味は女帝。最近リンと名乗り出した。長兄と似た名前が「まっっっぴらゴメン!」なのだそうだ。

 強く凛々しく、優しい。最高の姉だ。豪胆かつ冷静。一度決めたことは貫く。誰にも出来ないような言動を易々とやってのける。

 その反面、(スペルモル)を信じきっていて、素直に甘えてくれるし、肝心な時には従ってくれる。「わたくしを使いこなせるのはモルだけ」と言い放ち、どんな危険だろうと怯まず特攻していく。

 怜悧な眼差しもさることながら、その堂々たる姿ときたら。かっこいい。シビれる。憧れる。さすがはスペルモルの主君(プリンセス・)である姫(チャーミング)

 …まぁ。

 異世界に来てから。

 色々あって。

 特殊な趣味(ひゃっほいヌマ)に目覚めてしまったが。

 それでも。ね。

 スペルモルにとって、一生の忠誠を誓う至高の存在なのである。



 カイザルの魔核(たましい)は、呪物になる際にいったん崩壊している。

 「魔力の粘着性を利用して、魔核(たましい)を接着した。要は金継ぎだ」と、(カイザル)は説明した。

 実は少々ミスリードだ。魔力には粘性がある。金継ぎ状態なのも確か。しかし、魔力だけでは崩壊した魔核を繋ぎ留めることはできない。

 金継ぎには、接着剤(うるし)に土を練り混ぜて欠けを埋めるという手法がある。

 その要領で、カイザルは魔力にあえて不純物(のろい)を混ぜ込み、魂の細かな欠けを埋める形で魔核を維持していた。

 彼の肌(たましい)に浮かんだヒビ割れ…その赤黒い筋は、魔力と呪いの混合物である。

 ただし、今は接着剤(あかいまりょく)の存在感が失せている。蠢く穢れが魔力色を打ち消していた。

 肌のヒビ割れは、滑るような悍ましい色に染まり、カイザルの思考や言動に影響を及ぼしていた。


 「カイザルさん。あなたは何者でありたいですか?」

レルムは静かに尋ねた。

「私は護衛官。平穏を守る者。あなたは私の護衛対象ではない。敵になるなら退ける。敵対する気がないなら手を貸しましょう。私の助けは必要ですか?」

 嗤っていたカイザルが片眉をあげた。中途半端に笑んだまま、軍服の似合うレルムをジロジロと眺めた後、ちらりと己の足元を見やった。

「…なるほど? オレは呑まれたか」

カイザルは中身が消えた脱け殻を見下し、また嗤った。

「笑えるザマだ。湯たんぽちゃんにも、弟妹にも、会わせる顔がないなぁ?

 おい、レルム。手を借りたい」

「了解。何をしますか?」

保守点検(メンテナンス)。ま、やることは同じだ」

カイザルは凪の武器(ハルバード)を消した。おもむろに足首を伸ばしだす。ルーティンをこなすうちに、目からこぼれる穢れの量が減った。

「ストレス解消には色々と方法があるようだが、オレは昔から「身体を動かす」一択だ。付き合え」

レルムは頷き、姿勢を僅かに変えた。いっきに覇気が宿る。

「何番を?」

「まずは実戦形式(5ばんルール)終了合図(セーフワード)は「チャーシュー麺」。その後は1番を1セット(クールダウン)

「了解」

 場がピリッと緊張する。対峙した軍人ふたりの闘気は均衡してぶつかり合う。

 初手はいきなり右ストレートからはじまった。



 異界で行われる迫力ある軍人のじゃれ合いは、現実世界ではスクリーンに映し出されていた。

 アウローラは淑女の微笑みを浮かべることで、静かに感情を殺している。

「落ち着け、アウローラ。大丈夫だ。武器を使っていないだろ。ただの遊びだ。レルムに何かあるわけねぇだろ」

 見かねたスペルモルが隣に座るアウローラを見上げ、表情を見て「…うわぁ」とドン引きした。

 嫉妬した淑女(アウローラ)はお怒りだった。笑みの形にしただけの唇がゆっくり動き出す。

「うふふ。カイザルさまは、本当にレルムをお気に召しているわね?

