表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/12

こころの声

僕がこの城に来てから四年と少し。

僕の仕事では無いけれど、クロム様と過ごす時間が増えた。

平日の昼間は、ダイヤが仕事でいない。

それに、ダイヤも僕とクロム様が仲良くしているのはいいことだと、嬉しそうだった。

クロム様との時間が増えた一番の原因は、サリー様の妊娠だ。

喜ばしいことに聞こえるが、最近サリー様の体調がよろしくないよう。

アルクス様も日中は忙しい、となると年が近い僕が対応するのが適していると自分で思ったのだ。


クロム様と過ごす時間は楽しい。

絵本を読んだり、一緒にダイヤにイタヅラしたり、散歩をしたり。



「ニーニャ、僕の専属になってよ。」

「え、」



中庭でお茶をしていると、クロム様が僕に頼んだ。



「いけませんよ、クロム様。ニーニャさんはダイヤさんの御子息なのですから。」

「んーーー!」



クロム様はぷくぅっと頬をふくらませる。



「そんな顔してもダメですよ。」



クロム様のお世話係兼アルクス様の専属執事の、オルターさんは困っているようだ。

クロム様にあんなことを言ってもらえるのは、とても嬉しいことだが、人の仕事を取ってはいけない。



「僕だけについてくれる人が欲しいんだよ。」

「気が合わないと、何人も断ったでしょう。」

「そうだけど…。」



すねた顔をしているクロム様が、可哀想に思った僕の口は勝手に動いていた。



「では、僕をクロム様の一番のお友達にしてください。」

「友達…。いいの?」

「はい。」



クロム様はオルターさんの方を見る。

オルターさんは優しく微笑んだ。



「じゃあ、一緒にブランコに乗る!」

「行きましょうか。」



楽しそうに中庭を走るクロム様のあとをついていく。

オルターさんも嬉しそうに眺めていた。

















そんな幸せな時間は突然崩れてしまった。

僕がこの城に来て約五年、クロム様の妹、アリス様が産まれてすぐサリー様が亡くなった。


あとからダイヤに聞くと、サリー様はもともと体が弱かったらしい。

アリス様が生きているだけでも奇跡に近いと言っていた。


僕は、部屋に引きこもってしまったクロム様のところへ毎日通った。

彼の暗い気持ちを少しでも晴らしたかったのだ。

そのかいもあったのか、クロム様の気持ちは徐々に回復し、街に降りて散歩するようになった。


僕的には、クロム様よりもアルクス様のほうが辛そうに感じた。

毎日、ダイヤとなにかを話している。

サリー様が亡くなってから、来客が増えたように感じる。

人が多い城が窮屈に思ったのか、クロム様はよく外に出たがる。

何か嫌な予感を感じているのは、どうやら僕だけではないようだ。



最近夢に変なものを見る。

ダイヤと誰かもう一人と三人で、城下町の店でタワーのようなパンケーキを食べる夢。

この夢を毎日見る。

この”もう一人”はいったい誰だろう。

シルエットがボヤついているが、髪色的にクロム様だろうか。













サリー様が亡くなってから約一年。

たくさんの来客の中に一人、妙な空気をまとった白髪の男が現れた。

他の客は車で来るのに対して、彼は徒歩。

その男は、アルクス様ではなくダイヤと話があるよう。

中庭でクロム様と遊んでいた僕は、ダイヤに呼び出され、応接室に入る。



「失礼します。」

「ニーニャ、おいで。」



ダイヤは、彼が座っているソファーをポンポンと叩く。

僕は、彼に言われる通りに座った。



「こんにちは、ニーニャ君。今日は、君に話をしにきたんだ。」



怪しい白髪の男は少し体を屈めて話を続ける。



「僕の友達を君たちに預かってほしいんだ。」

「友達?」

「そう、もうダイヤには何度か話をしていて、あとは君の了承がほしいんだ。

歳は君の五つ下、ちょうどここの王子と同じ歳だ。他の国から来る子だから、コミュニケーションが取りにくいかもしれないけれど、悪い子ではないんだよ。」



男は一枚の小さな絵を取り出して、僕に見せる。

その絵にかかれているのは、大きな耳に大きなたくさんの尻尾。白い髪に緑の瞳。



「君の弟として預かってほしいんだ。どうかな。」

「はい、わかりました。期間はどのくらいですか。」

「僕がもう一度、ここに迎えに来るまで。」

「…、わかりました。」



ダイヤはずっと俯いたまま、僕と男の話を聞いている。

僕は了承してしまったが、ダイヤは本当は嫌だったのだろうか。



「じゃあ、三日後に連れてくるよ。よろしくね。」



話が終わると、白髪の男は帰っていった。

床を踏む靴の音、歩く風を切る音、まつげが重なる瞬きの音…すべての音が聞いたこと無い不思議な音だった。

けれど、白髪の男がまとっていた怪しい空気は、いつの間にか消えていた。

僕が感じていた嫌な予感は、あの男のことではなかったようだ。

街の中に彼が消えていくと、僕はダイヤに聞いてみた。



「あの絵の子、預かるの嫌だったの?」



ダイヤはびっくりしたように僕の方を見た。



「そんなことはない。…最近、構ってやれなくてごめんな。」



ダイヤは優しく僕の頭を撫でる。

夜は魔法の練習をみてもらっているし、毎日一緒に寝ている。

それに、休日には遊びに連れて行ってくれているから、十分な時間を僕に割いているはずだ。

僕とダイヤでは、時間の感覚が違うのだろうか。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