 またも気軽に抱きついたわ。わたくしの夫に。わたくしのレルムだと分かっていながら…泥棒猫(あのおかた)ときたら…っ」

「…抱き…? ああ、(ふく)を貸したことか。全裸をみかねただけだろ。兄上の善意だよ。何を言ってんだ、お前?」

 アウローラは黙って指先を踊らせた。虹色の光と共に淡い赤色の凪が紡がれ、「画面」の中に吸い込まれていく。

 それを見届けた双子は、無言でスクリーンに視線を戻した。


 派手な格闘シーンは変わらず、しかしレルムの服装が変わっていた。

 軍服じゃなくなっていた。

 裸エプロンになっていた。

 腰布と首輪はあるが、幼い少女が着るようなふりふりエプロン。


 アウローラはギリィ…ッ!と歯を食いしばった。

「今のわたくしの(ギュッ)1枚布(これ)が精いっぱい…。悔しい。恋敵(カイザルさま)に負けっぱなしだわ。()への愛には自信あるのに!

 もっと抱擁(ナギ)の精度を上げなくちゃ…せめて刺繍入り。目指すは儀仗服の上にエプロン! 妻として、いっぱい応援(ギュッ)するわ!

 最推し(ピッピ)に推し属性を足すのも応援の一形態だって、趣味嗜好探究会(ファンミーティング)でアンナが教えてくれたのだから…!」


 スペルモルはドッと疲れを感じた。

 ゴッツい大男の裸エプロン姿も(精神疲労の意味で)クるが、淑女(ぽんこつ)嫉妬(ぽんこつ)も(ツッコミが面倒という意味で)クる。

 日々濃さを増す様子のおかしさは、()()愉快犯(アンナ)が暗躍しているせいらしい。

 察したスペルモルは、呻いた。

 (アンナ(あいつ)何なの? アウローラをどうしたいの?

 正統派お姫さま枠と断じておいて、何故、妙な方向に(キャラクターを)仕込む…っ!)

 ソファに座ったまま前屈みになる。開いた両足の間で頭を抱えていると、リンがモゾモゾ動きはじめた。

 スペルモルの背に上半身を乗り上げ、アウローラをちょんちょんとつつく。

「ねぇ。わたくしもレルムを応援したいわ。良いわよね、アウローラ?」

「はい。もちろんです、リン。一緒にギュッとしましょう!」

同担(リン)は歓迎だが泥棒猫(カイザル)好敵手(ライバル)

 恋心の機微を知る初恋(レルムは)昇華(あこがれの)少女(おにーさん)と、夫ガチ勢の妻(アウローラ)は、推し活仲間なのである。

 スペルモルの背中の上でリンの凪が呼ばれる。そのけはいを感じたスペルモルが「?」と顔だけ上げた。スクリーンを確認して、ブフォッと噴き出した。


 レルムの裸エプロンは変わらない。

 しかし、馬の頭の頭巾(パーティグッズ)が増えていた。

 馬の首部分に丸く大穴が空き、そこからレルムの顔面が出ている。

 彼の頭上では、リアルな馬の頭(ぬいぐるみ)がご機嫌に揺れていた。焦点が合わないツヤ消しボタン(ヒカリなきおめめ)で虚空を見据えながら。


 「…! …っ!?」

シュールさに絶句するスペルモルの背の上で、リンが首をひねった。

「…? おかしいわね。わたくし、フードの着ぐるみにしたはずなのだけど…?」

画面とスクリーンを交互に見たアウローラがハッと気づいた。

「リン。大丈夫。レルムの背中に、ほら」

「あら…間違えたわ。ちゃんと着せたいわ。えい」

リンは、レルムにまとわせた己の凪を再構築した。


 スクリーンの中のレルムが黄色がかった白い光で覆われ、身体が着ぐるみ(+ふりふりエプロン首輪付)に変化した。馬頭のぬいぐるみフードは背中に垂れ、動くたびにひらひらなびいてシリアスに水を差している。

 迫力あるバトルシーンが台無しだった。


 しかし、女子ふたりの顔はパッと輝いた。

「わぁ。ペガサスですね。素敵!」

「そうよ! でも羽は小さくしたわ。そのほうが似合う(カワイイ)と思って」

「同意します。レルムの背中の広さが隠されず、とても好ましいです」

()()()()()()()()なのよ! アンナがそう言っていたわ!」

レルム推し勢(リンとアウローラ)はニッコニコでハイタッチして、そのまま両手を繋いだ。スペルモルの背をテーブル代わりに顔を寄せ、ふたりはキャッキャ楽しそう。


 スクリーンの中では、熟練の軍人がストイックに戦い続けていた。動きそのものは見ごたえのある格闘。なのに見た目が。

 壮年の優男と体格の良い大男。

 カッチリ紳士服(スーツ)でかい着ぐるみ(ゆるキャラ)

 裏社会の男と遊園地バイト中の体育会系おにーさん。

 邪悪な紫色(フシギとえちち)ゴツい首輪(ナゼかドキドキ)


 スペルモルはふと思った。アンナが見たらどう言うだろう?


「戦闘シーン迫力ヤバ。熱量(こだわり)ヤバ。自主制作(オリジナル)ヒーローショーとみた。

 カタギを目指す青年と、それを許さないかつての師匠(うらしゃかい)。はたまた娯楽業界(ゆうえんち)を牛耳るドンに挑む新米潜入警察官(ねっけつかん)

 衣装の個性が幾重にもストーリーを語る。ダークヒーロー物でもイイよね!

 フェチズム濃すぎ? エロ狙い(あざとい)

 そこが最高なんだろがぃ…!」


 スペルモルの「アンナのイメージ」はかなり正確だ。

 背の上で交わされる萌え談義(きぐるみサイコー)は終わりなく盛り上がっていき、比例してスペルモルの顔はしょっぱさを増していく。


 弟のしょっぱい想いが届いたかのように、唐突にカイザルが崩れ落ちた。耐えかねたらしい。そのまま腹を抱えてゲラゲラ笑いだした。


 戦闘中にいきなり笑い転げだしたカイザルを眺め、レルムは内心で首をひねった。

 凪を呼び出せないレルムは、凪の触覚を得ることができない。着せ替えされても気付けない。

 己の現状を知らぬまま、レルムは臨戦態勢を解いた。

「楽しそうですね。カイザルさん。気が晴れましたか。悪感情が薄れてきたようで、なにより」

()れたし(うす)れたが、お前はそれで良いのか…! 良さそうだな!? 3対1なんぞ気にしないが…アホな妨害(こんなもの)を食らうのは初めてだ! オレの()る気を失せさせるって大したもんだぞ!」

「? ありがとうございます…?」

なんのこっちゃと思いつつ、レルムは敬礼した。褒められたら敬礼。そういうものなので。

 カイザルはゲラッゲラ笑いながら、震える指を持ち上げた。 

「さすがはオレの(リン)! レディ・アウローラの嫉妬(アシスト)も微笑ましい! 褒美やらねぇとな!」

そう言うと、カイザルは指を鳴らした。

 艶やかな赤い凪がまたもレルムを包み、レルムはそこで初めて自分がフカフカもこもこ全身スーツ?にエプロンを着ていたことに気付いた。疑問を抱く前に、またお着替えがなされる。


 今度は治安の悪そうな恰好だった。

 黒いシルクの開襟シャツに、光沢を消した細身のレザーパンツ。足元はゴツい革ブーツ。

 自前の首輪も相まって、いかがわしいアウトロー感があった。


 レルムは戸惑った。

「これがご褒美…ですか?」

「いや? これからだ。受けろ」

胸元をはだけたカイザルが、ニヤリと嗤いながら革ソファ(ナギ)を呼んだ。流れるように、ひょいとレルムに足払いをかける。

 技を受けろと言われたので、レルムは素直に受けた。仰向けにソファに倒れ込めば、カイザルはレルムの腹筋に膝を乗せてきた。ただ乗せただけ。抑え込まれるわけでもない。

 明らかなごっこ遊び感にレルムが「??」となっていると、やっったら思わせぶりに胸ぐらを掴まれた。

 カイザルは身をかがめ、レルムの顔面すれすれでニヤニヤ嗤った。

「男を口説く趣味はない。さて、リンはなんて名付けるかな? カイザル×レルム…カイルムか?」


 レルムはしょっぱい顔をした。彼は、アンナの所業(プロデュース)により目覚めたリンの特殊な趣味を知っている。

 カイザルの「ご褒美(BでL)」の意図を理解したレルムは、ついぼやいた。

「さすがにこの需要はないだろ…おっさん」

「ははっ。同感だが、案外クるらしいぞ? 女の感性はよくわから…おっと、何だ?」


 場に圧がかかった。

 ジジジ…と微振動に似た感覚は魔法の発動時のそれと似ている。


 察した男ふたりが飛び退ったすぐ後、謎のスポットライトがソファを照らした。

 ライトはすぐさま動き出し、少し離れた位置で臨戦態勢をとるレルムを照らした。

 カイザルがニヤリと笑った。

「へぇ? なるほど」

「何がです? いや…覚えがある。確か前にもこんなことが…」

レルムは首をひねりながら歩き出した。光から外れてみると、ライトはついてきた。レルムの移動に合わせて、ひたすら照らしてくる。

 レルムはハッと目を見開いた。

「リンのけはいだ。と、すると」

「発動しているな。とうとう効果が分かるわけだ?

 ここは異界だ。さすがに光るだけでは終わらないと思うが」


 リンには特殊魔法がある。

 かなり前から発現していたが、光る両眼(スポットライト・アイ)にどんな効果があるのか判明していなかった。


「異界に干渉する力だったなら、それも頷ける。

 とすると属性は竜だろうな。…困ったな、竜か。希少能力だ。訓練方法どころか発動条件すら情報がない。

 生前(オレ)の「憑依」が今も使えたなら…いや、無理か。他人の特殊魔法は使えない。リスクも訓練も代わってやれない。さて、どうするか…」

「リンいわく、訓練方法の模索は発現した者が担う責任だと。おせっかいを止めるのでは?」

カイザルは舌打ちした。

「そうだったな。まったく毎度毎度、忍耐がいるなぁ、子育てってのは」

レルムはカイザルを横目で見た。

 カイザルは視線の意味(そだててねぇだろ)に気付き、逆ギレした。

 ちょっとした罵声と侮蔑語を吐き捨てたため、レルムは速やかに抗議(メッ)した。

 腹に一撃を食らったカイザルが膝をつく。

 レルムは流れるようにカイザルの肩に手を置き、完全に動きを封じた。

「あちらに声が届いています。口汚い言葉は使わないように。良い子してください」

レルムの力加減は完璧だ。身動きできないカイザルだが、「…おう…」と返事が出来る程度のダメージですんでいる。


 スポットライトを浴びながらしばらく待つと、変化が訪れた。

 神域投影にいるはずの3人が、生身で現れたのだ。


 カイザルは呟いた。

「なるほど?

 物を呼び出す「取り寄せ」の上位互換だな。人まで呼び出せる能力なら「召喚」だが、界を超えた。恐らく最上位だろう。「絶対召喚」といったところか」

「身体への負荷は?」

「記録にない。だが「取り寄せ」系の能力は失敗すればそもそも発動しないはずだ。恐らく問題(リスク)はない。

 何にせよレディ・アウローラがいる。いざとなれば特殊魔法(のうりょく)で保護するだろう」


 3人が現れたとたん、スポットライトは消えた。

 少し離れた位置で数センチほど浮いた状態で、うつ伏せのスペルモルが現れ、その背に上半身を乗り上げる形でリンとアウローラが手を繋いだまま現れた。

 3人はまとめて地に落ち、下敷きになったスペルモルが「ぐぇ」と呻いた。

 慌てた女子ふたりがすぐさま少年を介抱する。

 無事だった。眼鏡はちょっと歪んでしまったが。


 「アウローラ」

レルムがパァっと顔を輝かせた。耳がぺたーんと横に倒れる。


 ほぼ同時にリンが立ち上がった。座り込むカイザルの元へ歩きだす。

 スペルモルも姉を追おうとしたが、アウローラに袖を掴まれ阻まれた。何故かそのまま目を塞ごうとしてくるので、イラっとしたスペルモルはアウローラを睨んだ。

 睨み返された。

 淑女の眼光が鋭すぎて、スペルモルの肩は跳ねた。


 そんなふたりのそばに、レルムが音もなく現れた。

 途中ですれちがったリンの小さな背を眺めながら、レルムは首をひねっていた。

「リンが怒っていました。スペルモル、何か知っています…か…」

何の気なしに己の妻(アウローラ)を見たレルムは、速やかに美しい直立をした。さながら扉前に立つ警備のごとく気配を消し、置物と化す。

 青筋たった淑女は静かに告げた。

「目を閉じましょう。見たら後悔しますよ、スペルモル。

 レルム、あなたもよ。目を閉じてちょうだい。

 ふたりは悪くないの。何も悪くない。だから、目を閉じていて。

 良い子は、見なくて、よろしいの」

ブチ切れていた。その表情はまさに悪女(えらいこっちゃ)になっていた。

「兄思いのあなたにとっては不本意でしょうが、一線を超えたからにはお仕置きがいるのです。

 話せばわかると言う意見もあるかと思いますが、実は言葉って万能じゃないのです。

 言語を駆使する社会的動物として、ふがいないことですが、時には原始的な方法が最も効果的な手段となり得るのです。

 あれがご褒美ですって? 笑止。有罪(ギルティ)よ。大罪人は処すべし。

 今回に関してはわたくしも執行側ですの。ごめんあそばせ」


 スペルモルは絶句し、レルムは困惑を深めた。

 直立する男たちの背後で、カイザルのご機嫌な声が響く。

「よく来たな、湯たんぽちゃん。

 どうした、目が据わってんな? 疲れたか。お昼寝していくか?」

 スペルモルは、恐る恐るふりかえった。

 姉の静かな後ろ姿から、とてつもない怒気を感じる。あまりの不穏さに、スペルモルはすぐさま直った。

(見るの怖い。姉さまガチ切れだった。何が起こるの。カイザル兄上は何されるの!?)


 直立するレルムの隣で、同じく姿勢良く直立したスペルモルが、そっとアウローラに囁いた。

「罪状はなんだ?」

「強要罪。冒涜(わいせつ)罪。未遂だろうと処します。

 リンとしては、その素敵な(ナギ)が情状酌量の余地にあたるそうですが、わたくしとしては論外。カイザルさま絶許」

「ぜ…?」

「絶対に許さない、です。処しますわ」

 絶句するスペルモルとレルムの背後から、カイザルの野太い悲鳴が響いた。

 ブチィッ!という音も、かすかに。

 ブチブチィという音と、珍しく慌てて制止するダンディ(おにーちゃん)の声を聴きながら、青ざめたスペルモルがさらに尋ねる。

「…量刑は…?」

 アウローラは瞳孔ガチ開きだった。

 口元だけで作り嗤いをした。もはや淑女の微笑みですらない。

 激オコ悪女は、処刑内容を宣告した。きっぱりと。

「永久脱毛。魂からやるので二度と生えません。

 まずは胸毛から。

 全身ツルッツルにいたします」

リン(12)特殊魔法「絶対召喚」が判明。トキメキを照らすスポットライト・アイは次元を超える。腐は熟成中。愛や絆の有無が重要。イケメン同士が絡めば何でもいいわけじゃない。

 レルム推し活は、右側(固定)。長兄には容赦しないって決めている。一度決めたことは貫く性分。


レルム(19)愛妻から推されまくる前作ヒーロー。脱ぎキャラではないのだが、結果的に剥かれがち。着せ替えされがち。からかわれるし遊ばれる。基本は軍服。


カイザル(42)女帝の逆鱗に触れた。悪女の地雷も踏んだ。ご褒美のつもりでやらかした。安易なごっこ遊びの代償は、セクシー胸毛の消失。いっぱい毟られた。後で全身ベリィッ!とされる予定。

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